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呼び出された意味

5       呼び出された意味



「すみませんでした!!」


近くのカフェに入って向かい合うような形で席に座った瞬間、葉月ちゃんが深々と頭を下げて謝罪をしてきた。幸い店内にはお客さんがまだ少ないので、変な目で見られる数も少ない。


「えっと、どうして?」


何でいきなり謝ってきたのかの理由も分からない俺は、とりあえず深々と頭を下げる葉月ちゃんに質問する。質問を受けた葉月ちゃんは深々と下げていた頭をゆっくりと上げ、目にうっすらと涙を浮かべながらこちらを向いた。


「………実は嘘なんです。ゲームのオフ会があること。ただ、私がリュウさんに会いたかったから嘘をついたんです」


――――止めて、そんな俺の心を擽るような目で見つめないで。

 相変わらず涙目の葉月ちゃん。さっきまではこちらに向けてくる視線に対して何の関心も無かったが、何となくさっきよりも強い視線を感じる気がする。ついにはお客さんだけでなく店員さんまでもが目をつけてしまったのだ。


「いや別に怒るつもりもないし、怒ってないから大丈夫だよ?」


「そうですか……本当に申し訳ありませんリュウさん」


「取り合えず【リュウ】さんって呼び方を変えてくれると助かるかな。確かにハンドルネームはそうだけど、こうやって目の前で名前を呼ばれると恥ずかしくて死んじゃう」


軽く冗談を混ぜながら言ったつもりだったけど、葉月ちゃんはとても真面目で「何て呼べばいいんですか?」と言ってきた。正直、ハンドルネームじゃなかったら何でもいい気はするが、よく考えたら葉月ちゃんは自己紹介したけど俺は自己紹介も何もしていないことに気がついた。


「言うのが遅くなったけど、俺の名前は清水 凌。別に好きに呼んでくれて構わないけど、ハンドルネームだけは止めてくださいほんとお願いします」


自分の自己紹介を終えた俺は自分のプライドをどこかに捨てるようにして葉月ちゃん(幼女)に頭を下げる。その行動が面白かっのか、さっきまで目に涙を浮かべていた葉月ちゃんが口に出して笑う。

 ――――あれ?笑ってくれたのは嬉しいけど、これって言い方変えたら人が苦しんでいるところ見て笑ってるんだよね?ロリ+ドSって結構新しいジャンルじゃね?


「凌さん?」


「はひ!?すみません!!」


俺が新たなる可能性を信じて妄想をし出した瞬間に葉月ちゃんが話しかけるもんだから、自分でも驚いてしまうほどの声を上げてしまった。学校の陰キャ筆頭である俺、そんな俺が可愛い小学生に名前を呼ばれたら驚きの声を上げてしまうのも無理ないはずだ。

 ……うん。きっとそうなんだ。


「それで私、凌さんに頼みたいことがあるんです」


「そう言えばさっきもそんなことを言ってたね」


俺が動揺したことに全く触れてこない葉月ちゃんは渋谷のハチ公前で叫んだ言葉より大分シンプルなことを言ってきた。あのときは出会い頭に「凌さんが必要なんです!」何て言われたから思わずドキドキしてしまった。

 ………しかし、俺に頼みたいことってなんだ?ネット越しでした知り合ったことがないというのに、俺に出来ることなんて少ないだろう。



「わ、私の母が………現在思い病気にかかっています」


「――――え?」


深刻な顔をしながら言ってきた葉月ちゃんだけど、いきなりのカミングアウトに俺は唖然と聞くことしかできない。


「母は家で寝たきりの生活をしてします。そして、私は少しでも母を元気付けてあげたいんです」


―――何て良い子なんだ(泣き)!!

 唖然としながらもキチンと話を聞いていた俺は、葉月ちゃんの天使のような優しい心に当てられて召されてしまうところだった。病気の母を元気付けてあげたい。そんなことを思う子供がまだ現実に居たなんて……ヤバイ、何か泣きそう。


「母は昔から花が大好きでした……だから、母に花をプレゼントしてあげたいんです」


……うん? 今この子何て言った?


「でも、私はお花のことなんて何も知りません。そんな時ずっとやっていたゲームで【リュウ】さん……いえ、凌さんと出会ったんです」


――――やっぱりですかぁぁぁぁぁ!?

 少し照れ臭そうに言う葉月ちゃんは思わず抱き締めたくなるほど可愛かったけど、そんなことをしてしまったら俺は刑務所に行ってしまう。というか、何かおかしくない!? 別に頼ってくれるのはいいよ? それが幼女(可愛い小学生)なら最高なんだけど、何で俺に頼むんだ?



「えっと、別にそれは俺じゃなくても――というか、俺よりも詳しい人がいるんじゃ……例えばお花屋さんとか」



葉月ちゃんを極力傷つけないように慎重に言葉を選んだ結果、少しだけ文章の繋ぎがおかしくなってしまった。しかし、俺が言ったことに静かに顔を俯けると、そのまま首を横に振った。


「ダメなんです……それじゃダメなんです。私は母が喜んでくれるお花を送りたいんです。でも、母が喜んでくれるようなお花はお花屋さんには売ってないんです」


「お花屋さんには売ってない?」



 相当マニアックな花なのか、販売を目的として育てられていない花なのか、それとも単純にその花屋さんが小さいだけなのか。多分どれか三つだろう。

 自慢じゃないけど、これでも植物図鑑を図書室にあるだけ全部頭に入れたから一般人以上の知識はある。


 理由? 綺麗な花を育てていたら小さい子供(幼女)がよってきてくれるかなって思って。


「その……お母さんが好きなお花は分からないの?」


「それが分からないんです。でも、記憶だけはあるんです。一度母と二人で見に行った景色を。そして、その時に母がとても笑っていたことも」


おっとそれは有力な情報ですね。

 さすがに右も左も分からない状況では話にならなかったのだが、幸いのことに花は分かるけど名前と場所が分からないということだった。



「でも、本当に俺で大丈夫? 自分で言うのもなんだけど、相当怪しいでしょ。知り合ったのもゲームだし、いざ会ってみたら高校生って」


頼ってくれるのは嬉しい。俺を頼る理由も取り合えずどうでもいいけど、本当に俺でいいのかが問題だ。

 葉月ちゃんはうつむいていた顔をゆっくりと上げると、こちらに無垢な笑顔を見せながら言った。



「私は……凌さんがいいんですよ」

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