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2-3 つうしんぼ-2

 他に気になる“不適合者”は……

 やっぱり、アイダ・リホだろうか。

 わたしが“不適合者”の存在を初めて知ったその日に現れ、ハルカゼ君とトンデモ少年漫画的バトルを繰り広げていたあの女。オレンジに染めたベリーショートの髪、それにタンクトップにダメージジーンズという間違っても「可愛らしい女性」とは思えない容姿が印象的だったなぁ。

 ありゃ完全に「()る気マンマン」って感じだった。タレ目の割りに気が強そうで「いつだって余裕綽々です」とでも言いたげなあの雰囲気……多分、“不適合者”の中でも相当な強者だ。

 ……っつーかあんなのが沢山いてたまるか。

 と、思いたいのだけど、“不適合者”って10万人もいるらしいんだよなぁ。まだまだ未知のバケモンがいてもおかしくない。カンベンしてよ。

 まぁ、知らんヤツのことについて気を揉んだってしょうがない。ハルカゼ君と関わりのある人物だし、絶対また来るし。一応調べとこう。



 >>>>>>>>

 《異常狂》の“不適合者”:アイダ・リホ

 出席番号96548番


 ・ステータス

 「ちからづよさ」:とてもよくできています(+?)

 「がんじょうさ」:とてもよくできています(+?)

 「すばやさ」  :ふつうです


 ・“C.W.O”

  自分が対峙している相手を「異常」だと思えば思う程「ちからづよさ」「がんじょうさ」を上昇させる。


 ・殺害人数

  “不適合者”:65人


 ・破壊個数

  社会の歯車 :0個


 ・特記事項

  なし

 >>>>>>>>


 

 やべぇ。ナニコイツ。「ちからづよさ」と「がんじょうさ」が最高評価、んでもって“C.W.O”でさらに上昇?無茶苦茶じゃん。

 「すばやさ」が「ふつうです」だけどこれならどうにでもなりそう。

 殺害人数もかなり多い。“ゲーム”はさきおとといに始まったばかりだっていうのにもう65人も……


 「って、あ」


 殺害人数の数が今66人になった……

 ほとんどノンストップで“不適合者”を殺しにいっているのだろうか?超ハイペースだ。

 “不適合者”からその力の源の歯車を奪えば奪う程自分の“C.W.O”を強化できるというルールの事を考えると、今コイツ初めて見たときよりもさらに強くなっているってことだよね。


 こんなのに……本当にハルカゼ君は勝てるの?

 ハルカゼ君は、店長曰くわたし達「クラキ屋」の人間を守ってくれるらしい。それ自体は良いのだけど、このアイダ・リホに勝算なんてあるのだろうか?

 ハルカゼ君にも誰か適当な“不適合者”を狩らせてその“C.W.O”を強化してもらった方が……

 ――って何考えてんだわたし。物騒過ぎるぞ。

 それにわたしが頭回した所で何になる。何にもならない。

 とりあえず“不適合者”の一人が守ってくれるってだけで相当な幸運だ。

 それだけで他の人よりよっぽど生き残れる可能性が高い。

 もうハルカゼ君が“ゲーム”が終わるまでわたし達を守り通してくれることに賭けるしかないし、彼に何か指図できる立場でも無し、もう出来ることは祈ることぐらい。

 

 ってか、よくよく考えたら休みの日でもできるだけハルカゼ君の傍にいた方がいいじゃん。こんなとこで何してるわたし。もし近くに“不適合者”がいたら気まぐれで部屋ごと吹っ飛ばされかねないぞ。

