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誰が為に  作者: 白亜タタラ
世界の常識と陰謀編
103/108

行け、ノルン!

 最初にカナタたちを取り囲んでいた盗賊たちは全部で23人だった。そこから爆発音を聞きつけて現れたのが約50人。そんな人数の盗賊たちを1人1人縛るだけでも一苦労で、思った以上に時間をとられた。全員を捕縛し終えたカナタたちは安全な所で馬車を止めて待たせていたアルゼン達の元へと戻っ

た。

 だが、一仕事終えたはずのカナタたちの表情はどこか曇っていることをアルゼンたちは察した。


 「お待たせしました。待ち構えていた(・・・・・)盗賊団たちは全て捕縛して連れてきました。」


 盗賊団との戦闘の事などを説明していくと皆一様に驚いた顔をしている。なかでも、魔道具まで所持していた事と援軍が駆けつけた事は予想もしていなかったのかいい反応だった。


 「おお、流石だなカナタ君!まさか小爆発を起こして援軍を呼ぶ魔道具を持っているとは予想もしていなかった。よく少数でこれだけの数を捕らえたものだ。」


 「いやまったくですな!50を超える盗賊をこの短時間で捕らえるとは驚きました!......それはそうとこれだけの事を成したのです、何か褒章を送らなければならないでしょう。そこでなのですが、カナタ様たちはハック侯爵の依頼をパーティーとしてではなく個人個人で受けているらしいですな?」


 カナタたちが盗賊を連れて戻るとアルゼン達は考えていた以上の数に驚き、そしてほとんど無傷のカナタたち面々を見てさらに騒ぎ出した。特にマルク王子とアルカ王女の2人は、カナタたちが戦いに出たとあって大いに興奮していて馬車の中で騒ぎまくって煩いくらいだった。


 そんな中で宰相さんは唐突に以前の依頼の事を聞いてきた。


 「そうですね。実は俺たちは冒険者ギルドでパーティーとしては登録していないんですよ。全員登録はしましたが、それは個人としてで依頼とかも全員で受ければいいかなと。少し安易でしたかね?」


 「なるほど、本当はパーティーではなかったんですね。うーん、一概には言えませんがパーティーで登録している冒険者にしか受けられない依頼とかもあると聞きますし、どうせ登録するのでしたらパーティーとしても登録しておいた方が何かと便利だとは思いますよ。ただ、一部の、それこそ超一流と呼ばれる冒険者たちは個人(ソロ)で登録している者がほとんどですが。」


 「やっぱりそうなんですね。あの時はパーティー名とか、書類への記入とかが面倒でわりとあっさり決めちゃったんですよね。後ろで騒いでいた侯爵の事もありましたし。今度冒険者ギルドに行ったときにパーティーの登録もしておきます。教えてくださってありがとうございます、宰相さん。」


 「いえいえ。おそらく今回の件が片付いたらもう1度呼び出しがあると思います。その時はパーティーとして褒賞を与えるので名前を考えていてください。よろしいですよね国王様?」


 「ああ。信賞必罰は王族としてきちんと行わなければならないからな。そういうことだからカナタ君、よろしく頼む。」


 ハックの件も含めてカナタたちが王国に齎したものは大きい。貴族の汚職は国民からの信頼に関わり、事がこじれてしまった場合はそれだけで信用問題から王国の危機にまで発展する。国は国民がいるから回るのだ。信頼と信用を失った国に留まりたいと思う国民は時間とともに減っていく。そしてそんな反国精神を抱いた国民たちが進んで国政に参加するはずがない。国民に不平不満が募って暴動が起きる可能性すらある。


 と、それほどまでにハックの件を早期に潰せたことが大きいのだ。さらにそれに関わっていた魔族の事に関してはさらに重要だ。その情報だけでこうして各国が動く程の一大事である。カナタたちは何気なく解決していっているが、実は王族の面々がこうして話を出すほどには大ごとなのである。


 「その件は了解しました。ただ......1つ、と言っていいのかわかりませんが少し厄介なことになりそうです。」


 カナタは盗賊たちを捕縛した時の事を話した。最後にザックの所持品を改めた時に出てきたもの(・・)についてもちゃんと伝える。


 「......()ですか?その程度の物でしたらこの盗賊団の金庫の鍵とかではないのですか?そんなに面倒には思えませんが?」


 そう、ザックの懐から出てきたものは”鍵”だった。アルカが言ったようにただの鍵ならばそう厄介そうには思えない。それこそ仲間を呼ぶために使っていた魔道具の方が、その入手経路などなどいろいろと調べなければならないことが多く面倒そうである。だがカナタたちは首を横に振る。


 「事はそう簡単ではなさそうなんですよね。まず、これがその鍵です。」


 カナタはザックから取り上げた鍵を見せる。だが、見た限りでは普通の鍵にしか見えない。どこにでもある鉄を加工して作られたような真っ黒い鍵である。確かに金庫などに用いるカギにしては美しさには欠けるが、そうだとしてもそういうものが無いわけではない。


