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第八話 夢
スマホを両手で持ったまま、自室のベッドの上で呆然と俯く陽大。楓の後にも、陽大は教師、クラスメイト、夢路の祖母など、夢路と関わりのあるたくさんの人に電話をかけたが、返ってくるのは「誰?」という言葉ばかり。誰も、誰も覚えていない。夢路のことを覚えているのは、おそらく陽大、ただ一人。
深い絶望が陽大を襲ったが、ここで諦めてしまっては、一生夢路は帰ってこない。深呼吸をして顔を持ち上げた陽大の瞳には、まだ強い光が宿っていた。
「何か、夢路が存在していたって証は……」
ベッドから立ち上がり、周りを見回すも、夢路の面影が残っているものは見つからない。
「っそうだ、去年もらった誕生日プレゼント……」
夢路からもらったプレゼントが入っている机の引き出しを開けようと、して。
――次の瞬間、陽大の頭を、鋭い激痛が襲った。
「っ、い゛……っ、なんだ、これ……?!」
脳を直接揺さぶられるような痛みに抗えず、陽大はそのままベッドの上に倒れ込み、頭を抱えたまま、意識を失った。
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