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変身(パワービューティー)

 よろしくお願いします。

「んん? ナンダイ? どうゆうことだい? 姿が変わっていない!?」

 フウは、何度も自身の姿を確認するように見たが、何度見ようとも先ほどと変わりはない。

 見かねたカリーナは、フウの疑問に答えるように言う。

「何をしようとしたのかは、わからないが……、魔力を使う全てのことは、この場ではできない。雨が体温を下げ、次第に自由を奪うことと同じように私たちが降らせた雨は、お前から魔力を洗い流す」

 カリーナが言った。

 カリーナが言うには、魔力とはガソリンのようなものだ。魔法を使うためのエネルギーの原則でもあるし、スキルや身体能力の上昇にも一役かっている。

 その魔力を奪われるということは、この世界において、どうしようもなく不利に立ち回らなくてはならないことになる。純粋な肉体能力だけで、魔力の恩恵を受ける者に勝てるはずがないことを誰でも知っている。


「はは、ははは」

 フウは、それを聞いてそら笑った。

 ここでカリーナは、魔力がエネルギーの原則であると言った。そう。たかが原則なのだ。原則があれば、当然のように例外が存在する。もちろん、例外は、どの世界でも推奨されているような類のものではない。それは予期せぬ暴走を生んでしまったり、原則よりも力が弱くなってしまったり、国の考え方の違いなんていうものもあったりする。

 しかし、フウが今考え、行おうとするものは、そのどれにも当てはまらない。魔力を使うよりも扱いやすく、強く発動できる。だが、誰もそれを実行しない。

「そういうことでも、やる事は変わらない。アタイは、あんたと全力で戦うために、今やれる最高のことをする!!!」

 フウが再び体全体で力んだ。

 そうすることで、フウから晴れの日に見る雪のような胞子が現れては——消える。

 誰の目から見ても、力が発動したことは明らかだった。


 アルシアはその美しさに息を飲み、驚いた。

「カリーナさん。どうゆうこと? 魔力は使えないんじゃないの?」

「ああ、魔力は使えない」

「じゃあ、あの変化は何なの? あの全身に纏う輝きなんて魔法以外あり得ないでしょ」

「そうだな。魔法だ。だが魔力ではない。——生命力だ。命を削って、奇跡を起こそうとしているのだ」

 その間もフウの輝きは消えない。いや、更に輝きが増す。魔力とは違い、深く優しい眩しさを持って尊く輝きを放った。

 その時、サトシの目がフウの命の輝きに反射して光が灯った。

「おっ……おい!」

 カリーナが走り出すサトシに言った。


 サトシは、走り出した末にフウに抱きついた。

「魔力が使えなかったら、諦めると思ったけど、使えないからって命を削るなんて、そんなことをしちゃダメだ。これ以上戦っても無駄なんです」

 抱きついてくるサトシなんて意を介さず、力を発動しようと命を削り続ける。

「ふん。バカを言うな。闘ってもいないで、そのものの強さがわかるはずがない。アタイは、強いものを求めているんだ。アタイを超える人を求めているんだ」

「力の強さだけがその人の持っている強さとは、限らないと思う」

「お前の言葉は嘘ばかりだ。では、聞くがお前は、なぜ精霊と契約している。力を欲したのではないのか? そのお前が強さは、力でないとなぜ言える?」


 ゆっくりとフウから離れるサトシ。その間もフウから輝きが消えることはない。

 アルシアは、二人の会話に入れずに大きな耳をそばだてて聞いた。


「確かに……、僕は——」

 下を向くサトシの言葉を遮り、カリーナが声をあげた。

「違うっ!!————確かに、きさまには、そう見えるのかもしれない。精霊と契約するものの大半は、力を欲するもの。精霊と契約するメリットは、多くの力を得られることだから」

「そう。そして、アンタの契約者もそうでしょ? 力を求めてアンタと契約した。愚か者の一人だ」

「否定はしない。でも、勘違いしないでほしい。こやつも、私と契約するときの理由の一つに力を求めただけ。大きな理由は、それではない。——こやつは、人間であるくせに、私のことを哀れんだのだ。あの場所に閉じ込められ、封じられた私のことを哀れみ、助けてやりたいと願った。その結果、サトシは私と契約することを承諾した。出会って、すぐの私と」

