問題篇
大学生時代の同朋と5人で、湖畔のコテージに宿泊していた花菱警部補。だが、そこで殺人現場に遭遇してしまう。宿泊者のひとり、剣持勝が自室で何者かに刺殺されたのだ。しかも、部屋の床に奇妙な血文字を書き残して。
警察が到着するまでの間、花菱警部補は現場保存と友人3人への事情聴取を開始する。
「私たちの中に犯人がいるってこと?」
怯えた表情の山口紅葉に、女刑事は「可能性は否定できない」と慎重に答える。
「勝は絵に書いたような善人だぜ。殺される理由なんてあるものか」
木更津慎也は、被害者と竹馬の友の仲だったこともあり紅葉以上にショックを受けている様子だ。そんな2人をじっと観察していたのは、インド料理店を営みコテージでもシェフの腕前を発揮していた御堂丈。御堂は花菱警部補を廊下に呼び出すと、声を潜めて耳打ちする。
「俺さ、木更津か山口が怪しいと思うんだ」
「なぜ?」
インド人並みに彫りが深い顔をした友人はさらに声のトーンを落とす。
「部屋の床に残っていた血文字、あれ、平仮名の“き”だろう。木更津か山口を指しているんじゃないかな。木更津の頭文字どんぴしゃだし、山口の下の名前は紅葉で“椛”とも書き換えられる。椛の部首は木だ」
「なるほど……でも、私は貴方たち3人に等しく殺人容疑をかけているわよ」
女刑事の鋭い視線を受け、男は驚愕した。
Q:なぜ御堂も疑われているのでしょう?




