5話 写真
よろしくお願いします
そして放課後、僕は教室に残って桐崎さんを待っていた。すぐ戻ってくると言っていたが、かれこれ30分くらい待っている。流石に時間を無駄にしたくないので、僕はバイトで頼まれた簡単なプログラムを作っていた。常にカバンにノートパソコンを入れていて、空いた時間に小遣い稼ぎだ。完成まであと少しという所で教室の扉が開いた。
「ごめん!長引いちゃった!永田先生話長くてさぁ」
永田先生とはうちのクラスの副担任の数学教師、低身長の高学歴で女子生徒には甘いことで有名だ。
「あ、うんん、全然、大丈夫だよ」
「なにしてるの?」
僕の机にあるパソコンを見て言った。
「ん?あぁちょっとバイトでプログラミング」
「へぇ、できるの?すごいね」
「簡単なものしか出来ないよ」
このパソコンじゃね
さすがにノートパソコンじゃ限界がある
「それでもすごいよ。でもわざわざ持ち運ぶの重くない?」
「カバンの中ほぼからっぽだからそんなに気にならないよ」
「え?教科書とかは?」
「家じゃ勉強しないから全部ロッカーに置いてるよ」
「ふーん。意外だね。もういいの?それ」
「あぁいいよ、急ぎじゃないし」
「なら、行こっか」
傾き始めた日差しが二人があとにした教室を照らしていた。
それから昨日の晩御飯がパスタだったとか、最近買った新しい靴がお気に入りとか、他愛もない話をしながら歩き駅に向かう。僕の家と反対方向の電車に乗り、二駅過ぎるとこの街で一番大きなショッピングモールが見える。確かに桐崎さんはこっち方面に家があったはずた。
「家はこの近く?」
「そ、もうひと駅向こうだよ。でもそっから15分くらい歩かないとダメだけどね」
「そうなんだ」
そんな話をしてると目的地に到着。やはりここは学生が多く、見る限り十組ほどの学生が座ってる。僕はコミュニケーションがとれないだけで、別に人が多いところやオシャレなところに来ることに抵抗はない。
桐崎さんは慣れた様子で注文し始める。
「いらっしゃいませ」
「さくらミルクプリンフラペチーノ二つ。」
「かしこまりました。店内でお飲みになられますか?」
「神谷くんどうする?」
「ん、ん?どっちでも、いいよ」
「んじゃあ店内でお願いします」
「かしこまりました。お会計は別々されますか?」
「は
「ここは僕が出すよ」
「え?でも」
「いいの、前回の断っちゃったお詫びってことで」
「ふーん。なら甘えちゃおっかな?」
桐崎さんはそう言ってはにかんだ。一瞬見とれてしまうが、よしよしよし。桐崎が注文している間に五回ほどシミュレーションしたおかげでスムーズに会計を持つことができた。前回断ったことに罪悪感を覚えいたことだしちょうどいい。
「お会計二点で、1,274円です」
「これで」
「1,300円お預かりします。お釣りの26円とレシートのお返しです。あちらのカウンターでお渡しします」
「はい」
店員との会話は無駄のことを喋らなくていいので楽だ。二人分のドリンクをもらいテーブル席につく。
「奢ってもらっちゃってありがとね」
「全然、これで前回のことはチャラってことでいいかな?」
「もちろん、というかそんなに気にもしてなかったしね、さて、目的は写真でしょ?」
「そうだった」
携帯を取りだし何枚か写真を撮る。最近の携帯のカメラは機能が良すぎて、一眼レフとかを持つ人が減っているんじゃないだろうか。
「見せてみせて」
「ん」
「おぉいい感じ」
携帯を受け取った桐崎さんは感嘆の吐息を漏らす。絵の勉強をした時に物の配置、構成、配色、光の加減についても学んだ。こんな所で活きるとは思っていなかったが、写真を撮る上でも役に立った。
「なにか投稿する上で気をつけるポイントとかある?」
「そうだなぁ、私がオシャレだなって思うのはやっぱり統一感があったりこだわりがあるものかな、だからアドバイスするとしたら、神谷くんも系統決めた方がいいかもね」
「なるほどね、ありがと。参考にしてみるよ」
桐崎さんと飲んださくら味のフラペチーノは前に飲んだ時よりも甘い気がした。
・
・
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「なぁ、あれ」
「どしたの新太」
「うちのクラスの桐崎と神谷じゃね?」
「あぁほんとだね。意外な組み合わせ」
「…。」
「どうしたの?」
「いやいこ。映画が始まる」
「そだね。楽しみだね。カジノ〜ラストゲーム〜」
「あぁ。今回も藤原竜馬に期待だな」
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