「にわかには信じられない話だね。精霊を全面的に信じたって? その精霊がどんな存在かも知らないのに?」

「ああ」

 カリーナは、どこか寂しげな声を漏らした。


「ああ、きさまがいうようにこやつは愚か者なんだ。騙そうとした私のことを可哀想だと思った愚か者なんだ。だから、こやつのことが可愛くて仕方がなくて、どうしても肩入れしてしまう。契約関係なく100パーセントの力を貸し出してしまうのだ」

「……アンタ、変わった精霊だね。すごく人間臭い。————その話を聞けば、確かにこの男には、それを言う資格はあるんだろうね。自らを顧みず、他人のことを顧みるその男なら。でも、そんなんじゃないんだ。アタイは、そんな答えを求めているわけじゃないんだ。本気で戦いたい。本気でぶつかり合いたい。そうしなくちゃわからないことがある!! その判断の物差しこそが全てなんだ。そのためなら、どんなことだってする!!」

 フウは、命を削ってエネルギーを生み出し続け、限界点を越えようとした時、ふと気づけば雨が止んでいた。

 フウはいぶかしんだ。だから、いつまでも下を向いているサトシに問い質す。

「どう言うことだい? なぜ、雨を止めた」

「カリーナの言うとおり、僕は愚か者なんです。フウが本気でぶつかりたいと言うのなら、それに応えるのが、バカだと思いませんか?」

「あはは! そうこなくっちゃ!! だったら、命を使う必要はないね。そのバカさは、嫌いじゃない」


 フウは命を削ることをやめ、魔力によって力を蓄えた。明らかに隙だらけだったが、サトシはフウが力を蓄えるまで待ってやった。

「さあ、やろう」

 火山が噴火したのではないかと思わせる圧力を感じて、フウはまた別の姿になっていた。

 その姿を見て、カリーナはサトシに言った。

「また、これは……。竜人か。お前さんのところに集まってくるものは、変わったものが多いな」

「それって私のことを言ってますか?」 

 アルシアが少し強めの口調でカリーナを責め立てた。

「いや、私のことなんだが……」

 とカリーナに言われたことでアルシアはバツが悪そうに口を噤んだ。



「赤の国の住人でしたか」

 ザッジが言い、そうして、付け加える。

「聞いたことがあります。赤の国の住人は、望めばドラゴンの血を体内に入れることができて、その状態で純血ドラゴンのものを取り込むと、ドラゴニュートの姿になるとか」

「そうそう。アタイにはドラゴンの血が入っている。そうして、さっき飲み込んだ大太刀は、ドラゴンの鱗で作られた名刀。それがトリガーとなってアタイはドラゴンメイドになるってわけさ!」

 フウは、背中に二対の翼、腕と脚にはヒレがあり、所々に鎧のように爬虫類の鱗でがっちりと覆われていた。そして、何よりも爪が鋭く、正しく戦闘を好むフウの性格に適合していた。

 しかし、フウという人間が多少なりとも野性味を含んだが、美しさを忘れてはいない。パワービューティーといった変形だろうか。肉食系女子になっていた。

「ドラゴンメイドってつまり獣人ですよね? そんなに簡単に姿を現してもいいんですか?」

 フウの姿を見て、サトシが首を傾げた。

「ああ、そこのお嬢ちゃんとは、規格が違うのさ! この姿は、魔法現象!! 特異体質じゃない。極端な話、アタイの血をアンタに流し込めば、アンタだってドラゴニュートになれる!! だから、誰も狙いはしない。まあ、本物のドラゴンなら話は、別だろうけどね」


 フウが言う通り、竜人は魔法現象。精霊と契約するようなものだった。つまるところ、それは気まぐれ、呪い、災い、病、祝福、加護、恩恵などと言い換えていい。古のドラゴンの血が半竜半人の姿をとらせている。

「さあ、お話は終わりだよ! アタイも見せたんだ! アンタの力を見せておくれよ!」


 フウは、鋭く尖った爪をたてた。

では、また後日。

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