第七話 微かな希望と定かな絶望
夢路が消えて混乱する陽太。
何かしなければ現状は変わらない。行動を起こさなければ。そう思った陽大は、とりあえずスマホを取り出し、友人の楓に電話をかける。陽大が覚えているのだから、身近な人はまだ覚えているかもしれない。そんな一縷の望みにかけて。
コール音が四回ほど鳴った後、楓が応答した。
「んぁー……なんだよ、陽大かよ……。こんな朝早くからかけてくるなんておっ前もほんと俺のこと好きだなあ……」
「朝早くってもう八時過ぎてんだけど。って、そんなことどうでもいいんだよ、お前にちょっと聞きたいことがあって」
「え?俺のタイプ?んー、そうだな、ちょっと小柄な感じで、笑顔が似合う子かなあー。あ、できれば髪の毛は長いほうがいいなあ……」
「誰も聞いてねえよ!! ……んなこといいから、お前、陽本夢路のこと覚えてるか?」
くだらないことに時間を費やしている暇はない、馬鹿なことを言っている楓を無視して、さっさと本題に入る。夢路のことを覚えている人が一人でもいれば。そんな切実な願いを込めて。――しかし。
「あ? ……誰だそれ?」
そんな望みは、すぐさま打ち砕かれた。
「そん、な……」
「んだよお前、知らないところで女の子と関わり合ったのかよーうらやましいぜ」
「なんで覚えてねえんだよ!! 陽本夢路!! 同じクラスだったろ?!」
「うおっ?! なんだよ、起きたばっかなんだからでけえ声出すなよ。だから覚えてないって……」
驚いた声を上げ、めんどくさそうに返す楓。そのまま「用はそれだけかー?俺まだ眠いからもう一回寝るわ。じゃーな」と言って、電話は切られてしまった。
「なんで……」
口からこぼれたかすかな声は、窓から吹いた風に、溶けるようにかき消されていった。
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