問題篇
警察への捜査協力ですっかり顔なじみになった三宅巡査が、私の事務所を訪れた。
「知り合いの女性のアルバムなのですがね、大正時代の祖先の写真が残っていたというんですよ。珍しいんで借りてきちゃいました」
来客用のソファに腰かけて、巡査は埃臭いアルバムを開く。黄ばんだ紙のページには、夫婦と思われる一組の男女と、まだ幼い女児を写した写真が幾枚も貼られていた。もちろんすべてモノクロだ。奇妙なことに、写っている男性と女児はなぜかほとんどカメラから視線が外れている。
「夫も子どもも、まだ写真慣れしていなかったのだろうと知人は言っていました。当時はカメラ自体がまだ珍しかったでしょうから」
すべての写真の横には、几帳面にも撮影日が記入されている。三宅巡査と雑談を交わしながら、私は1枚の写真に目が吸い寄せられた。銅像の前で3人並んで撮影されたものだ。写真の横には、「大正15年12月31日」と走り書きされている。
その写真を見た瞬間、私はアルバムを閉じて三宅巡査に言った。
「この家族アルバムは、もしかすると偽造されたものかもしれませんよ」
Q:なぜ「私」は、アルバムの写真が偽造だと分かったのでしょう?