盗賊
100話到達!
まさかこの話がキリ番を踏むとは・・・
これからもよろしくお願いします。
5国会議が開かれる獣王国を目指して王国を出発してから2日と少しが経過した。国王、アルゼンが用意した馬車はカナタたちの想像以上に高性能で、充実した馬車の旅を満喫していた。変わりゆく風景をぼーっと眺めるのもいいし、今回行動を共にすることになった王家の人たちとの会話も、自分たちとは身分差がある分新鮮な感覚で話を聞くことができた。宰相さんやローザの話は上に立つ者の目線から語られる内容でそちらの話も聞いていて飽きない。
そんな感じで順調に進んでいた馬車の旅だったが、現在は道の端に馬車を止めて緊急会議の最中だった。
「この先に盗賊がいるというのは本当なのかい?」
宰相さんが今し方アリスの告げたことに対して確認を取る。
それに最初に気づいたのはノルンだった。ノルンの聴覚や嗅覚はこの街道のような遮るものがない場所ならば、100メートル以上離れた場所の情報も拾うことができる。今回も少し先に人の匂いを感じ取ったのでカナタにそれとなく伝えたのだ。
その後、ノルンとカナタのやり取りに気づいたアリスがスキルを使って調べたら出るわ出るわ"悪事の記録"という訳で、そのことを同乗者たちに伝えたのだった。
この記録というのもこの世界独特なもので、少し大きな街に入るときにはステータスプレートの提示を求められる。これはステータスプレートに記録される事柄を調べているのだが、その中には単に自身のレベルや身体能力の数値だけでは無く、今までに犯してきた悪事の内容、つまり殺人や強盗、詐欺に至るまで記録されるので悪人は街に入る前に発見できる仕組みなのだ。
アリスも【神眼】スキルを使うことでこの項目を調べることが出来る。アリスが人の情報を視る時はしっかりその辺のもちゃんと把握している。
ただこれには抜け穴がある。それこそベッソが悪事に手を染めていても気づかれなかったようにうまく隠すことができる。しかし、その方法は一般的には知られていないので今回の盗賊たちのように調べればすぐにわかり、捕まることの方が多いのが現状だった。
そして、この先に居るのも例にもれず悪人ばかりだったので慈悲は無い。
「はい。アリスがスキルを使って調べたところ殺人や強姦、その他あらゆる悪事に手を染めている人間がこの先に数人潜んでいます。多分なにも知らずに通った馬車などを襲って積荷や女性を奪っていくんだと思います。それもこの先にいるのはそういったことに慣れている連中、つまり常習犯たちです。」
「そういえばアリス君は相手のステータスが見えるスキルを有しているんだったな。だとすれば悪事の数々を調べられるのも道理だ。それにそんな犯罪を犯すような連中に容赦はいらない。」
「あーしかしですね国王様。そういった犯罪者たちを捕まえて街に連れて行けば1人頭いくらで売れるんですよ。街としては売られた犯罪者たちを奴隷商で奴隷として契約させて労働力にできますし、売った方は金が手に入る。それなりに腕がある冒険者たちが好んで受ける盗賊の処理依頼ですね。だからお前たちがその盗賊たちに対して捕縛する余裕があるなら捕縛したほうがメリットが多いぞ?」
軍務大臣、名をハーベストと言うらしい彼からそんな情報が聞かされる。ハーベストからすればカナタたちにお金が入ることはどうでもいいが、盗賊たちと言う労働力が手に入ることは有り難かった。獣王国に向かっているとはいってもまだここは王国寄りだし、近場の街は王国の領土内の街なので結果的に王国で使える労働力が手に入ることになる。さらに言うなら、盗賊としてやっていけるだけの力がある輩はステータスが高いので、労働力としてなかなか期待ができる。そのためなおのこと捕縛してくれるに越したことはなかった。しかし、カナタたちを護衛として雇っている手前、その辺りの判断もカナタたちに任せられる。なので、ハーベストはそれとなくメリットの提示をして捕縛の方向に持っていこうとしたのだった。
