問題篇
「俺の最期は、グランドピアノの下敷きになって死ぬのがお似合いだ」
篠田警部の唐突な一言に、私は「え?」と首を回す。
「被害者の口癖だったそうです。ピアニストらしい死に方をしたいのだと」
机に突っ伏して絶命している被害者に、半ば哀れみの視線を向ける篠田警部。能条英生は女性を中心に人気を誇るピアニストだったが、彫刻のような美しい顔も、刺殺された今は苦悶に歪んでいる。
「そして、問題は被害者の私物であるこれですね」
私は机上で開きっぱなしになっているノートパソコンを指す。電源は切られているが、キーボードの一部に被害者のものらしい血痕が付着していた。
「ひらがなのそ、ひ、こ、ね、る、に血が付いていますね」
「ちなみに、被害者の右の小指以外の4本にも血痕が残っていました。推理小説でおなじみのダイイングメッセージってやつですか」警部の声は半信半疑である。
「この暗号めいたメッセージと結びつきそうな容疑者はいるのですか」
「現在まで絞り込めた容疑者は、同じホール内で練習していたフルート奏者の真野星子、チェリストの大庭寛治、ソプラノ歌手の白戸麗美の3人です」
「なるほど……このキーボードの血痕はたしかに、被害者が最期の力を振り絞って残した犯人を示す証拠ですね」
Q:被害者が残したダイイングメッセージから犯人を特定してください。




