問題篇
「料理を一品ずつしか注文できない料理店。なぜそんな形式を取っているのか」
レストランではなく、行きつけのバーのカウンター席でロバート陣内は唐突に話題を振ってきた。
「何だそれは。お前特製の謎かけか」
「実在する料理店だと言っても、どうせ信じてくれやしないだろう」
私は無言で肩を竦めてみせる。陣内の嘘つきは日常茶飯事なのだ。
「注文の少ない料理店か。たとえば、その店は店主1人だけで運営しているから、一品ずつでないとスピードが追い付かないとか」
「ノンノン。店主以外にも複数名のスタッフがいるよ」
「出来立てを提供したいから、一品ずつの注文にしている」
「まとめて注文を受けた後で、完成したものから客に出していけばいいだろう」
「店主やスタッフは全員記憶障害を患っていて、一品ずつしか注文内容を覚えられない」
陣内は、宇宙人を見るような目で私を凝視する。「注文を取る際にメモしておけばいいだけだ。お前にしては斬新な発想だな」
「どうもありがとう。褒めたついでにヒントのひとつでも出してくれよ」
「実際に店へ行けば、すぐに答えが判明するってのがヒントだな。店内のあるものを見れば一目瞭然だ」
「あるもの……?」
私はカウンターテーブルに視線を落とし、しばし考え込む。納得の解答にたどり着いたのは、それから数分後のことだった。
Q:陣内の謎かけの答えとは?