「俺たちこれでもお金にはそれほど困ってないんですよね。ただまあ無駄に殺しをする必要もないし、捕まえられるなら捕まえる方向で動きますか。」
カナタの方針にパーティメンバーがそれぞれ頷く。そしてそれを聞いた王国メンバーは心なしか嬉しそうだ。
「方針も決めたし、あいつらの相手は俺たちがするってことでいいですか?あと何か要求とかあればできる限り聞きますけど?」
カナタが問いかけるが宰相さんを含む他の面々は特に口を出さなかった。
と、方針も決まったことで、ずっとここに留まっているわけにもいかないので、カナタたちは特段気負うこともなく馬車から降りて盗賊が潜む街道へと向かって行く。むしろ変に意識していない分、何も気付いていない風を装うにはちょうど良かった。
「人数的には全員でやるのが早いんだろうけど、今回はアスカに任せようかな?」
「はい、お任せください。過酷なダンジョンでレベルを上げた今、このようなことで皆さんのお手を煩わせることはありません。」
「うん、任せる。でも油断はダメ、絶対!アスカは人相手の戦闘は初めてなんだし、1人1人確実に対処して制圧すること。OK?」
「はい。」
アスカは現在、パーティー内で料理などの家事全般を行なっている。もちろん誰かが強要した訳ではなく、アスカが自主的にやり始めた。そして、サポートとしてカナタたちはまだ慣れていない間は、食材の提供と地球発の料理レシピの説明などをほぼ毎日行なってきた。
2週間の特訓中に魔物を相当数倒しているのでお金も手に入った訳だが、アスカは自分は"奴隷"なのでお金は全てカナタたちの物だと言って全てを渡している。その時に全員で話し合ったのだが、アスカが折れることがなかったのでカナタがアスカのお金を管理することで折り合いをつけた。もしもアスカが自分たちの元から離れると言い出した時に渡せばいいと考えている。
また、買い物などはその都度カナタかアリスがお金を渡している状態だ。正直な話、カナタたちの持つ資金は中規模の国の国家予算並みに潤沢なので、ちょっとやそっと使ったところで尽きることはないのだ。
とはいえカナタたちは基本的にみんな一緒に行動するため買い物もそう手間のかかることもないし、支払いは基本的にカナタがするのでアスカが気を使うことも少ない。
と、話が逸れたが、そんなアスカも昔とは比べ物にならないくらいレベルを上げている。それこそ、こんな所で盗賊をやっている人間などに負けることが無いくらいには強くなっている。
カナタたちが気にした様子もなく歩いて行くと盗賊たちの雰囲気が変わった。早い段階でノルンが気づいたこともあり、すぐに街道から外れたところに馬車を隠して止めることが出来たため、まだ盗賊たちには馬車の存在は気づかれていない。なので歩いて現れたカナタたちだけが盗賊たちの待ちに待っていた獲物となる。
カナタのパーティーではアリスもヤクモもアスカも皆んな美人さんだ。ヤクモに関しては喋らなければという制約がつくが...。
そんな美味しい餌が現れて、しかも見た目だけでいえばカナタたちは子供なので簡単に御せると思ってしまうだろう。
「動いた。アスカはいつでも動けるようにしておいて。」
カナタたちは全員が空気が変わったことを敏感に察知したが、一応アリスが敵に聞こえないように小声で声かけをしてくれる。なんだかんだ言って新入りのアスカに対して1番気配りが出来るのがアリスなのだ。
「おう。嬢ちゃんたちこんなところを歩いてどうした?この先の街に行くのか?」
なかなかに顔もよく、身綺麗にした男がゆっくりと歩きながら声をかけてきた。情報の無い状態で対面していれば、気さくな男だと勘違いして話に興じてしまうかもしれない。さらにそれが女性ならこの男に好意を抱いてもおかしくは無いほどに声をかけてきた彼はイケメンだった。
