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約束の相手

4       約束の相手



――――ピピピッ!ピピピッ!


「…………もう朝か」


夢を見ていたような気もするけど、目覚ましというアイテムのお陰で現実に戻された。現在は午前8時を示し、俺は寝起きのまま自分でセットした目覚ましを止める。

 目覚ましを止めたあと、目を擦りながら起き上がり顔を洗うために洗面所に行くとことにした。


――――ガチャ。

自分の部屋のドアを開けると同時に、俺の部屋の向かいにあるドアも開いた。そこからはパジャマ姿で髪が纏まっていない、完全に眠そうな妹―――――喜咲である。


「あれ?お兄ちゃんがこんな時間に起きてるなんて…………どうしたの?」



かなり眠いのか、俺が目の前にいるということは理解しているようだが、喜咲はいつもの勢いをすっかり無くし、言葉も途切れ途切れだった。


「今日は用事があるんだよ。ちょっと出掛けてくる」


「そうなんだ。私はもう少しゆっくりしようかな…………」


「あんまりだらだらするなよ……………って、俺が言えることじゃねえか」


いつもしっかりしている喜咲がのんびりするということを言ってきたので、母親定番の台詞を言おうとしたが、最大のブーメランになるということをすっかり忘れていた。

 喜咲はさっきの言葉の通り部屋に再び入り、俺は顔を洗うために洗面所に向かった。




洗面所で顔を洗い、リビングに入って冷蔵庫を開け……………残り少ない野菜ジュースをコップに注いだ。俺は午前中の燃費がよく、大抵朝は野菜ジュースということが多い。高校2年生男子の朝食とは思えないほど少量かもしれないが、俺の胃袋は朝は極端に小さい。



「――――プハッ!!やっぱり朝はこれだな…………」


コップに注いだ野菜ジュースを飲み干し、俺は自室に戻る。現在の時刻は8時30分。最初の洗面所で顔だけでなく寝癖も直していたため、想像よりも時間が経過していた。ここから渋谷までは約1時間くらいなため、そろそろ家をでないといけない時間となっている。

 俺は着ていたパジャマを脱ぎ散らかし、急いで洋服に着替える。これまた高校2年生の男子とは思えず、タンスから適当に取り出した服を着ていた。…………まあ、オフ会だから大丈夫だろう。


「そろそろ行かねえと…………」


服に着替えた俺は急いで家を出る。家を出て気がついたのは、空がこれ以上ないほど快晴であることだ。太陽の光をいっぱいに浴びながら、俺は駅まで歩いていく。

 さすがは土曜日……………割りと朝が早くても電車はかなり混んでいた。満員電車に揺られながら、俺は待ち合わせの渋谷へと急ぐ。



※※※※




「確かこの辺……………だよな?」



渋谷についた瞬間に感じたのは人の多さだ。さすがは土曜日…………他に行くところがないのかとツッコミをいれたいところだが、それは最大のブーメランとなって帰ってきてしまう。

 渋谷に着いた俺はそのまま待ち合わせ場所であるハチ公前まではや歩きで向かった。スマホで時刻を確認したら9時45分をしてしていたからだ。駅からは目と鼻の距離にあるのだが、何となく集合時刻より早くつきたい。



ハチ公前に着いた俺だったが、周囲にそれらしき人は見当たらない。まだ誰も来ていないのかと思い、俺はスマホをいじりながら待つことにした。


「あ、あの………っ!もしかして【リョウさん】ですか?」


「……………え?」


スマホをいじろうとしたその瞬間、いきなり後ろから話かけられた。声でわかるけど女の子だ…………しかも結構小さい。俺はまさかと思いながら恐る恐る後ろを振り返ってみる。

 ―――――するとそこには、まるでお姫様のような外見をした少女が困った表情をしながら立っていた。


日本人にはない銀色の髪…………でもハーフではなさそうだ。髪はストレートに伸ばしていて、美しい瑠璃色の瞳はなにかに引き込まれてしまいそうだ。顔のパーツ、全てが整えられている。正直に言うと、俺の好みドンピシャだ。



「あの……………私九重葉月と言います…………。ゲームの名前は『ルナ』です………」


「え?もしかしてあのルナさん?」


「えっと…………はい!!」


元気よくかわいい返事をしたルナさんこと葉月ちゃんは、どこからどうみても小学生にか見えない。パッと見はお姫様のような外見であるが、行動や仕草は普通のかわいい小学生だ。

 ヤバイ…………中二病っぽいけど、スマホを持っている右手がうずく。だが、ここで写真を撮ってしまってはただの盗撮になってしまう。


それだけは絶対に避けないといけない……………犯罪だけは絶対にしてはいけないのだ。


「リョウさん!私…………リョウさんが必要なんです…………」


「……………分かった。分かったら、とりあえずどこか行こうか」


大声で葉月ちゃんが叫んだため、周囲の人が全員こちらを向く。なにも知らない赤の他人から見たら俺が犯罪者となってしまうのだ。

 それだけは避けたいので、俺は適当な店に入るように言った。それにと応えた葉月ちゃんは「兄妹と思わせるために…………」と言って手をつないできた。


もしかしたら今は人生の絶頂期なのかもしれない…………。

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