ゲームチャットの相手
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3 ゲームチャットの相手
「じゃあな清水…………たとえお前が小学生に変態と言われたしても俺は絶対に親友のままだからな。だから…………希望を捨てるなよ?」
学校の帰り道。俺と大谷の家は少し離れた場所にある。俺はこの十字路を来た方向から右、大谷は来た方向から左に曲がる。朝行くときはこの十字路を待ち合わせ場所としている。
そして二人が互いの家を目指すために別れようとしたときに大谷は俺の気に障ることを的確に言ってくる。
「うるせえ…………多分お前が心配してるようなことが現実に起こってたら、今頃俺は警察に捕まっている。第一に、俺は自分から手を出すような度胸はない」
「そんなことは知ってるけど、魔が差すことだってあるじゃん?たとえお前が永遠のチキンであったとしても、魔が差したら絶対に手を出す…………。俺がお前に求めているのはそんな時でも手を出さない度胸だ」
どや顔の状態でそんなことを言ってくるけど、正直に言うとメチャクチャ殴ってやりたい。確かに永遠のチキンと言われてもおかしくないほどチキンの俺だけど、改めて他人に言われるとすごく腹が立つ。うずく右手の衝動を必死に押さえながら、俺は家の方向に体と帰る意識を向ける。
「お前って今日もアレやるのか?」
「ん?ああ…………一応その予定だけど」
背を向けて歩き出したタイミングで聞いてきた大谷。『アレ』というのは、現在俺がやっているネットゲームだ。同じ年代…………つまり高校生や中学生がやっているようなゲームではない。かなり硬派のゲームなので、知る人ぞ知るゲームなのだ。
「まあいいや…………じゃあな~」
「お、おう…………」
俺が質問に答えたというのに大谷は適当に答えて後ろを向いたまま俺に手を振ってくる。その手を振り返してから家に帰る。
「――――ただいま~」
ガチャっと家のドアを開けてただいまと言ったあとに靴を脱ぎ、丁寧に靴をそろえる。するとリビングに続くドアがガチャっと開いて小さい誰かがやってくる。
「あーー!!お兄ちゃんやっと帰ってきた!!」
「ん?何だ喜咲か…………ただいま」
「ただいまじゃなーい!!お兄ちゃん私に言うこと無いの!?」
一日の授業が終わり、そのあとに自分の好みをもばらされてから帰って来たというのに、帰って早々なぜ妹そんなことを言われないといけないのだろうか。ちなみにこのちんちくりんは俺の妹――――喜咲だ。
既に風呂に入ったらしく現在は髪を下ろしている喜咲…………現在は小学5年生だ。いつもはツインテールにしていて、学校ではもっとしっかりしているらしい。何でも学年でもトップの成績で、運動のセンスも神がかっているとも聞いたことがある。
そんな完璧の妹にかける言葉なぞ知らん。
「いや…………マジで分からん。俺なんかしたっけ?」
「今日も大谷さんと私の学校に行ったでしょ!!いつも変な写真ばっかり撮ってるの知ってるんだからね!私の友達も『撮ってもらった~』って言ってたし!!」
…………一体こいつはどこまで俺の行動を知っているのか。それに俺だけでなく大谷の行動まで知っているとは。だが、喜咲の言うことは少しばかり間違っている。確かに行ったには行ったが、学校内に入ったわけではない。行ったというより『通った』という部類に入る。
「いや今日は行ってない。なぜなら校長先生から連絡が来てないからな」
「お兄ちゃんと校長先生が繋がっているのがおかしいの!!お兄ちゃんが花とか植物の写真じゃなくて、あの学校の女子の写真を撮ってることも知ってるんだからね!!」
「そ、そんなことしてないし!?お兄ちゃんがそんなことしてるわけないだろ!?」
ヤバいヤバい…………いきなりの真実を突き付けられて危うく動揺するところだった。
妹というのは時に名探偵以上の推理力と観察力を持つらしい。俺はこれからもっと頑張って隠し通す必要があるかもしれない。特に俺の制服の右ポケットに入ったSDカードとか。
「今さらそんなことを言っても信じられない。もし、このことをバラされたくないなら…………今日の夕飯をハンバーグにして!!」
「ふぁい?」
ごまかしたように思えたけども喜咲が全てを知っているような言い方をするから完全に詰んだかと思った。けど、喜咲はいきなり夕飯のおかずの話を持ち出す。そう言えば今日は金曜日。父さんと母さんは共働きで、週末は特に帰るのが遅い。その時の夕飯当番は自動的に俺となってしまうのだが、喜咲はそのメニューをハンバーグにしてほしいという。
…………そんなことなら多分聞いてやるというのに、わざわざ兄を追い詰めるような状況を作り出す理由があったのだろうか。一回反応に困った俺だけど、それで俺の写真のことを黙ってくれるなら安いものだ。
「はいはい…………直ぐに用意するよ」
いつも写真部の活動がないと4時半くらいに家に着くのだが、今日は放課後に皆で話をしていたから現在の時刻は6時になっていた。喜咲が風呂に入っているのもおかしくない。
俺はとりあえず着替えるために自分の部屋に行く。2階にある自分の部屋に行くために階段を上っていると、後ろから喜咲が付いてくる。まるで親鳥についてくるひな鳥のようについてくるけど、喜咲はいつからカルガモになったのだろか。
「いやいや喜咲さん………別についてこなくてもいいんですよ?」
「別に、お兄ちゃんが寂しそうだからついて行ってるだけだし」
と、何かツンデレのようなことを言ってくる。確かに喜咲は俺の恋愛対象の年となっているが、兄妹なので手を出すわけにはいかない。…………というか、俺もそこまで落ちぶれてはいない。
