問題篇
「探偵よ、今日の俺はひどくブルーなんだ。励ましておくれ」
黒のロングコートを気障に着こなしたロバート陣内は、バーのカウンターで肩を落としている。
「お前がそんなに凹むのは珍しいな」
「女に振られたのさ。飛び切り美しい女に。一体俺のどこに落ち度があったんだ」
「誰彼かまわず愛想を振りまきすぎなんだよ。二股疑惑でもかけられたんじゃないのか」
「まさか。たしかに彼女、笙鈴とデートしていたとき他の女に言い寄られたことはあったが」
「恋人は中国人だったのか」
「そうさ。文通をきっかけに知り合ってな。リンが日本に来てからも手紙で互いの近況報告をしていた」
「今時古風だな」
「ロマンチックと言ってくれ。ほら、これが俺と彼女の愛の証だ」懐から手紙の束を取り出す陣内。色褪せた茶封筒に記された「笙鈴」の筆跡は、細く流麗でいかにも女性らしい。
「どの封筒も切手を2枚貼っている。彼女は82円切手の存在を知らなかったのか」
「持ち合わせていた切手に偶々82円がなかったんだろう」陣内はどうでもよさそうに片手を振る。2枚の切手を数センチ離して貼付するという貼り方を見た私は、彼に愛の証を返しながらアドバイスを送った。
「お前はもう少し、中国人女性の恋心というものを学ぶべきだったな」
Q:文通に使われた封筒を見て、「私」は何に気付いたのでしょう?




