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異世界冒犬譚  作者: さくら
夢見る乙女が描く未来
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プロローグ

初投稿。不慣れな点もありますがよろしくお願いします

 「唐澤君! 管理機能の実装は終わった?」


深夜二時。ビルの外は昼間の喧騒などなかったように静かだった。時折聞こえるのはタクシーとトラックの音ぐらいである。静寂出つつ見込まれた街の中で一つだけ昼と変わらず明るいオフィスがあった


「〇×システム株式会社」


そう看板に掛かれているオフィスの中では数名のスーツ姿の男がパソコンの前に座り、まるで取りつかれたようにキーボードを叩いていた


その中の一人唐澤祐一は今にも落ちてきそうな瞼を必死に持ち上げながら上司からの催促に応えていた


「このバグが直れば終わります!」


納品日を明日に控えたシステムの改修である


俺はこの業界に飛び込んで四年目になり、ようやく頼られるようになったエンジニアだ


元々徹夜の経験がないわけではないが、最近は落ち着いた仕事ができていた


そんな中、人が足りないという理由で今のプロジェクトに参画させられたのだが、ここまでひどいことになっているとは思わなかった


久しぶりの徹夜作業に体の節々が固まっていく感覚を覚える


だが、それもあと少しの辛抱だ


今日を乗り越えれば一旦は落ち着くはず


納品後の受け入れテストの結果次第では、またこの地獄の日々が続きそうではあるが……いや、今は考えるのをやめよう


俺は与えられた作業の最後の動作確認を行う


先ほどまではまるで堰き止められたかのように動きが止まってしまっていた


プログラムを直し、今度こそはとキーボードを叩く


ヤキモキした心情を表すように思わず叩く指に力が入ってしまった



——ッターーーン!!



今までうまくいかなかったことが嘘のように、画面は綺麗な動きを見せた




終わった……




「終わりました!」


俺は満面の笑みで……とはいかず無表情のまま上司に報告をする


「こっちも終わりです!」


もう一人の同僚も同じように報告した


そして俺たちの戦いはひとまずの休戦が告げられた



唐澤祐一 二十六歳独身


専門学校を卒業後にIT業界に入った。両親とは死別、兄妹もいない、性格も顔も可もなく不可もなく、今までの人生も特にこれといったエピソードもなく、面白味のない当たり前の日々を過ごすだけの男だった


久しぶりの徹夜を過ごした俺は始発の電車に乗り込むと真っ先に椅子に腰かける


始発の下り電車だ、ほぼ人はいない


自宅から仕事場までは電車で一時間かかる


いつもは電車一本なのだが、始発となると乗り換えが必要になってくる


ここで寝たらまずいと思いながらも襲い掛かる睡魔と格闘する


だが奮闘空しく俺はまるで底が抜けて落ちていくように意識を手放した



*********************************************



 けたたましい鳥の鳴き声が辺りに響き渡る


空を覆い隠すように覆われたその木の枝は、麗らかな春のような日差しを全て遮る事は出来ず、漏れ出した日差しは包み込むように俺の顔を照らす


先ほど聞こえたけたたましい鳴き声とは正反対の優しくさえずる鳥の鳴き声が波のように俺の耳へと流れ込んでくる


美しい春の目覚めのような感覚に俺の頭はぼーっとして木漏れ日をその全身で受け止めていた


もう朝か


そう思いながらも目をこする


こすれなかった


金縛りだろうか? いや、手の感覚はある


だが、待てどもその手は俺の顔に届くことはなかった




犬は好きだろうか? 俺は好きだ


ネコも可愛いのだが、犬の方が好きだ


散歩させなければいけない、泊りでどこかに行く場合は預けないといけない、毛がすごい抜ける、体臭がきつい


など、たしかにデメリットも多くある


だが、それは大きな勘違いだ


逆だ逆


彼らは主人と共にあるのだ


そんな犬が俺は好きだ


だが、勘違いしないでほしい


生まれ変わってまで犬になりたいとは一度も思ったことはない



でも、俺は犬になっていた


ウェルシュ・コーギー・ペンブローク


元々は牧畜犬として活躍していた犬で胴長短足。骨太な骨格を持ち、断尾されたそのお尻は歩くたびに左右に揺れるピンと立った耳とキツネのような顔は時として凛々しく、時として愛嬌を見せ表情豊かだ


牧畜犬という歴史を持ったこの犬はとても活発で運動が大好きで、頭が良く、物覚えも好奇心も旺盛


そんなコーギーに私はなりたい





いやいやいやいやいや



え? まじで? まじで俺コーギー?


状況が少しずつ理解でき始めた俺は慌てて自分の姿を確認する


後ろを振り返るとそこにそびえ立つのは茶色い桃尻


ど、どうなってんだーーーー!

「ワォーーーーーーン!」


喋れなかった

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