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誰が為に  作者: 白亜タタラ
ダンジョン攻略編
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五人の異世界人は説明を受ける

 全身を襲うひどい疲労感と硬い地面で横になっていたことにより、体の全部分がとても怠くて僕は目を覚ました。いったいどれだけの時間を寝ていたのかは、この場所に時計などの時間を把握する道具がないためよくわからない。


 しかし、今僕たちがいるこの場所は辺りが徐々に暗くなり始めているところだった。

 ゴブリンたちと遭遇したのがまだ辺りが明るく、太陽?が燦燦と輝いている頃だったので3、4時間ほどは眠っていたのではないかと思う。

 ただこの推測も、どの程度信頼できるかはわからない。

 

 というのも……


 ”それは少し時間が巻き戻る。”


 


 

 

 僕が目を開けるとそこには真っ白な空間があった。そこでは調度品も壁も何もかもが白で統一されていた。そして僕たちに向かい合うとても綺麗な一人の女性がいた。

 白で統一された部屋の中で、特にライトアップされているわけでもないのにとても美しく輝き、彼女がこの部屋の主であるとすぐに納得させられる美貌と存在感があった。そして彼女以外にこの部屋がふさわしい人はいないのではないかと思うほど完成されていた。


 僕たちの前にいる女性は、見るからにとてもサラサラな薄い碧の髪が緩やかにウエーブしており、髪と同じ色の瞳と少したれ目の目元が優しい雰囲気を思わせる。

 鼻や口も正にそこにあるのが当然というくらいに彼女の美しさを引き出している。

 身長は150センチほどで小柄だがその体には不釣り合いなほどの(むね)をお持ちだった。

 

 先ほどから述べている通り彼女の前にいるのは僕だけではない。僕以外には四人いる。とそこまで今の僕が置かれている現状について確認したところで向かい合っている女性は口を開いた。


 「ようこそ皆さん。まずは予定通りちゃんと召喚ができてよかったです。」


 「『.....』」


 いきなり告げられて僕たちは召喚されたという言葉を受け入れることができないでいた。もちろん頭の片隅ではこんな見たこともないような部屋にいきなり来たのだからうすうすはわかってはいた。しかし、まさかホントに召喚などという非現実的な事柄に気持ちと脳がついていけなかったのだ。


 「まず、いきなり連れてこられても何もわからないでしょうしちゃんと説明しますから安心してください。」

 

 とりあえず説明してもらえるみたいでよかった。ほかの面々もいきなりのことにいろいろと思うことはあるみたいだが、とりあえず話を聞いてから事の次第を判断するようである。


 「まずは自己紹介から始めましょう。私は”管理神”ウルスラ。世界の管理を主に行っている女神です。」


 (うーんやっぱり神様でしたか。まあこんなことができて、さらにこんなに文字通り神々しい人には会ったことないし、むしろそう言われて納得ではある。)


 「あとここにはいないけど今回の件は他に四人の神が協力して行ったことです。さて、まあ私たちのことはいいとしてあなたたちをここに呼んだ理由だけど短刀直入に言うとあなたたちの生まれ育った星、つまり世界が消滅したからです。」


 「『はぁっ?』」


 僕たちは今まで以上に理解が追い付かずにただそれしか口に出せないほど混乱していた。しかし女神の説明は僕たちを待つこともなく続く。


 「あなたたちの世界である地球、といってもあなたたち五人はそれぞれ違う地球の存在なの。正確にはパラレルワールドに存在する地球ね。まあお互いを見れば少なからず自分とは違うところに気づくのではないかと思うけれどね。」


 目まぐるしくあふれてくる情報の中、女神のその言葉で5人はそれぞれを確認した。


 「あなたたちの種族だけど皆ちゃんと人間よ。ただあなたたちは普通の人間ではなくて五人それぞれが先祖帰りをした原種(・・)なの。」


 僕は話を聞きながら他の四人を見ると、一人はとてもきれいな女性だった。さすがに女神と比べるのは申し訳ないが、今まで出会てきた中では断トツで美しかった。そして彼女の特徴はその少し長く、とがった耳だろう。

 二人目は、背が低く筋骨隆々の男だ。その顔のほとんどは髭に覆われている。年はなかなかの高齢に見える。

 三人目は、オオカミの耳としっぽを生やした男だ。身長は百七十センチ程度。顔もなかなかの美形だが頭に乗る狼耳がかわいらしさも見せていていろいろな層の人に人気が出そうだ。

 四人目は、小さな女の子だった。この子も美人さんだがまだ幼いのでどちらかといえば、とてもかわいらしいという印象を受ける。この子の特徴は透き通るほどに美しいストレートな白い髪だ。


