問題篇
大富豪の堂上玄禄が病に倒れ世を去った1ヶ月後。怪人八百面相の犯行予告が警察に届いた。
怪人八百面相。警察の捜査網を幾度も潜り抜けてきた稀代の大怪盗。警察のアドバイザーとして動く中で、いつしか私の宿敵に位置づけられた犯罪者だ。
「それが、奴は予告状の中でどの品を盗むのか明らかにしていないのです。ターゲットが不明では手の打ちようがない」
苦りきった顔の古舘警部とともに、堂上氏の屋敷を訪れる。氏はあらゆる分野における熱心な収集家で、屋敷にはコレクションルームがいくつも併設されていた。ただ今回八百面相が盗みを予告しているのは、地下にある狭くかび臭い書庫である。室内には古い書物が堆く積み上げられ今にも崩れ落ちそうだ。埃被ったデスクの上には色褪せた手紙や写真が山積みになっている。値打ちのあるものが隠されているとはとても思えないが……。
本棚を調べていると、背後で古舘警部が声を上げた。警部はデスクの上から黄ばんだ封筒を摘み上げ、
「これ、パラオの消印ですよ。13、2、12……この13は昭和13年ですかね。いや、パラオは海外だから元号なんて使わないか。それにしても細かいデザインの切手ですね。あれ、この切手は漢字が使われているな」
「警部、それです! 八百面相が狙っているのはその手紙ですよ」
唖然とする警部の手元を指差し、私は叫んだ。
Q:八百面相はなぜ手紙を狙っているのでしょう?




