1話 能ある鷹は爪を隠す
初投稿です。暖かい目で見ていただくと有難いです。
「能ある鷹は爪を隠す」
約10年前、当時小学生であった僕、神谷 在人は幼いながらもこの言葉にとても惹かれた。普段は才能を表に出さず、いざという時に真価を発揮する。
「なんだそれカッケー」
そんな人間になりたいと思った。そのためにはまず隠す為の爪を持とうも思った。
僕は決して何かの才能に溢れていた訳ではない。しかし要点を理解することに優れていた。そして目的の為ならば努力できる人間だった。僕はありとあらゆる才能を身につけるために最大限の努力をした。いつのまにか僕は自らの爪を磨き、ハイスペックな人間になることに重きを置くようになった。幸いなことに我が家は裕福だったので、したいと言った習い事は大体させてくれた。超英才教育受け、友達と遊ぶ時間などない程、ステータスをあげることに全フリした。
そして僕は高校生になった。
Question
ステータス向上に全フリした人生を送ってた人間が、自らのステータスを重視する高校に入ったら、どうなるか。
Answer
超ハイスペックコミュ障になる。
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高校の入学式が終わって一ヶ月が経とうとしていた。朝から僕のクラス一年五組は騒がしい。かなりグループも確立してきて、アイドルがどーだの、駅の近くにできたカフェに行きたいだの、他愛もない会話が繰り広げられる。
「はよー」
ガラガラと教室のドアを開けて入ってきたのは2個前の席の碓氷 新太だ。見るからに陽の匂いを感じる。身長170cm後半はあり、スポーツ系と言うよりはチャラい系のイケメン。僕の通う私立京洛高校は校則が緩く過度でなければ髪型の変形も認められている。そのために碓氷 新太は一年生でありながら髪を明るめに染めてワックスで遊ばせている。見るからに女の子でも遊んでそうである。
「おはよ。眠そうだね」
もちろん挨拶をされたのは僕ではない。
返事を返したのは有馬 透。目立つ訳でないが整った中性的な顔をしている。髪型は少し長めの落ち着いた感じの茶色で、身長も小さく女子に可愛がられそうな見た目である。話し方にも優しさを感じる。
「ねみーあんま寝てねー」
「今日、小テストあるよ。勉強した?」
「するわけないだろー」
「だよねだよねー」
二人の会話を隣で聞きながら、僕は周りなんて知ったことのないような顔で本を読んでいた。だがしかし!本当は自分が話題に入れる隙がないか超伺っているのだ。本の内容などほとんど頭にはいっていない。
「今日、体育あったよねー?永遠とレイアップ出来ないんだけどコツとかないの?」
「えぇ、知らん、感覚だろあんなん」
ここだぁ!!!問題ない!バスケなら得意だ。ここでコツを教えて仲良くなるべし!思い切って僕は二人に話しかけた。
「あ、あのっ!」
「ん?…なに?」
急に喋りかけられた二人は怪訝そうに振り返った。
特に悪意などはないのだろうがその目が僕の体を強ばらせた。
「えっ、えっと、あの」
やっべー言葉が出てこない。「レイアップは手だけじゃなくてジャンプが大切なんだよ。ボールは置いてくるイメージですると上手くいくよ!」って言いたかったのだが頭が真っ白だ。
「…?」
「なに?何か用?」
二人は顔を見合わせてこちらの様子を伺ってる。
せめてRPGみたいに選択肢だしてくれと願うもののコマンドなど出るはずもなく…
ここで時間切れ。SHRの開始を告げるチャイムがなった。
「用がないなら俺らいくから」
と、言って自分の席に戻っていった。あぁ今日も失敗だ。入学してからほぼ毎日このような会話をクラスメイトと繰り返している。
勉強もスポーツもひたむきに一人で努力し続けてきた。結果がついてくるようになり僕には力がついたのだと思っていた。だけど、僕は見落としていたのだ。一人では絶対にあげることが出来ないコミュニケーション能力。高校生活において、いや、人生に置いて最も大切な力の存在を。
え?友達ってどうやって作るの?
ご覧頂きありがとうございます。