あの世からこんにちわ
寒い…。
そう、ここは寒い。
何故かって?
それはね……。
ユキノフルマチダカラ。
北海道なんだけど、そりゃもう雪が降りまくってる。
積もって仕方がない。
そんな寒い町での楽しみはかまくらを作って入ることかなぁ〜。そこに鍋を持ち込んでみんなで囲んで食べるのが好きだった。
でもね?
今は…もう出来ない。
だってさ、一番仲が良かった奴がいないから。
何故って?
そりゃあさ、いたらいたで楽しいよ。
でもそいつ、去年にバイク事故で死んじまった。
だから無理なんだ。
単独の事故だったらしく、雪が降る日だった。
今日も雪が降っている。
その時と一緒だ。
条件が揃っている。
だから何だってんだ?
そいつが霊で現れるって?そんなことあるわけないだろ?
僕は友人にそう話した。
で、今は友人2人とかまくらに入って暖をとっている。
熱かんなんかも持ってきてるからみんなもう出来上がっていた。
「あのさ、ちょっといいか?」
「?…どうした?」
「いやさ、…さっきから外から覗き込んでる奴がいるみたいなんだけど…ちょっと気味悪くね?」
「何でだよ。ただ覗いてるだけなんだろ?観光客かなんかじゃね?」
「あのさ〜、俺も最初はそう思ったんだけどさ、フード越しに顔半分だけが見えるんだよ。だけどさ〜、どこかで見た気がするんだよね〜〜。」
「知り合いか何かか?」
「それはない…と思う。ここに来ること話したのは両親だけだし。それに、ガキじゃないんだしさ…いちいち見に来るわけないって。」
「なぁ、僕らで探りを入れたらどうだ?」
「どうやって?そいつは1人っぽいから話しかける…ってのは難しいかな。」
「ならさ、こういうのはどうだ?…あ〜あ、1人足りないなぁ。誰か知り合いでもこないかなぁ〜。とかさ。」
そう言った時一瞬だがその場の空気がヒヤリとした感じがした。気のせいだろ?そう思っていたんだが、友人達も同じことを考えていたようだ。1人震えている。
「おい、どうした?」
「あっ、あのさ〜、その覗き込んでるのってフードを着てるやつなんだよね。それって顔半分しか見えてないんだよね〜。」
「ああ、それがどうした?」
「なら間違いないって。アイツだよ。アイツ!戻ってきたんだよ。」
「戻ってきたって…誰がだよ。」
「死んだアイツに決まってるじゃん。間違いないって。」
「じゃあ何か?化けて出たってか?んなわけあるか。」
「おいおい、ちょっと待てよ。確認しようぜ。見たのお前だけなんだろ?じゃあ意識しすぎて勘違いしてるかもしれないしな。」
「お、俺が間違ってるってか?じ、じゃあ、証拠…撮ってやるよ。それなら文句ないだろ?」
「そりゃあそうだけど…どうやるんだよ。」
「こうやるんだよ。」
そう言って友人の1人がカバンから何かを引っ張り出した。それは小さな手鏡だった。男子なのに持ってるって…どんだけだよって言いたくもなるがそこはあえて突っ込まないでおく。その手鏡を角度を変えて持ち直し、出入り口を写す。
そこに入り込んだらシャッターをきるつもりのようだ。
しばらくは何も見なかった。
でね?それでも待ってたんだ。友人は。
どれくらい待っただろう…。
スゥーっと顔半分が見て取れた瞬間シャッターをきった。
友人は小さくガッツポーズをとって仲間に見せようとした。そしたらさ、友人の様子がおかしくなり、その場にバタンと倒れた。
慌てたのはこっち。
もう写真どころではなかった。
その場が騒がしくなる。
仲間は携帯から救急車を呼んだり、親に電話をかけたりと騒がしい。
かまくらの近くを歩いていた人達も騒ぎを聞きつけて集まってくる。
「はい、…はい。そうです。ここです。生年月日?えっとぉ〜。」
「貸せって。」そう言ってテキパキと受け答えしている仲間の姿を見ながら僕は周りを見ていた。
「大丈夫か?おい!」
倒れた友人の意識はまだ戻らない。
そして少し待つ間、野次馬たちの姿の中の一人に目がいった。そいつはちょうど年恰好から僕らとそう違いはなさそうだ。でもね?一瞬だけ目を離した隙に消えてしまっていた。
本当に一瞬だったのに、どうやって??