「ふう…………」
自分の部屋に入った俺は最初にブレザーを脱いでからネクタイを外し、ズボンを脱ぐ。
「お、お兄ちゃん!?私がいるんだから一声かけてよね!!」
「え?ああ、忘れてた」
ズボンを脱いだところで何か顔を赤らめた喜咲…………別に兄妹だからセーフのような気もするけど、喜咲も年頃だということだろう。ブレザー、ネクタイ、ズボンをそれぞれ丁寧にハンガーにかけてからラフな恰好に切り替える。俺の必殺の部屋着は『中学校のジャージ』で、家に帰ってからは大体この恰好だ。
着替えを終えたころには喜咲は俺の部屋から退室をしていて、リビングでテレビを見ていた。金曜日の6時15分から始まるのは、スイーツ特集なのだが、スイーツ好きの喜咲は毎回それをキチンとみている。俺はそのテレビを視界に入れながら急いで夕飯の準備に入る。幸いのことに米だけは炊いてくれていたので、あとはハンバーグとその他を作るだけだ。
「まずは玉ねぎ…………」
最初に玉ねぎを手に取った俺は、キチンと皮を剥いてからみじん切りにする。
※それ以降のハンバーグを作っている料理シーンはご想像にお任せします。
「いただきまーす!!」
完成してお皿に盛りつけてからテーブルに料理を運ぶと、喜咲は既に椅子に座っていた。全てを運び終えてから両手を合わせて言った喜咲は大好物のハンバーグを美味しそうに食べる。作った側からすると、こうやって美味しそうに食べてくれるのはとても嬉しい。
夕飯を食べ終えたタイミングで母親と父親がそろって帰宅し、俺は先に風呂に入らせてもらうことになった。
「さてと…………やりますか」
風呂に入って自分の部屋に戻ったところでパソコンを立ち上げた俺。そして言うも通りネットゲームをやることにする。元々やっている人工が少ないゲームではあるが、今日が金曜日ということもあっていつもよりはやっている人が多い。ゲームタイトルは『エクストラオンライン』というタイトルで、普通のアクションRPGゲームだ。別に完成度は申し分ないと思うのだが、一般人にはあまり受けないらしい。
「おっ…………今日もルナさんがいるな」
パソコンを開いてから今日もログインをする。するといつもいる人であり、いつも協力プレイをしてくれている人だ。いつもパーティーを組んでプレイをしているため、チャットも結構やっている。このゲームは初期設定から職業を選ぶことが出来て、俺の職業は【僧侶】だ。ルナさんは職業が【戦士】で、いつも俺が後衛でルナさんが前衛だ。
僧侶と言ってもも時には前に出るし、回復しか能がないわけではない。
―――ピコンッ。
そんな時、早速ルナさんからメッセージが届いた。何のクエストに行くかどうかのメッセージかと思ったので、俺は急いでメッセージボックスを開く。
《 今日はどうしますか? 》
ビンゴだった。ビンゴすぎて思わずふいてしまいそうだったけど、それを我慢して返信をすることにした。
《 イベントクエストやりましょう~。今日から新しいイベント始まったらしいですし!(^^)! 》
《 そうですね~。やりましょう( ^)o(^ ) 》
こうして俺はルナさんと一緒にイベントクエストをやることにした。
※ゲームのバトルシーンはご想像にお任せします。
―――やがて夜がふけ、部屋にかけている時計は午前2時を示していた。いくら明日休みだからと言っても、そろそろ俺の眠気が限界だ。
《 すみません…………。そろそろ落ちますね。また明日やりましょう。 》
《 あ、ちょっと待ってください。 》
「………え?」
今すぐにでもベッドに突っ込みたいというのに、ルナさんは俺を簡単に寝かしてはくれなかった。いつもは直ぐに寝させてくれるというのに、今日はなぜか寝させてくれなかった。
《 明日オフ会があるんですけど…………リョウさんも来ませんか('ω')? 》
「…………オフ会?」
チャットで送られた文章に一瞬反応に困った。オフ会という単語の反応に困ったのだ。確かにこのゲームは好きだし、一緒にやっている人と関わりたい気持ちだってある。だけど、このゲームをやっている年代の人は多分自分より結構年上だろう。 大学生だったら大丈夫かもいれないけど、このゲームをやっているなら30歳くらいかな?そんな人たちとオフ会とかしても話が合うかどうか心配なのだ。
「どうしよっかな…………」
悩みながらも俺の手はブレイクダンスを踊っているように動き、見事な文章を打っていた。
《 別に大丈夫ですけど、何時からですか?あと場所も教えてください。 》
《 明日の午前10時の渋谷のハチ公前に集合です。来れなさそうならまたの機会に…………。 》
「渋谷か…………」
俺が住んでいるのは埼玉県のさいたま市に住んでいるので、渋谷に行くのは造作もない。ここからなら一時間くらいで着くと思うけど、渋谷は人も多いしハチ公前となるともっと人がいるだろう。
でも、あんな返信をして今さら断ることもできない。
《 分かりました。では、明日の午前10時のハチ公前で!(^^)! 》
《 はい!!お待ちしております!! 》
――――ブンッ。
チャットを終了させてからパソコンの電源を切り、明日に備えてスマホのアラームを午前8時に設定してから眠りにつく。
「………オフ会か」
いつもの土日はカメラの手入れか公園に行っている俺だが、まさかゲームのオフ会に出席するとは思わなかった。話が合うといいけど…………どんな人が来るんだろうな――――
―――そして俺は眠りについた。
読んでいただいてありがとうございます!!
これからも頑張っていきます!!