問題篇
「家に帰り着いて、玄関の鍵が開いているのを不審に感じました。でも、どうせ親父がまた掛け忘れたのだろうと……それでリビングに入ったら……親父があんなことに」
肩を激しく震わせ、嗚咽する男性。警察が駆けつけたとき、当麻寛太郎は後頭部から血を流しリビングの床にうつ伏せに倒れていた。遺体には複数回殴打された痕があったが、リビングはおろか当麻家のどこからも凶器が発見されなかったのだ。
「犯人が持ち去ったのだろう。すでに処分されていると思うが」
篠田警部は苦々しげに呟く。一方三宅巡査はテーブルを覗き込むと、
「被害者の最後の晩餐は冷凍食品のラーメンだったのですね」
「おい、仕事に集中せんか」
「だって警部、まだ湯気も出ていて美味しそうですよ。こんな状況じゃなければ俺が代わりに食べたかった」
三宅巡査の言葉が気になって、私はテーブルに視線を向ける。どんぶりを持ち上げてみると、底の部分に被害者のものらしき血痕が微かに付着していた。冷蔵庫横のゴミ箱を確認すると、ラーメンのパッケージと透明の包みが捨てられている。冷凍庫から取り出してしばらく放置していたのか、袋には結露のようなものが見られた。
「篠田警部。犯人は凶器を持ち去ってなどいませんよ。処分する暇がないと踏んで、予め現場にあっても不自然じゃないものを凶器に選んだのです」
Q:「私」が推理した凶器とは何か。




