問題篇
美人エッセイストとして注目を集める美波ちひろが、ホームパーティーの最中に突然倒れて救急搬送された。知人の伝手で偶々パーティーに出席していた私は、それとなく参加者の会話に紛れて情報収集を試みる。
「ちひろは、参加者から渡された花束を持って庭を散歩していたの。彼女を担当している編集者が、今度の雑誌に写真を載せたいって言い出したから、撮影場所を探しに行ったのよ」
ちひろの友人を称する女性の証言だ。担当編集者は、たしか尾崎という男性だったはず。
「僕は、美波先生が庭を散策しているのを室内から眺めていました。適当な場所を見つけたら呼ばれるだろうと。そしたら、遊歩道のところで急に姿が見えなくなって。慌てて庭へ飛び出すと、先生が道端に倒れていたんです」
「そのときの彼女はどんな様子でしたか」
「呼吸困難といいますか、息苦しそうにしていました。それから、首のあたりに蕁麻疹のようなものが出ていて」
私は、美波ちひろの外見を思い出す。墨を流したような美しい黒髪の持ち主で、黒いサマーニットを着ていたはずだ。
「失礼ですが、美波さんが参加者から渡された花束というのは」
尾崎が抱えてきたのは、白と紫の小さな花が寄り集まった可憐な花束。ミントのような清涼感のある匂いが鼻腔をくすぐる。
「ああ、なるほど……事故か事件かはともかく、彼女を襲ったものの正体は検討がつきました」
Q:美波ちひろを襲ったものとは?




