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まずは状況を打開するための策を考えるべきだろう。
それには真っ当な言い訳を備えて家に戻らなければならないし、嘘をつき続けて毎朝スーツに着替え公園になんて向かいたくもない。
ボーッとする頭をフル回転させようとするも徹夜が響いてまともに現実を受け入れられないのだが…。
「おいコラ!テメェどこ見て歩いてんだ!!!」
ドンと肩に衝撃が加わりよろめきながらも半開きの目で元凶を見据えた。
喧嘩ゲーの定番のセリフが聞こえたが眼前には普通のメガネサラリーマンが鬼の形相で睨みつけていた。
Levelは5くらいだろうな……雑魚だな。
「こっちは急いでんだよぉ!得意先に遅れて破談になったらどうすんだ!?あぁ!?」
「うっせえなぁ…なんだその雑魚キャラみたいな台詞…スキップスキップ………あ」
言葉を放った後、一瞬で詰め寄られ胸倉を掴まれて俺はやっと現実の世界に戻された。
ゲーム感覚で悪態ついたがゲームじゃねぇ!!!!!
思っていた事と現実の言葉が混じり合った結果、最悪の状況に俺の全ての血液が引いていくのが感じ取れた。
「テメェ!!!どこの会社だ!!まだガキの癖に社会舐めんなよ!!!おら名刺出せ名刺ィ!!」
「あ、いぅ…いえ、働いて…な…あっ」
「はぁ!?働いてない?テメェいい歳こいて働いてないの?ばかなの死ぬの?社会のゴミが…」
どもりまくりながらもなぜか薄ら笑いな俺に対して、まくしたてるサラリーマンは血管を浮き出させて掴んだ胸倉を揺する。
通行人も立ち止まって野次馬と化すが、すぐさま歩き去っていくのがチラッと見えた。
「気持ち悪りぃ…クソニートが表歩いてんなよ!!」
突き飛ばされる様にして解放された俺は尻餅をついて見下すサラリーマンの顔を見つめた。
こんな時、ゲームなら正義感の強い主人公面した奴が現れて場を収めるのだろうか。
現実は無情でクスクスと笑いながら携帯をこちらに向ける通行人共が遠巻きに居るだけだ。
「二度と出歩くんじゃねぇぞ社会のゴミが!!!!」
そう吐き捨ててサラリーマンはこの場を後にした。
百合ちゃんに浴びせられる罵詈雑言と、赤の他人に言われる真実はひと味もふた味も違う。
「チッ…人が下手にでてやったら…」
残された俺はよろよろと立ち上がり何食わぬ顔で悪態を吐いて余裕の対応を周りに示した。
涙が溢れそうになったので拭ったことすら気付かないだろう。
しかし辺りを見渡すと笑っている奴が全て俺の事を笑っている様にも思えた。
「やばいよねあーいうの…」
どこからともなく聞こえる声、それが思い過ごしではないことをはっきりと告げている。
こいつらは俺を完全に笑い者にしてんのか…。
次の瞬間。
突然いてもたってもいれずに駆け出した。
「うごっ…」
が、見事に転げ回り無様に立ち上がって小走りでその場を逃げ出した。