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女狐が異世界を調停します  作者: 木口なん
4章 イェーダ教団
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47話 本部のギルドマスター

 【ナルス帝国】

 強大な軍事力を誇り、学院のおかげで学問の分野でも他国より一足先を行く先進国。人の国では唯一、魔族と友好を持つことを掲げている。実際に魔族と国交があるわけではないが、噂のレベルで上層部は密かに魔族と親交を持っていると言われている。それ故に北に隣接する【マナス神国】とは仲が悪い。【マナス神国】は『光の教団』という唯一神シュランゲを崇める宗教国家であり、人族至上主義を掲げるためだ。その極端な思想ゆえに、かつては獣人やエルフたちも差別されていた歴史がある。

 逆に種族差別を禁止しているこの国では南部の【エルフの森】とも親交が深く、貴重な森の特産品も帝国の市場に流れている。それを目当てに商人たちもこの国へと集まり、経済面でも他国の追随を許さない強大な国と化しているのだ。

 そして何よりも冒険者ギルドの本部が存在しており、すべてのギルドの中で唯一ランクS試験を実施している。ギルド職員も本部で務めることは最大の出世だという認識だ。



 そんなギルド本部はこの国と同じ名を持つ【帝都ナルス】の一般区の一番大きな通りにある。






「着いたぞ。ここがギルド本部だ!」

「大きいですねー」

「あたしも久しぶりだね。最後に来たのは5年前だしね」


 いつもの冒険者ギルドとは比べ物にならない巨大な建造物。大理石っぽい柱が何本も建ち並んでおり、ギリシャのパルテノン神殿を思い出す風格だ。【イリジア】のギルドも大きかったが、本部ギルドはその4倍はある。先進国だけあって【帝都ナルス】は人口も多く、依頼も滞在する冒険者も他国とは桁違いなのだとか。


 早速ギルド内に入り、受付に並ぶ。受付の数も20もあるにもかかわらず、どの受付も10人以上並んでいるという状況だ。まだ昼過ぎなのにこの人数は多い。だが受付の人もさすがに優秀らしく、わずか20分足らずでわたしたちの番になった。



「次の方ー」

「ギルドマスターに会わせてくれ。これが俺のカードな!」

「はい、すぐにお取次ぎします。そちらのお二人もギルドカードの提出をお願いします」



 おお! ランク特Sのカードを見せても驚かない人は初めて見た。さすが本部だけあって高ランクの冒険者にも慣れているのかな?



「これがあたしのだよ」

「っ! はい、ありがとうございます」



 お! ちょっと動揺したね。さすがに特Sを一気に2人も見るなんて思わなかったのかな? まぁ、たった3人しかいないらしいしビックリして当然か。



「これがわたしのです」

「はい・・・・えっ? ・・・え!?」



 わたしの顔とギルドカードを交互に見る受付嬢。そりゃ驚くよね。11歳にしてランクAかつ強さランクSSSとか冗談だとしか思えない。わたしでもビックリだから。

 あ、貯金は隠してあるよ! 貯金額の流出は気を付けないとね!



「す、すぐにお取次ぎしますっ!」

「ああ、よろしく」


 なんとか正気に戻った受付嬢さん。顔を青くして奥に駆けていった。まぁ、ランク特Sの人外が2人と11歳にして高ランクの謎の少女が現れたんだから仕方ないよね。


「あの娘、顔を青くしてたけど大丈夫か?」

「体調が悪いのかもね。本部の仕事は忙しいし」


 わたしたちのせいですよ、残念勇者とエレンさん・・・・






「お待たせしました! ギルドマスターがすぐに会うそうです。こちらへ」


 5分もしないうちに戻ってきた受付嬢に案内され、豪華な扉の前に立たされた。


 コンコン


「イザード様、エレン様、ルシア様をお連れしました」

「入りなさい」

「失礼します」


 中から妖艶な女性の声が聞こえてきた。中に入ると薄い紫色の長髪を垂らした超絶美人がデスクワークしていた。胸元の大きく開いたドレスを着用しており、豊満なアレがこぼれそうになっている(ちっ!)


