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異世界冒犬譚  作者: さくら
夢見る乙女が描く未来
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2話

2話になります。つたない文章なので後ほど修正するかもしれません

 俺が駆けつけるとそこには汚い身なりの男三人が冒険者らしき少女を襲おうとしているところだった


咄嗟に助けようと体に力を入れるものの踏みとどまる。そもそも人間だった頃の祐一は喧嘩をしたことがなかった。それが目の前の屈強な男、しかも三人も相手にして勝てるのだろうかと


悩んでいる間も男達は下卑た目で少女に近づいていく


考えてる時間なんてないな。行くしかないだろ


異世界での喧嘩がどういう者なのかを祐一は理解していなかった


現実世界の様に拳で殴り合うのではない、人が殺せる武器と殺すことが当たり前の感覚を彼らは持っているのだ。現実世界の喧嘩の比ではない


だが、気づいていなかったからこそ、この行動ができた


俺は弾丸のように駆けだし草むらから飛び出る



——ッガサガサ



俺以外の全員が物音に一瞬気を取られるが音のする方には誰もいない


こちらを振り向く前に俺は男達の後方へと駆けている


それに気づいたのは男達と向かい合うように座り込んでいた少女だけだ


男達は女の驚いたような顔を怪訝そうに見つめる


後ろに何かいるのか? と男達が振り向こうとする


だがそれよりも早く、俺は男の足元に噛みつき思いっきり後ろに引っ張る


「うおぉ!?」


引っ張られた男はたまらず膝をつき足元を見る


「なんだこいつは!?」


驚きの声を上がると男達の視線が俺に集まる



女の子にひどいことするとはこいつらクズだな!

「ガルルルルルゥ!」



俺は怒りのあまり唸り声をあげる


だが、男達は一瞬こそ驚いていたもののすぐに冷静を取り戻し剣を抜いた


引き倒された男は俺を捕まえようと手を伸ばしてきた


俺は口を離し距離を取る


そしてやはり自分が不利だと思い知る



やべぇ……勝てる気がしない



武器と言えばこの牙なのだが、足首を噛んだところで奴らは靴を履いている。致命傷にはならないだろう


そうなれば噛みついてるところを切られる可能性がある


どうしたらいいのだろうか


「舐めんな!」


男達が一斉に飛び掛かってきた


俺は必死に男達の周りを駆けまわる


狼の討伐に慣れた冒険者達だったが、俺を捉えることができずにいた


理由はこの獣の背の低さにあった


低すぎるのだ


風のようにするりと足元を駆け抜ける獣に冒険者達は四苦八苦していた



——ッバスン!



無我夢中で冒険者達の足の隙間を駆けていると何か鈍い音が響いた


ふと一人の男を見ると胸のあたりに矢のようなものが突き刺さっていた


「……っんな!?」


「よそ見しているからよ!」


冷静さを取り戻した少女が男に向かって矢を放ったのだ


「てめぇ!!!」


突然の反撃に激高した男は少女に向かって走り出した


させるか!

「ガウ!!」


だが、俺から目を離した瞬間を見逃さず、太ももに飛び掛かり牙を食い込ませる


「ぎゃ!! いてええぇ!!!」



——ッドス!


——ッバシン!


またしても俺に気を取られた男二人は少女の放った矢を受け倒れ込んだ



*********************************************



 先ほどまでの騒がしさから一転、辺りは静寂に包まれた。聞こえるのは俺と襲われていた少女の息遣いだけだった


勢い余って飛び出してからの興奮状態から徐々に冷静になっていく感覚と同時に徐々に湧き出る恐怖が俺の心を埋めていく



目の前で人が死んだ



その事実とありえない光景に立ち尽くしてしまったのだ


なんてことをしてしまったのだろう


だが、人を殺してしまった恐怖と不安は驚くように俺の心からスーッと引いていく


ウサギや鳥の時と同じだった。あの時も最初こそ躊躇した。元々生き物を殺すなんて行為できるわけがなかった。だが、それも一瞬だけだった。これも犬の体になったからだろうか?


「助かったぁ・・・」


目の前に転がる死体を目にし、呆然と見つめていると襲われていた少女がペタンと座り込んでいた


ハッと気が付き、女性に目をやる


赤毛の可愛らしい顔をし、皮のような胸当てをしている

動きやすさの為だろうか体のラインを強調するような見た目に一瞬ドキっとする


俺はゆっくりと少女の傍により顔を見上げる


「助けてくれてありがとうね。君が来てくれなかったらどうなってたか……」


少女は俺に語り掛けながら、目からポロポロと大粒の涙を流し始める


「ひっ……ひっく……怖かったよぉ……」


突然、少女が泣き出したことで焦る俺


どうしたものかと悩むもその涙は一向に収まる気配がなかった


見かねた俺はその短い前足を少女の足に掛ける



——っぽす



思いもよらぬ目の前の犬の行動に少女は体をピクンと震わせた


驚きのあまり泣き止んだ少女は俺をじっと見つめ微動だにしない


「慰めてくれるの?」


泣き晴らした目で少女は俺に尋ねる


いや、まあ、泣かれても困るしなぁ

「くぅ~ん」


変な声がでた


「ふふっ」


少女は先ほどまでと変わり、花が咲いたように微笑んでくれた


「私はマニーズっていうんだ! あなたはこの辺りに住んでいるのかしら?」


住んでいるというかなんというか


応えられない俺はへっへっへと息遣いをさせながらマニーズを見ることしかできない


「あなたは独りぼっちなの?」


おおう、寂しい事聞いてくるな。ま、まあそうなんだが

「くぅ~ん」


「そっか……ねぇ! もしよければ私と一緒においでよ!」


え!?


あまりに突然の申し出に今度は俺がびっくりして体を硬直させてしまった


「あ、嫌……かな? お礼もしたかったんだけど……」


おお! まじか! 飼ってくれたりするんだろうか?


「そうだよね。君には君の帰る場所があるもんね」


いやいや! ぜひ! お願いします!

「ワン!」


驚きと喜びで興奮してしまった俺は我も忘れて彼女に飛びついてしまった


「きゃ! ちょ、ちょっと……あはは、わかった。わかったから!」


興奮して彼女に飛びついた俺をなだめるようにマニーズは抱きとめる


「じゃあ、一緒に町に帰りましょ。よろしくね」


よろしく! おねがい! しまっす!

「ワン!」


静かな森の中に喜び勇んだ犬の鳴き声がこだました

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