そんなことが頭をよぎったが、救急車がやってきたので忘れてしまっていた。
倒れた友人の親もすぐにやってきた。
たまたま休みだったようだ。良かった。
処置も終え、一般病棟に移されたがまだ眠ったままだった。起きるのはもうちょっと後らしい。
それでも大したことなくて良かった。ホッとした。
そこにさっきまで一緒だった仲間達も駆けつけてきた。そう、救急車には僕一人だけが乗り込んでいたのだ。
「なっ、なぁ〜。ちょっといいか?」
「何だよ!ここでは言えないことか?」
「ああ、そうだよ。だからちょっとさ〜。」そう言いながら僕の手を引っ張る仲間達。その真剣な顔を見てただ事ではないと感じた僕は言われるがまま、引っ張られるまま部屋から出て廊下にきた。
「あのさ〜、いいか?例の写すって言ってたやつ確認の意味で再生かけたんだけどさ、恐ろしいものが写り込んでたよ。」
「恐ろしいものって…大げさだなぁ〜。」
「大げさじゃないんだよ。だってさ〜、写ってたのはこれだから。」
そう言いながら二枚の写真を見せてくれた。
コレは……そこに写ってたのは確かに友人だった。亡くなったはずの…。
しかもその顔は血でベッタリだった。恐怖の顔をしていた。
こんなの今意識をなくしている友人に見せられるはずもなく、さらにもう一枚。それは…。僕らの姿だった。どうやったら写るのかはわからないのだが、確かに写っている。しかも写真の真ん中が太く赤い線で真っ二つになっているような写真である。不気味としか言いようがない。しかも写真の中には生首がたくさん…。それぞれの顔は恐怖と怒りで固まったままである。
なぜこんな写真が撮れたのか…。あの時は確か友人はかまくらの入り口を写していたはず。
だから僕らが写るのはあり得ないのだ。
でもここには写っている写真が一枚ある。
思わず手からこぼれ落ちたが慌てて拾い上げ、埃を払った。
「なぁ、なんでこんな写真撮ったんだよ。ヤバイって。マジで。」
「そんなこと言ったって僕らもこんな写真撮るなんて思いもしなかったし…。お祓いとかしてもらったほうがいいのかなぁ〜。」
「そ、そのほうがいいって。もちろんお前らも全員行くんだぞ?」
「な、なんで俺らが行かなきゃいけない?」
「アホか?誰に取り憑いてるのかわからないんだぞ?もし間違ってとりつかれてたらどうする?守ってもらわないと。」
「あ、ああ、そうだな。そのほうがいいな。」
「お守りも買っとこうぜ!」
「うん、そうだね。そのほうがいいね。」
皆除霊してもらう事で話がつき、早速してもらうことに。とは言っても、今から行くにしても時間がかかる。他にも除霊の参加者がいるようで、順番と言われたらなんともしょうがない。一刻も早く神社に向かい、黙って待つことにした。
待ち時間は15分程度だった。
でもその時間も長く感じた。
待っている間色々なことを考えていた。
考えている時頭に浮かんだのは血でベッタリだった友人の顔だ。死んだ時の顔は知らない…。だからビックリしたのだ。
今病室にいる友人の分もお守りを買うつもりだった。
だって怖いじゃん。
順番が来て皆でお祓いの場所へと向かう。
他にも何人かいた。
全部で8組だ。だから結構な人数になる。
お祓いをしてもらい、お守りも買った。
コレで安心と思った一行は早速病院に戻り友人の元へ向かった。
今はお昼を回ったくらい。
だからか賑やかである。
ついた頃には流石に友人も目を覚ましていた。僕らを待っていたようだ。
「な、なぁ、お前ら見たか?カメラで撮ったはずなんだけど、ないんだよね〜カメラが。」
「あっ、ああ、撮ってたよ。ここにある。けど心配だなぁ〜。」
「何が?」
「いやそれがちょっとヤバイやつ撮ってたみたいだからビックリしないかってさ。」
「またまたまた〜。そんなこと言って…どうせ大した写真じゃなかったんだろ?見せてみろよ。」
「おいちょっと待て。その前にこれだけ持ってろよ。」
「何だよ…。御守り?何でこんなの持ってなきゃいけないんだ?おかしいよ。ちょっと待てよ?もしかして本当におかしなものが映ってた…とか?」
「そう、そのまさかだ。」
「マジか?マジかよ…。見せろよ。」
友人はそういうなら仲間から写真をひったくり、見ると同時に顔が真っ青になっていく。」
「な、なんじゃこりゃ?」
僕らと反応は似たようなものだった。それはそうだ。驚かない方がかえって怖い。
真っ青になりながらも写真は離さなかった。
「で?どうするのさ。このままって訳にはいかないだろ?」
「アイツか?でたの…。でもなんで?」
「僕らが冗談半分で言ったことに反応したのかも。ほら…かまくらの中で言ったじゃないか。誰か知り合いでも来ないかなぁって。だからだよきっと。」
「マジあり得ない。おい!出てくるなよ!俺らまじで言ってるかな!」
誰に向かって言っているのかはその場にいるものたちには分かっていたが、誰もそれ以上に何も言わなかった。
突然辺りが暗くなった。部屋の中だから明かりはついていたのにだ。電源を触るが明かりがつかない。
ゾゾっとした。
皆固まった。
「ギャーー!で、出るなーーー!マジで出るなよ。聞いてるか?マジで怒るからな。」
仲間の一人が怒りながらも震えていた。
友人も固まってる。
僕も怖い。
そしたらさ、窓際に人影が…。
「ギャー!」
悲鳴が部屋に響いた。
看護師が来ないかなんて頭になかった。それほどの恐怖だ。だが、予想に反して誰一人としてここには来なかった。それもなんだが怖い。
部屋の隅に人影が…。
よく見ると亡くなったはずの友人だった。
皆悲鳴をあげるやら、腰を抜かすやらでパニック状態に陥っていた。
仲間の一人の元に霊となった友人が近づいていく…。
「わぁ〜!頼むから消えてくれ!!」
両手で拝む姿を取り、震えている。
そのそばまで近づいてきたが、一定以上は近づかずスーッと消えて行った。
何がしたかったのだろうと友人達と話し始めた時、目の前に突然死んだ友人が現れた。
ニタリと不気味に笑いながら消えていった…。
その顔が今も忘れられない。
御守りが熱く感じて見てみるとお札が破れていた。
真っ青になった僕は「御守り、御守り…。」とブツブツと言いながらその場に倒れたらしい。
その後、亡くなった友人は現れる事はなかった。
何しに来たのか…一言言いたかったのか。
それは誰にもわからない。