 「ノルンがこの鍵からザックたち盗賊団の面々以外の匂いを嗅ぎ分けました。どうやらこの鍵は牢のカギのようなんです。」


 カナタが告げた瞬間にこの事を知っていたカナタたち以外のここに居る面々は一気に深刻な表情に変わった。マルクとアルカはどちらかと言えば嫌そうな顔と表するべきだが、王族としてこの事実に関して深刻に考えなければならないのは分かっているので頑張って表情を作っていた。


 「最悪なのは臭い的に囚われているのは子供の割合が多いらしいという事です。そしてこれを見てください。」


 その後にカナタが見せたのは一冊の手帳のようなものだった。ネメシアでは紙は普通に普及している。ただ、生産方法は地球のように木を切ってそこから加工して作るわけではなく、”植物魔法”という能力が使える人間が魔法で作り出している。その結果、この世界の紙の品質はかなり揃っていて、使いやすく値段もかなり安いのだ。だが、印刷などの技術は無いので本となると地道に書き写すことでしか量産できないので、その手間暇から値段が跳ね上がる。そしてザックが持っていた物は紙をまとめただけの言わばメモ帳のようなもので、作りとしてはかなり簡単なものだった。


 「これは!......なるほどこれに書かれているのは囚われている者の”売却値段”とその”取引先”ですか。既に線が引かれて、書いたことが消されているのは取引が終わったという事ですかね。」


 「下種共が!」


 「お兄様...」


 「大丈夫だアルカ。これが見つかったという事は今後この盗賊団が活動していくことはない。それに鍵もカナタさんたちが手に入れてくれた。まだ囚われている人は助け出す事が出来る!」


 ローザが怒りを隠すことも無く吐き捨てると、アルカは少し青い顔をして兄の元に寄り添った。マルクはそんな妹を気遣って少しでも明るく振舞っている。さらに、まだ囚われている人を助けられると前向きなことも話して聞かせた。今のここにいる戦力なら助けることはそう難しくは無いという判断と、少しでも光明を見出しておくことでアルカにも前を向かせようとする兄心であった。


 「マルク様の仰る通りですね。カナタさん、その盗賊のアジトが何処にあるのか分かりませんか?これでも私は王都で騎士をまとめる身です。このような事になったからには救える者は救いたいのですがお願いできませんか?」


 軍務大臣のケルビンはカナタたちにそう願い出た。王族としてもこの事態を見て見ぬふりはできないのかアルゼンも頷いている。


 「問題はそこなんですよね。今俺たちがいるこの街道は少し木が生えてますが、かなり見晴らしがいい場所です。それこそノルンが早々に気づいていなければこの馬車も盗賊に見つかるほどに。そして周囲を見渡してもこれだけの人数が隠れて暮らせるような、盗賊団が潜んでいるような場所が無いんですよねー。」


 既にカナタたちはこの鍵と手帳を見つけた時に周囲を観察してアジトの場所を探っていた。しかしそれらしい場所が見つからないためにため息をついていたのだ。


 「カナタ様たちのスキルでも見つけられない所にあると?」


 「俺たちのスキルでも距離があればその精度は落ちますからねー。見つけるには少し時間が(・・・・・)かかりそうです。」


 「「「えっ?」」」


 漂っていたのは盗賊のアジトの場所が見つけられないという雰囲気で、今回の件は王都に知らせを送って騎士たちを呼び寄せ、時間をかけて捜索を行わなければならず捕まっている人間にもさらに被害が出るという負の連鎖を暗示させる暗いものだった。しかし、カナタが言ったのは少し(・・)時間がかかるというもの。それは誰も予想しておらずに皆間抜けな顔で声を出してしまった。


 「うん?」


 「カナタの言い方だとアジトが見つけられないと聞こえる。彼らはその発言が簡単にひっくり返って驚いているだけだよ。」


 「お主は効率的というか面倒くさがりというか、言葉を省略するところがあるからのう。儂らのように共に時間を過ごしてない者たちが相手だと誤解を生むことがあるぞ?」


 「それは......すみません。俺達にはノルンがいるので、少し本気で辺りを走り回りながら索敵してもらえば見つかると思います。ただ時間はかかるとは思いますが。」


 アリスたちからの指摘で自分の言葉を思い返したカナタはみんなの言っていることに納得した。そして、少し顔を赤くしてカナタはすぐに言葉を付け足した。


 「そ、そうなのか!では頼んでもいいか?」


 「勿論ですよ。流石にこのまま捕まっているであろう人たちを見捨てるのは人間として(・・・・・)どうなんだと思いますしね。ノルン頼むよ!」


 「ぐるる!」


 カナタが声をかけるとノルンは猛スピードで駆けて行った。王族の面々にはその速度に目が追い付かず、ものすごい強風が通り過ぎて行ったようにしか感じられなかった。


 カナタたちは一旦馬車に戻りおやつ休憩になった。というより、カナタたちがただ待っているのも時間の無駄だし少し小腹が空いたので皆に振舞ってティータイムに誘ったのだ。これにアルカがすぐに釣られ、兄のマルクも耐えきれずに手を出し始めた。そのことに一同が先ほどまでの張りつめた雰囲気から和んだ雰囲気に戻って休憩になった。


 1時間ほどが経った頃に漸くノルンが戻ってきて、一同は捕まっている人たちの救出に動き出すのだった。



読んでくださってありがとうございます。

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