大岩の先
ネメシアにおいてスキルとは各々が生きてきた人生の中で何を成してきたのかという事の証明である。これは少しばかり過言が過ぎるかもしれないが、大まかな解釈としてはそういう事である。
剣を振り続けていれば剣に関係するスキルが入手しやすく、魔法を行使し続けていれば魔法に関係のあるスキルが入手しやすいというような傾向が既に検証までされ、そのことを知らない人間はいないとすら言われるほど広く知れ渡っていることだった。
これに適用されないのが極稀に存在する個人スキルと呼ばれるものである。
個人スキルとは生まれながらに所持しているスキルの事であり多くの場合強力なスキルを得ていることが多いのが特徴である。
例えば、その子は生まれたばかりでありながらその肉体から溢れ、周囲の者が感知できてしまうほどの魔力を有していたり、子供ながらに擦り傷一つ負っている姿を目撃したものが居ないほど強靭な肉体を有していたりとそのスキルによって効果は変わるが個人スキルを有しているものは皆、噂程度にはその名が広まっていたりする。
そして個人スキルとはそれを発現した者のみが持ち得るスキルであり同一のモノは二つと存在しない。まあそれ故に個人スキルという呼び名なのであったりする訳だ。
だが、これまでのネメシアの歴史に例外が生まれた。それはやはりカナタたちの事であり、神の力により自身の望む事象をスキルとして発露した者などこのネメシアにはカナタたち二人しか存在しなかった。
そもそも現在まで他世界から召喚された者などこのネメシアには存在しなかった。故にカナタたち以外にそういうことが起ったこともなかった訳だ。
つまりカナタたちが持つ、二人がギフトカードで創り出したスキルはこれらの事から個人スキルとも別で、カナタたちのオリジナルスキルともいえる代物になっていた。
「さて。それではめでたく増えたスキルを紹介しましょーう。パチパチパチ!」
『パチパチパチパチ』
「ゴホン。えー多大なる拍手ありがとうアリス君。ではまず俺から行きましょう。俺は遂に、つ・い・に夜目スキルを得ました。入手の経緯的に考えて、アリスの魔法で疑似的に夜目を使った事が影響している可能性が高いと思われます。本当にありがとう!これで夜もお荷物にならなくて済む!」
『また大げさだなー。しかもここのところは周囲に敵がいないのを確認して安全を確保した後、二人とも警戒もしないで寝ちゃってるからお荷物とか無いのに。』
「だとしても戦闘の幅が広がるのは大きいよ。戦闘面はできるだけ安全に、ムリ無くってのが理想だから。......じゃあ次にアリスの方だね。」
『いや、敵が同じスキルを持っていた時のために、カナタの剣術と投擲のスキルも詳細を聞きたい。』
「そうだな.....これは俺の感覚的な話だから一般論かどうかはわからないというのを先ず言っておく。その上で簡単に説明すると、剣術スキルの方は今まで剣を握ったことがない人間が剣の振り方、力の伝え方とかの初歩の初歩的な事が感覚で理解できるって感じ。投擲スキルも似たようなものだけど、今までよりも狙ったところにしっかり当たるというか、精度が上がったって感じがするかな。と、そんなところだ。」
『うん。じゃあ次は私。私が先に得ていた魔法創作は、私が今まで魔法を使う時にやっていた術式を変換する際の過程でスキルが補助してくれるみたい。でも、私の使う魔法の術式変換は普通とは違うから参考になるかは怪しいかな。次に詠唱術だけれど、これは話し合いで出ていたように名前の通りで詠唱の簡略化や詠唱スピードの向上を補助するスキルみたい。要するに詠唱を補助してくれる訳ね。......で、新しく増えたスキルだけれど、魔法を使う時に使う魔力の消費量を減らしてくれる......まあこれも名前の通りのスキル効果だった。』
「なるほど。まあ魔法使いらしいスキルだよな。でもアリスが持つと頼もしくもあり、敵目線だとご愁傷様って感じだな。」
と、このように和やかに話し合っている二人だが実は二人のスキル習得スピードはかなり速い。確かにゴブリンたちの数も多く戦闘回数は多かった。しかしそれでも一般的な人間が同スキルを習得するまでにかかる戦闘回数に比べれば随分と少ないと言わざるを得ない。