「久しぶりね。イザードにエレン」

「ああ。俺は3年ぶりぐらいか? マリナさんは変わらないな。本当に人か?」

「ふふふ。美貌の秘訣は毎日のお手入れと適度な恋よ」

「久しぶりだねマリナ」

「エレンも久しぶり。もう結婚した? はっ、まさかイザードと!? もしかしてそっちの娘はあなた達の子供なのかしら?」


「「「それはない!」」」


「あら、残念」


 すごい美人さんだけど、お茶目なひとみたい。



「それでランク特Sが2人も揃ってどうしたのかしら?」

「別に何も? 単なる滞在報告だ」

「今はパーティ組んでるからね」

「へぇ、じゃあ結局そっちの娘は?」

「知っているだろ? 【イルズの森】のこと。アレの生き残りだ」

「なるほどね。そういえば森を取り戻すために逃げ延びた獣人たちが結束してなんかの組織を作ってたわよ?」

「そうなのか?」

「知らなかったよ」

「初耳です。どんな組織なんです?」


「『覇獅子レオンハルト』と言ったかしら・・・?」



 『覇獅子レオンハルト』・・・ねぇ。

 初めて聞いたけど最近できた組織なのかな? 【イルズの森】から逃げ延びたってことは村の知り合いもいるかもしれないし、接触してみるのもいいかもしれない。すっかり忘れてたけどルークとかロロさんとか大丈夫かな? ロロさんはともかくルークはそもそも生きているかも分からないけど・・・



「どうかしたのか?」


 考え込んでいると残念勇者が少し心配そうに声をかけてきた。残念な人だがそのくらいの気は周るらしい。あまり心配をかけないように表情を戻す。


「いえ、なんでも。『覇獅子レオンハルト』ですね。覚えておきます」

「あなたも獣人ですものね。高ランクの冒険者みたいだしいつかスカウトが来るかもしれないわ。さっきあなたのギルドカードを見たときは何の冗談かと思ってビックリしたわよ」

「はははっ、そうだろうな」

「どう考えても異常だしね!」

「ランク特Sの人外2人と依頼をこなしたら嫌でもこうなります」


「「「いや、ならないから!」」」



 失礼な! 

 あんなにたくさんのランクS超えの魔物を倒しまくっていたら強くなっても仕方ない。確かに原種を倒して強さSSSになったけど、アレもイザードがある程度弱らせていたしね。

 それにいろんな魔物を倒してギンちゃんに捕食させたおかげでかなり擬態のバリエーションが増えた。魔力量も上がっていまならランクSSぐらいはあると思う。



 ぷるるん

(強くなったよー)



 すっかり特等席と化したわたしのローブのフードの中でギンちゃんがプルプル震える。可愛い奴め。あとでナデナデしてあげよう。




「ねぇ、ルシア? せっかく帝都の本部ギルドに来たんだし、ランクSの昇格試験受けてみない?」

「え?」



 マリナさんにいきなり突拍子もないことを言われて一瞬固まる。

 昇格試験か・・・

 

 確かに受けるつもりだったけどこんないきなり受ける予定はなかったからどうしようか悩むな。



「ギルドカードの実績を見ると、受験資格は十分だし強さは言わずもがな。その若さでランクSになったとしたら史上最年少じゃないかしら?」

「いいんじゃないか? 減るもんじゃないしやってみろよ」

「確かにしばらくは暇だし、むしろ今のうちに受けておいたらどうだい?」

「う~ん」



 確かに学院に入るのはだいたい8か月後だし、試験内容もあと5か月しないと発表されない。かなり暇だから受けておいてもいいかもしれないなぁ。



「はい、では受けようと思います」


 そういった瞬間、マリナさんがニヤリと口を歪めた。「言質はとったわよ」と言わんばかりの目を向けられて思わず背筋が伸びる。これはやらかした・・・?



「よかったわ。いまのルシアにピッタリの昇格試験があるのよ!」

「そ、ソウナンデスカ?」

「あらあら、表情が硬いわよ? そんなに難しいことは言わないから安心しなさい」

「とてもじゃないですけど安心できる顔してないですよ!?」

「そうかしら? まぁ、あなたに課す試験はあるランクSの依頼を受けることよ。達成すれば合格だし、出来なければ失格。簡単でしょ?」


 ランクSの試験もギルドが指名する依頼を受ければいいのか。ランクAに昇格したときもそうだったしね。あのときは貴族の護衛だったっけ。


「やはり戦闘試験はないんだな」

「まぁ、ルシアの能力なら免除だろうね」

「ランクS試験は戦闘試験もあるんですか?」

「普通はそうね。でもあなたの場合は・・・ね? 分かるでしょ?」


 強さSSSですからね。分かります。

 まぁ、得したって思えばいいか。



「で、肝心の依頼なんだけど・・・まずは予備知識からね」

「予備知識?」

「そう・・・・」






「・・・・・イェーダ教団って聞いたことあるかしら?」






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