問題篇
仕事を終えて事務所へ帰る途中、書店で『カップラーメンを作る間に読めるミステリ』と題された文庫本を購入した。事務所に戻り、事務作業を済ませるとソファに寝転がってページをめくる。
「マグレ警部、大変です!」
「何だね、騒々しい」
「容疑者であるサイトウのアリバイを調べたのですが、何と彼には二重のアリバイがあったのです」
「どういうことだ」
「証言してくれたタナカとササキによると、タナカは昨日の午後1時にサイトウと仕事の打ち合わせをしていました。一方ササキは、同じく昨日の午後1時にサイトウとカフェテリアでランチをしていたというのです」
「同じ日の同じ時刻に容疑者が異なる2つの場所に存在していたということか」
「そういうことです。こんなアリバイってあり得ますか」
「ふうむ」
「こんなことができるなんて、サイトウは魔法使いか何かですかね」
「馬鹿者、そんなことがあってたまるか。何かあるはずだ、サイトウが我々を欺くために仕掛けた罠が……」
本から腕時計に視線を移すと、まだ秒針は一周りもしていなかった。
「これなら、カップラーメンができあがる前に事件を3つくらい解決できそうだな」
Q:「私」が見破ったアリバイトリックとは?




