問題篇
ギギギ――と耳障りな音を立てる扉を完全に閉じてから、俺は白い息を吐き出した。重厚な造りの扉に背を向け、足早にその場を立ち去る。
俺はたった今、伯父の斎藤義一を殺害し、自殺に見せかけた偽装工作を終えてきたところだ。入念な計画のもと、「自身が所有する屋敷で拳銃自殺を図った」というシナリオを作り上げた。鉄壁のアリバイも用意している。そう、これこそ完全犯罪というやつだ。
さらに、持ち前の強運がここぞとばかりに発揮され、俺が屋敷を離れた途端に雪が降り始めた。屋敷から遠ざかる俺の足跡は、雪が完全に隠滅してくれるだろう。万事順調だ。
屋敷から600メートルほど離れた山林に車を停めていた。車内に乗り込んですぐ、暖房のスイッチを入れる。最後の仕上げに、「クリスマスプレゼントに伯父の好きなワインを持参して屋敷を訪れた」という演技をしなくてはならない。そして、屋敷の中で伯父の変わり果てた姿を発見するという流れだ。
そう、すべて上手くいくはずだったのだ。なのに、警察集団とともに登場した一見刑事らしくない男は、やたらしつこく俺のアリバイや伯父との関係を訊き出した挙句、「斎藤義一さんを自殺に見せかけ殺害したのは、あなたではないのですか」と出し抜けに言い出した。この一言によって、完璧だったはずの俺の計画はもろくも崩れ去っていくのだった。
Q:「俺」の偽装工作はなぜ見破られたのでしょう?




