表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女狐が異世界を調停します  作者: 木口なん
1章 特別な存在
7/142

6話 祠の秘密

脱走を続けて2週間。

相変わらずロロさんは手強い。


夜中に脱走しようとしたら、あっさり見つかってしまった。

この人はわたしを監視してるんじゃないだろうか。

というかいつ寝てるんだろう?


「くっ、ロロさんはなぜこんな簡単にわたしを捕捉できるのですか?」

「簡単ですよ。ただずっと監視してるだけです。」


やはりそうか。


「じゃあいつ寝てるんですか?」

「神子様が清めの儀をしているときです」


な、なるほど。たしかに祠には5時間ほど籠っている。その間に寝てるのなら納得だ。だが、5時間も洞窟のなかでじっとしなければならないわたしの身にもなってほしいものだ。


「ん?というかわたしの私生活を監視って・・・」

「大丈夫です。着替えとトイレと水浴びのときは監視してませんから」

「そうゆう問題じゃないと思うの」


だめだ。ロロさんは止められない。

今日もあっさり捕まって祠に強制連行させられる。

最近では、ルシアの脱走もすっかり村の名物と化しているためか、結構防御が堅い。だんだん脱走しにくくなっている。もはや泣き落としも通用しなくなった。



「はぁ~。今日も脱走失敗か」

あんまり気にしてなかったけど、あの神に「世界を調停しろ」とか言われてたのに、このままだと一生村に縛り付けられてる気がする。

なんとか脱走手段はないものか。

風魔法を習得して空を飛ぶとかも考えたが、今のところちょっと強い風が一瞬使える程度だ。せいぜいスカートめくりぐらいにしか使えない程度の魔法で空が飛べるとは思えない。


「しかし今ロロさんは寝てるんだよね・・・」

彼の話が本当なら、いまロロさんは寝ているはず。


「この洞窟から脱出すればロロさんに見つからないかも」

そうだ、この発想はなかった。今まで祠に連れてこられまいと頑張ってきたが、ここから脱出するのは試したことがない。よし―――――





「洞窟をくまなく探せば脱出方法も見つかるかも――――」






なんて思ってた時期がわたしにもありました。

とりあえず、祠の入り口は扉が閉まっていて開けられそうにない。そもそも見張りがいるはずだから、脱出は困難だろうな。

次に壁中を探して、抜け道とかほころびとかを見つけようとしてみた。当然そんなものはなかった。

火球ファイヤーボール』で抜け道を掘ろうとも考えた。だが、この洞窟は地下洞なのだ。入り口はかまくらのように申し訳程度の土が盛られており、階段を下って扉をくぐった先がここなのだ。

堅い土を『火球ファイヤーボール』で掘っていくのはまず無理。下手すれば洞窟が崩れて生き埋めだ。

地道に手掘りしては何年かかるかわからない。

万事休すというやつだ。


「はぁ、神子って辛いわね」


ふと祭壇に供えられたプフェルを見る。そういえば、あれって誰が準備してるのだろう。まぁ、たぶんというか絶対ロロさんだろうけど。

そういえば、まだ祭壇は調べてなかった。抜け道の定番のもいえる怪しいオブジェクトをまだ調べてなかったというのは不覚だ。

とりあえず、水とプフェルをどけて金色の綺麗な模様の入った赤い布をどけてみる。祭壇はきれいに切り出した岩でできているみたいだ。

と、そんなことはどうでもいい。なななんと、祭壇に文字が彫ってあるではありませんか。

え~と、なになに・・・




はーい! わたしルシア

二尾の神子でーす☆

これを読んでいるそこの神子さんっ

もしかして、洞窟から脱出したいとか思ってる?

まぁ、別に思ってないなら「清めの儀」をがんばってね。

そして脱出したいと思ってるそこの君っ

偉大なるあたしに感謝しなさい。

あたしの得意な土魔法で抜け道を掘ってあげたわよ。

抜け道は、土魔法で掘って粘土を集めて通路に塗って炎魔法で固めた特製よ。

思う存分使うといいわ。あたしが許してあげる。

抜け道はこの祭壇の下だから。

あ、絶対に祠の管理人に見つかったらだめだから注意しなさい。





・・・・・えっと、たしか2尾の神子ルシアって前の神子だっけ?

たしか、わたしの名前の元になってるって聞いたけど、

なんかイメージと違う。

でも、確かに祭壇をずらしてみたら抜け道を見つけた。

ルシア先輩ありがとう。ありがたく使わせてもらいます。


結構前にできた抜け道のはずなのにかなり綺麗だ。

大人1人分の幅で高さは1.5mぐらい。

5歳の私には十分な広さだ。

かなり暗いので『狐火』を灯しながら進む。そうそう、うまく調整して明かりのように使えるようになったのだ。今、覚えている魔法は『狐火』と『火球ファイヤーボール』の2種類になった。

相変わらず、風魔法は練習中なのだ。

それにしても結構ながい抜け道だ。どこにつながっているんだろう。 





出てみたら村のど真ん中でした






なんてことはなかったので良かった。

たぶん村を東側に出た森の中だ。200mほど向こうに村がみえる。木に登って確かめなければ気づかなかった。特に騒ぎも起きていないのでバレてないはずだ。帰るタイミングだけ気を付けないと脱走に気づかれる。

久しぶりの自由を満喫させてもらうとしよう。脱出の算段は付いたし、時機を見て村を出よう。せっかくの異世界なんだし、いろんなところに行ってみたい。

広がる未来にワクワクしていたところに声が聞こえてきた。

一瞬見つかったかと思ったが、どうやら子供の声みたいだ。よくよく考えてみたらこの村の子供とは出会ったことがない。いままで気にしなかったが、なるほど、村の外の森で遊んでいたのか。

どこから聞こえているのか判断して近づいてみる。狐耳はかなり優秀だ。100mぐらいの音は聞き分けられるみたいだ。ま、尻尾感知のほうが優秀なんだけどね。


念のため慎重に近づいてみると、どうやら4人の子供がいるみたいだ。


「おいおい~。もう立てないのか?」

「ははっ、こいつ泣いてますよ」

「泣き虫がモスさんに勝てる訳ないですよ」

「うっ・・うう」




・・・・・なんとなく状況は読めた。

どうやら泣き虫君はモスとかいうやつにいじめられてるみたいだ。で、モスの取り巻きAとBがいじめに加担していると。

なんともわかりやすい構図だな。

さて、どうしようか。




1、無視

2、助ける

3、一緒にいじめる

4、大人にチクル




まず4は論外。秘密の脱走がバレるに決まってる。

3もないな。さすがに子供をいじめるのはお姉さんとして却下。


じゃあ、助けるか無視するか・・・・

どうしようか




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