 「個別に説明していくなら......そうね、まずはあなた。」

 

 そう言ってまず女神が指を指したのは耳の長い女性だった。


 「あなたはエルフへの先祖返りでハイエルフの原種よ。エルフの寿命は長く、約千年は生きるといわれている。そしてハイエルフであるあなたに寿命はないわ。でも寿命による死はないけどそのほかの要因による死は普通の人間と変わらないからそのつもりでね。

 で、あなたの地球は新種魔法の大規模実験の失敗によって滅んだの。あなたの地球には魔法という文化があり、その魔法の権威と言われる三人が集まって行った合成魔法実験の拒絶反応で実験場近辺は消滅し、その余波による魔力嵐で生物は死に絶えた。また、各地に広がった魔力はそのタイミングで魔法を使っていた人にも伝播し、魔法暴発を生んだ事で被害の拡大が止まらなかった。これがあなたの地球が滅んだ経緯よ。次はあなたね。」


 次は、背の低い男性だった。


 「あなたはドワーフへの先祖返りでハイドワーフの原種になるわ。ドワーフもエルフほどではないけど寿命が長く五百年くらいの寿命を持つわね。ハイドワーフだと千から二千年位は寿命があるわ。ハイドワーフはその肉体が頑強なのが特徴よ。でももちろん人間なんだから急所はあるし慢心はだめだけどね。

 で、あなたの地球は国家間の戦争規模の拡大による公害による汚染と環境への被害の拡大の蓄積が星を蝕んだ影響によってあと数年で滅びることが確定したの。じゃあ次ね。」


 次は獣の耳と獣しっぽを生やした男性だった。


 「あなたは狼人への先祖返りでワーウルフの原種になるわ。寿命は百から百五十年位。本来の狼人は満月を見ると変身したり野性的になったりするんだけど、あなたは自分の意志で形態を変化できるわ。ただ、今自覚したばかりだからもう少し練習しないと使いこなせはしないわね。特徴としては、そのしなやかな四肢と柔軟なバネによって生み出されるスピードね。ただちゃんと自身を制御しないとその血のせいで少し好戦的になるから注意して。

 で、あなたの地球は第二種新人類の誕生により人類が滅ぶことが確定したわ。この新人類って名前だけど、ただの呼称で簡単言えばモンスターの誕生のことね。あなたの星は度重なる生物実験や人間への薬物投与による改造生命の研究が生み出したモンスターがちゃんと処理されずに自然に還り、自然界で誰にも邪魔されずに繁殖を続けていった結果起きた惨状といってもいい事象ね。で、次は。」


 次は白髪の少女だった。


 「あなたは吸血鬼への先祖返りで真祖とも呼ばれるわね。吸血鬼に寿命はなく、また真祖はかなり強い不死性を持つわ。真祖は太陽光にも耐性があるし、そもそも人間からの先祖返りだから太陽光は弱点にならないわね。しいて言うなら人間における致命傷となるダメージをある程度、つまり血による回復能力を上回るほど継続するくらいかしら。

 で、あなたの地球は星の老衰ね。これに関してはパラレルワールドである以上寿命の短い地球が存在してしまうからどうしようもないのよね。申し訳ないけれど納得してとしか言えないわね。さて最後は。」


 最後は僕だった。

 

 「あなたは人間、つまり人の先祖返りになるわ。これはかなり珍しいことでほとんど確認されていないわね。寿命は普通の人と変わらず七十から八十年程度。これといった身体的特徴もなく身体的特技もないわね。」

  

 (あれ...今までの人と違ってなんら利点がないのだが・・・もしかしてただ珍しいってだけ?)


 「ただ人間っていうのは原種に近くなればなるほど個で完結する傾向があるの。昔は、狩りにより自分より格上と闘わなければならなかったために、集団を作る傾向ができていった。さらに現代では、人は一人では生きていけないという風潮まである。しかし本来は個が生き、個が生活すれば他を気にする必要がないと言われていたほどだったの。これは必要最低限を見極めて取捨選択をし続けるもので、かなりの排他的行為の象徴的文句なの。」


 (確かに僕は自分と自分が大切なものがあれば、ほかに関する興味はそれほど高くないように感じる。)


 「で、あなたの地球は機械文明の発達によるAIの高度知能化に人間がついていけないことによる種の衰退と機械や化学の技術を生み出すために出た公害及び、環境への被害の拡大により人類種および生物の絶滅が確定されたわ。」


 僕は、いや僕を含めてみんなが今の説明による自分の特徴と故郷が滅んだ理由に少なからず心当たりがあり少しづつこの現実を受け入れていくのだった。



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