「俺たちはこの先の街で前にお世話になった人と会うために移動しています。見ての通り若輩でお金もそんなに無いので途中までは馬車に乗せてもらいながら移動して今はゆっくりと歩いて来た次第です。」
当然この手の対応はカナタが行う。面倒なやつをアリスたちに接触させたくも無いし、会話という分野ならこの中ではカナタが一番適任なので自然と対応した。
「おう、そうかそうか。ただこんなところにお前さんたちだけでの移動は何かと危険だぞ?まだ街までは距離があるし......そうだな。俺が案内してやろうか?」
(はいアウトー!かっこいい奴がそれを言っちゃいけません!何人の女を泣かせてきたやら。許せませんな。あぁ、ゆるせませんなああぁぁ!おっと、女性のために怒っているんですよ?ボクの嫉妬心なんてないですよ?ないない。ホントウダヨウ。)
「本当ですか!?いやー親切なお兄さんと会えてよかったです。俺たちもいつ魔物が現れるかと思って、内心ビクビクしながら歩いてたんです。お兄さんが一緒なら安心ですね。」
「おう、任せとけ。俺も同じ方向に向かうところだったから丁度いいぜ。道案内も任せな!何度も通った道だ、安心してついてくるといい。」
おそらく仲間の元に案内するんだろうが、今回はカナタたちにとっても丁度いいので素直について行く。カナタたちのそばにはノルンもフィルもいるのだが、サイズ的には可愛い子犬、子狐サイズの見た目の2匹には注意がいってないようだ。カナタたちが見た目女子供だけで御し易そうで油断しているというのもあるのだろう。
その後は男の案内に従って歩いて行く。途中で他愛無い話をしたりして暇を潰しながら進むのだが、男がアリスやヤクモたちに話をよく振る。普通に見れば場の空気を盛り上げてみんなに話題を振るいい奴なのだが、下心があることが分かっているカナタたちは内心が表に出ないように苦労していた。
「あれ?お兄さん何で止まるんです?休憩ですか?」
少しして特に何かがあるわけでもない、それまでと変わらない街道沿いのある場所で案内をしてくれていた男が立ち止まった。
「あれ、お兄さん何で止まるんですか?休憩ですか?」
そんな分かりきっていることを、一応こういう場合のテンプレとしてカナタはあえて聞いた。
今いるのは、潜んで隠れていた盗賊たちを通り越して、さらにもう少し進んだ所。
つまり、この案内をしてくれた男とその仲間達で前後を挟まれたかたちだ。
男が止まることが合図だったのか、後ろからも潜んでいた男たちが姿を見せた。
「ぐへへっ。なかなか上もの揃いだね〜。今回は大当たりだ。」
「おいおい、俺にも味見くらいの役得はあるよな?」
「ガキばっかりかよ。あんま俺の好みじゃねーな。まあ、金にはなるからいいけどよ。」
そして、口々に聞きたくも無いことを喋りながら”野生の盗賊さん”たちが現れた。案内をかって出た男とは違い、新たに現れた奴らはどいつもこいつも薄汚れていて、ザ・盗賊と言っていい見た目をしている。口調からしても全員救いようが無いのだが、少しだけ近づきたくないなと思ってしまうくらい不潔そうだ。
街に入れないのはともかくとして、体を拭いたりなど細かいことは気にしていないらしく、男たちからは不快な匂いが漂っていた。
心境的な嫌悪は置いておくとして、お互いの目的が揃ってようやく下準備が終わった。盗賊はカナタたちをおびき寄せて、カナタたちも盗賊たちを誘い出してお互い後は捕まえるだけである。
両者の思惑が奇しくも一致した所で盗賊たちは距離を詰める。カナタたちからは打ち合わせ通りにアスカが一歩前に出て盗賊たちと相対するのだった。
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