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老人の依頼

今までの修正をしていて、遅遅です。よろしくお願いします。

 サトシは、部屋を出てから冒険者組合へと足を運ぶ。もちろん、今回のクエストの報告をするためだ。

「最近……、本当に人の感情が手に取るようにわかる」

 サトシの悩みがついつい口を開かせた。

 彼には、今、3つのスキルがある。その3つのスキルの中には、“感情受信体質”と言うものがあった。

 “感情受信体質”とは、自分に向け向けられる感情を触覚によって知ることができるスキルで、好意ほどに心地よく、悪意ほどに不快となる。さらに、殺意などの場合には、痛覚が働いているのか痛いと感じる。

 そのスキルは、とても不便で常に自分に向けられる感情にさらされることになる常時発動型パッシブスキル。それは自分では制御できないところが悩みの種でもあった。

 しかし、今、サトシの感情受信体質は、大きく変化をしていた。



 サトシは、冒険者組合の如何にもな観音開きの扉を押して入ってゆく。

「クエストの達成報告はどうしたらいいですか?」

 扉の近くでぼうっと爪を見ていた案内嬢に聞いた。すると、ハッと驚いた嬢は、慌てていう。

「い、いらっしゃいませ。冒険者様。この度は、クエスト達成おめでとうございます!! 奥の方で完了の手続きができます。お好きなところに並んで指示に従ってくださいっ」

「わかりました」


 今日、冒険者は少なそうだが、組合自体は慌しかった。なので、開いているカウンターも少ない。

 サトシは案内されるまま、カウンターで受付嬢と対面する。

「よろしくお願いします。本日担当は、サラです」

「はい、昨日ぶりです。今日は、昨日にも増して忙しそうですね。だからか、顔色が悪いですけど、大丈夫ですか?」

 その時、事務的に書類に目を通していたサラだったが、目の前の冒険者がそのように言う。少しだけ、興味が湧き、目を通していた書類から外して、サトシの方をまっすぐと見た。

 サラは、そばかすが少し目立ち、赤髪と丸メガネが印象的な田舎娘という印象の女性だった。しっかりとメイクで隠してはいるが、目の下にはクマができており、疲労が溜まっていることは見てとれた。

「えへへ。大丈夫です。お気遣いありがとうございます。——それに覚えていてくれたんですね。受付嬢って事務処理だけの女だと思われているのか。あまり覚えられないので、とっても嬉しいです! 評価アップですね!!」

「え? 評価アップ? 何もして無いですよ?」

「いいえ。あなたはとても賢明です。扉の近くにいるガブに鼻の下を伸ばさないこととか、私たちに親切に接することとか……。彼女たちは、そうゆう役回りなんです。だから、ちやほやされるんですが、実は、親切をするのは、私たちの方がいいんですよ? うふふ、他の冒険者は、わかっていないんです。案内嬢にじゃなくて、私たちみたいな地味な女に対応されるのが嫌なんですよ。態度が悪くなったり、もちろん顔なんて覚えたりしません。だから、大っ嫌い」

 サラは、冒険者に見えないように舌を出した。

「あはは、それはひどいですね」

「本当にそう! そうなんです。だからあなたみたいな男の方は、久々です! もう顔を覚えちゃいました。これからは、私を選んできてくださいね。有力な情報を教えちゃいます!! 一緒に素晴らしい冒険者になり上がりましょう!!」

 先ほどの事務的なやりとりではなく、感情を持った話し方だった。

「ありがとうございます。それで依頼の報告なんですが……」

「はい。今回は……。まあ!! 初依頼なんですね。おめでとうございます。初依頼は、とっても報酬が奮発されるんです。普通は、そのお金で、武器とかを揃えたりするんですが、サトシさんはすでに立派なのをお持ちのようですね」

 サトシの腰回りに目を落とした。

「はい! 大切な人にプレゼントしてもらいました。世界で一番お気に入りです」

「うふふ。素敵ですね。——ちょっと待ってくださいね。達成報告と報酬をお持ちします」

 サラがそう言って奥の方に消えていった。


 サトシは、サキからプレゼントされた“刃折れの名刀”を見ていると、鬼気迫る声とともに机を勢いよく叩く音が雑多な音でうるさいフロアに響いた。


「どうしてじゃ!! どうして冒険者を雇うことができないんじゃ! ワシは帰らなくてはならないんじゃ! こんなところでのうのうとしとる暇はないんじゃ!」

「そうは言われましても、おじいちゃん。お金が足りないんです。普通の依頼で冒険者を雇おうと思うと、最低今の倍は必要になります。それにその場所は、特に危険なんです。こんな報酬額じゃ、冒険者に取り次ぐことはできません」