これはやはり二人の原種たるその血が、感覚的に、また直感的に戦闘における自分に適した肉体の動かし方を実践した結果であった。--当の本人たちは全くそのことに気づいていないがーー
『むぅ。カナタ失礼!ここは”心強い”だけでいい場面。......さて、今の自分たちのことも大体わかったし、疲労も大分抜けた。そろそろ周囲の索敵を再開しましょ。』
「そうだな。自分たちのいる場所も知らないんじゃあシャレにならないもんな。」
カナタたちはゴブリン討滅戦から久方ぶりに立ち上がり周囲の索敵をのんびりと始めた。
カナタたちは時に他愛無い会話をし、今までのダラダラとしていた時も無駄なくMPを使用して創っていたカナタの創生食糧をアイテムボックスから出して食べたりしながら、周囲の木々や野生生物を眺めたりしながらこの広い森を歩いて回っていた。
「.........」
『.........』
「ギャ――グラッッゥッ」
そして時々遭遇するゴブリンを何の感動もなく倒していった。
カナタたちが周辺を索敵し始めてから既に数日が経過していた。朝、昼、夜、間食としっかりと食べて、時にカナタが出すお菓子を食べて、さらに別の日には謎肉を消費したりと意外と快適な生活を送りながら周辺を探っていった。
また、カナタはこの数日間でテントを創り出したり、調理器具を創ったり、地面に直接寝なくてよくなったため新たに寝間着などを創ったりしていた。
こうしてカナタのMPが回復するたび二人の生活は快適になっていった。
「うん。いい加減分かった。分かったよ。これだけ連日移動して出会う魔物がゴブリンだけなんだ。うん。このあたりに居る魔物はゴブリンだけだとよーくわかりました。」
『安易な決めつけは良くない、と言いたいけれどこれだけ他の魔物に遭遇しないと決めつけていい気がする。』
カナタたちはこの数日間で起きたことを考え、そう結論付けていいと思うほどに魔物はゴブリンとしか遭遇していなかった。
......そしてさらに数日の索敵を繰り返した二人は理解した。
「うん。......ゴブリンしかいない!!!はい、決定です!」
『うん。決定です。異論はありません!』
「『というか、ゴブリンどんだけいるんだーーーーー!!』」
カナタたちはこの数日の間ずっとゴブリンと出会う度にしっかり倒しながら進んでいた。一匹で居る者も、集団で居る者も関係なく殲滅した。しかし、歩く度、進む度にゴブリンは現れた。生活面では不自由が徐々に無くなって改善されてきているが、こう戦闘に変化がないとカナタたちもついついそう洩らしてしまう程に何も見つからず、変化がなかったのだ。
そして遂にそれを見つけたのは更に数日経過した頃だった。
「......いや...これは......どう......えっ?」
(神眼発動!......えっ?)
『カナタ、重大な発表があります。......神眼で見たところこの大岩の先に階段があって上に行けるみたい。でも、私たちの目の前にあるこの大岩、ただの岩じゃないみたい。私の眼でもこれがなんなのかわからない。つまりこの空間と同じように今の私のレベルだと識別できないようなモノでできてるってこと。』
「......上があるってことはここは地下なのかな?しかもアリスの眼で分からないってことはここが普通の場所じゃないってことが確実になったってことだな。......くっ」
カナタは現状を確認した後、大岩を刀で切り付けた。しかし、大岩はビクともせずにカナタの刀を弾き返した。そしてその衝撃でカナタの手が少し痺れるという結果に終わった。
『私の眼でもこの位の距離じゃないとこの階段は視えない。これも特別なモノでできているみたい。でも、上に行く階段が有るのならもしかしたら下に行く階段も有るかもしれない。』
「......じゃあ当分はこのまま階段を探して歩いていこうか。」
そうしてカナタたちは確認することが新たに増え、今後の方針を決めながらも索敵を再度開始したのだった。
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