問題篇
「刑事さん、俺にはアリバイがあるんです。奴が殺された時刻、俺はあっちのリビングで仲間と麻雀をしていた。いい加減にしてくださいよ」
「一応形式的に、関係者のみなさんに話を伺っているところでして」
タジタジになっている三宅巡査の後ろで、私は男性の遺体を見下ろした。背後から拳銃で胸を撃たれているが、急所を外し即死には至らなかったようだ。残り僅かな力を振り絞って、被害者は自らの血で床にメッセージを書き残していた。
「69、左矢印、21……犯人の名前でも示しているのか」
「ちょっと、探偵さん」
指先で腕を突かれて振り返ると、疲弊しきった顔の若巡査が助けを求めるような視線をこちらに向けている。
「探偵さんも何とか言ってやってくださいよ。容疑者たちは元マル暴で、こちらの要求になかなか素直に答えてくれないんです。今事情聴取している戸次という男、胸のところに惑星の刺青入れていたし顔中ピアスだらけだし、もういかにもって感じで」
「篠田警部に見られたら、情けないって一蹴されちゃいますよ」
「そんなあ」
迷子になった子犬のように縋られ、私はやんわりと三宅巡査を押しのける。
「しかし、その戸次という男が任同を掛けられるのも恐らく時間の問題でしょうね」
「え、なぜですか」
Q:「私」が戸次を怪しんでいる理由とは?