「それでも……、それでもワシは帰らなくてはならないんじゃ……」

「残念ですけど、諦めてください。今、依頼は超過気味です。組合は、わざわざ無駄な依頼を発注するわけにはいきません。もうすぐ、使途の侵攻の季節なんですから、わかってください」


 老人は、落胆の色を隠せない。その顔に刻まれたシワがさらに深くなった。

 頭の毛は、すべて白くなっている。露出している部分には、シワが刻まれ、腰こそ曲がっていないが、杖をつきながら、危なっかしく歩く老人がいる。

 その老人は、そこかしこにいる冒険者を捕まえては、先ほど突き返された“少ない報酬”を差し出して、懇願する。

「お願いじゃ! これでどうかワシをカメリアに連れていってくれ!」

「カ、カメリアだと? じいさん、そこに好んで行く冒険者は、()()にはいねえよ! ガハハッハハ」

「わかっとる。カメリアが危険な場所だってくらい。でも……」

「いや、わかっていないね。カメリアは、境界付近。いつ、魔物が土地を奪い返そうとしても、おかしくない場所だ。誰も近づかねえ。諦めな」

 同じような内容を冒険者は言い、老人の依頼を断っていく。“カメリア”と聞いて誰もが嫌な顔をした。

 そして、老人は、ついにサトシに話しかけた。


「若いの! ワシをカメリアまで連れていってくれんか? ……、いや、わかっとる……無理なことを頼んでいることくらい……」

「いいですよ」

「ワシも無理な願いをしとるのは、わかっとるんじゃ。でも、理由を聞いてやってはくれんか……」

「いや、だから、いいですよ?」

「……ほげえ? え、ええんか! 本当か? 男に二言はないぞ?」

「はい、もちろんです。二言はないです」

 老人は、サトシの手を取り、ガッチリと握手をした。

「ありがとう。ありがとう——」


 その契約が締結された時、サラが戻ってきた。

「サトシさん、お待たせしました。これは、報酬になります。——あれ? どうされたんですか? この状況?」

「次の依頼が決まりました。カメリアまでこのおじいさんを連れていってきます。報酬ありがとうございます。また、お願いしますね、サラ」

そうサトシが伝えて、受付カウンターに置かれた皮袋を手に取った。

 その時、サラは大きな声をあげた。その声にサトシはサラを見た。

「え、えええええええ。ちょ、ちょっと待ってください。カメリアって言いましたか?」

「はい、カメリアです」

「そこは、国が指定する境界付近です。つまり、魔物が多く目撃される場所になります。危ないですよ。やめた方がいいです。それにサトシさんは、まだ冒険者になってから日が浅いですし……」

「大丈夫ですよ。それにおじいさんは、一人でもカメリアに行くつもりですよ? そんな人を放っておくことなんてできないです」

「放っておくべきです!! 言わせてもらいます。自分の命くらいしっかり管理できてこそ冒険者ですよ? 自殺志願者的な人を無理に助けようとして自分が死んだら、意味ないんです!! 親切な蛮勇はいらないんです!!」


 そう声を荒げた時、サラの肩が叩かれた。

「大丈夫じゃない? その冒険者は、契約者でしょ? 魔物相手なら、対抗できるはずよ」

 サラが後ろを向いて声を輝かせた。

「マーニィ様!! いらしていたんですね。でも、サトシさんは前回が初依頼なんです。危険の方が大きいかと思います」

「それはあなたが決めることじゃないわ。私が決めることよ。信じなさい。あなたが思っているよりも、その冒険者は歯ごたえがあるのよ」

 マーニィはそういうが、サラは納得が言っていないように俯いた。

「はい、わかりました」

 サラはマーニィからサトシの方に向き直り言う。

「王都の組合長のマーニィ様がこうおっしゃっておりますので、頑張って行ってきてください。でも、くれぐれも無理はしないでください」

「はい。ありがとう」


 サラに返答をしてサトシと老人は、組合から出ていった。

 そこでサラは、マーニィに聞いてみた。

「マーニィ様、どうしてカメリアまでの同行を許可されたんですか? 初依頼をこなした冒険者は、重要な存在のはずでは?」

「ええ。でも、それだけでは、ダメなのよ。冒険者は、強く、気高くなくちゃ。あの冒険者がおじいさんの頼みを聞いたんですもの。私たちが無理にとめるなんて無粋よ」

「そう言うものですか……。すみません。私の独断で、間違ったことを言ってしまいました」

「いいのよ。これからは気をつけてね」

「はい……」



 マーニィは立ち去った。

「ザッジの言うあの少年がどれほどのものかわかるわね。実際、私信じてないのよね。——カメリア……。G戦場のカメリア。真の強さがわかるところだわ」

また、後日投稿します。


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