 ……出よ。何が悲しくて休みの日に職場に出なきゃならないんだ、とか思うけど、その方が生き残る可能性が高いんだから。 



 ――――――――――――――――――――――



 「うぃ~す、てんちょー」

 「お、よぉエンドウ。お前も観戦する気になったか?踊るか?」

 「んにゃ、ハルカゼ君の傍にいた方が良いって気がついたから」

 「ん、ラブか?」

 「いやちげーよ」

 「ラブでコメるか?」

 「コメらない。ハルカゼ君、守ってくれるんでしょわたし達の事。離れたらマズいよね」

 「まぁその方が死なないだろうな」

 「つーことで避難してきた」

 「なるほど。生き残りたいのか?」

 「……まぁ、それなりに」

 「マジか~?こんな状況でマジに生存戦略練っちゃってもあんま意味ねぇと思うが?」

 「そー理屈で割り切れないのー」

 「……ふむ。マジで生き残りたいのならハルカゼとラブコメすんのも悪くねぇぞ」

 「なんでやねん」

 「その方が本気でお前を守ってくれるだろうよ」

 「あ~……そういう見方もある……のかなぁ」

 「あるある。『エンドウさん……僕の命に代えてでも貴方を守る!』とか言わせちまえよ」

 「そんな事言われた日には笑うわ」

 「とりあえず口説いてみろよ」

 「そんな打算的な気持ちでオちるのあの子」

 「知らん。“不適合者”を口説くとか面白そうじゃね」

 「あれもしかして自分が面白がりたいだけかコイツ」

 「ゼンゼンソンナコトナイゾ」

 「・・・・・・・・・・・・」

 「ま、あれだ。俺はこの“ゲーム”を観戦して楽しむ。お前はこの“ゲーム”をサバイブする過程を楽しむ。そんなノリでいいんじゃねぇか。個人的には何したって結局“不適合者”次第だろって思っちまうが。まぁ何事も本気でやるんなら大抵楽しくなってくるさ。やってみろよエンドウ。このクソゲーを上手いこと生き残ってみろよ」

 「はぁ」

 「つーことで出来ることは全部やれ。口説け」

 「マジか」

 「当たって砕け散れ」

 「もうそれでいいや……」

 「え、マジ?いいのか……へぇ~……テキトーこいただけなんだけどなぁ~……」

 「テメエ……」



 ――作戦開始。

 作戦名「ハルカゼ君とイチャイチャして好感度アップ!一生わたしを守って……ね?」

 

 ・・・・・・・・・・・・


 あー、なに、その、アレだ。

 “不適合者”に対抗できるのは“不適合者”だけ。

 現在身近にいて敵対してこない“不適合者”のハルカゼ君のハートをがっちり掴んでメロメロにしてわたしを特にしっかり守ってもらうっていう。

 今世紀最大のらぶすとーりーとして映画化されて大ヒット飛ばして富豪になる予定です。


 ……えーと。

 今回は偶然に頼るようなモンでもない。曲がり角でぶつかった名前も知らぬ男とラブラブしても意味が無い。目標はただ一人。わたしは恋のスナイパー。ハルカゼ君のハートをショットだ。


 ……んーと。

 店長情報によると、“ゲーム”が終わるまでハルカゼ君はここに毎日前と同じように出勤してわたし達を守るらしい。ちなみに店長も面白がって毎日来るってさ。わたしも毎日来よう。今日みたいな休みの日は仕事場に行くだけいってストックでダラダラして時間を潰そう。邪魔だなわたし。


 ……あーと。

 毎日毎日会うことによってハルカゼ君はどんどんわたしに惹かれていく予定。わたしは思わせぶりなセリフを吐いてハルカゼ君を誘惑する。んで最終的に同棲にまで持っていて24時間年中無休で悪の“不適合者”からか弱いわたしを守ってくれるナイトになってもらおう。

 

 ……こ、こんなもんか。計画は完璧だ。大切なのは成功のイメージだ。


 目標の確認だ。ハルカゼ・ツグキ。七三分けに眼鏡という何周か回って最先端な容姿の真面目好青年。26歳。大学を卒業したものの就職活動に失敗、2年程の空白期間の後一念発起して服飾系の専門学校に入学し衣服製作を志す、ものの製作の才能は無く、しかし専門学校で得た知識を無駄にするのもなんだかなーってことでここ「クラキ屋」でアパレルショップの店員に。

 思い返すとワリと挫折の多い人生に見えなくも無い。“不適合者”になったのもその決して順風満帆と言えない人生が影響しているのかも知れない。

 そこんとこ深く理解してクリティカルな愛の言葉で慰めてしまおうではないか。


 んで、自戦力の確認。エンドウ・スベル。28歳。見た目で判断する「お客様」に対抗する為に自身を変革、晴れてケバいギャルに。精神は仕事で摩耗しきっていて、多分性格は悪くなっている。


 そんなエンドウちゃんはハルカゼくんと相性バッチリ……なワケねぇだろ。

 二人並んだ姿を想像すると「まぁお似合い」とか口が裂けても言えねぇ。


 ――いや諦めるな……真面目な容姿に反して実はハルカゼ君はギャル好きである可能性に賭けるんだ……

 自分の年齢の事は忘れろっ……!ケバいギャルメイク似合ってないとか自分でもわかっているが忘れろっ……!私は永遠の17歳っ……!見た目アレだけど実は一途な恋する乙女っ……!ホントは真面目なオトコノコと真摯で真剣な恋がしたいっ……!ギャップ萌えっ……!

 ――よし、作戦開始!目標、多分ストック内!初手はラッキースケベ!



 うおおおおおっっっ!退くなよわたし!ちょっと油断すると素に戻ってなんとも言えない気分になって死ぬ!大切なのはヤケクソなスピリットと謎のドライブ感に堪えうる精神力!

 ――自分で何考えてるのかさっぱりわからねぇ。うおー。

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