45話 事後処理と依頼報酬
わたし、原種を討伐しました。はい。
あれから事後処理が大変でした。いろいろ変化があったのでまずはギルドカードを見て欲しい。
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名前 ルシア 10歳
ランクB(SSS)
戦闘 弓、霊術
パーティ イザード
エレン・クラウス
受注中の依頼 -
預金額 246422400ゲルド
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取りあえず強さランクはSSSになった。まぁそうでしょうね。だってオークたくさんと暴喰災豚倒したしね。
あと預金額か・・・
まぁこれは昨日の清算のせいだね・・・
依頼報酬をもらうために残念勇者とエレンさんと共に首都【イリジア】のギルドまでやって来た。【クザス】での事後処理があったりして帰って来たのは1週間後だった。
「この前の緊急依頼の報酬をもらいに来たぜー。とりあえずギルマスに面会求める」
いつもの軽い口調でイザードがギルドカードを見せた。ついでにわたしとエレンさんもカードをみせる。今回の受付嬢も前の猫獣人のリリアさんだ。
「ギルドマスターに面会ですか・・・? ってイザードさんにルシアさん! すぐにお取次ぎいたします!」
バタバタと慌てた様子でギルドマスターことバロンさんに確認に行く。まぁ、残念勇者って威厳ないからすごい人っぽく見えないんだよね・・・。ぱっと顔見ただけだとその辺のおっさんだし。
「ルシアちゃん何か失礼なこと考えなかったか?」
「いえ、ただ残念勇者って威厳ないと思っただけです」
「確かに威厳ないね」
「そこは思うだけにしてくれ・・・・」
最近はエレンさんと一緒に残念勇者をいじめて・・・もとい遊んでいる。やはりエレンさんとは気が合うみたいだ。仲良くなれて結構嬉しい。
とか馬鹿やってるうちにリリアさんが帰って来た。
「ではイザード様、エレン様、ルシアさん、こちらへ」
三階の奥にあるバロンさんの部屋に案内してもらう。カードを作ったときに行って以来2回目だ。質素ながらも頑丈なドアをノックする。
コンコン
「マスター、3人を連れてきました」
「よし、入れ!」
「失礼します」
部屋に入ると相変わらずダンディーなバロンさんがいた。
「よう、バロンさん。例の依頼の清算に来たぜ」
「ああ、どうせお前らの報酬金額はとんでもないことになってるだろうからな。むしろこっちから呼びに行こうかと思ってたぐらいだ。討伐記録の読み取り機も用意してあるから・・・リリア、始めてくれ」
「は、はい」
リリアさんは机に置いてある機械の前に立って操作を始める。
「・・・はい、ではイザード様から」
「ほれ」
ピピピピピピ・・・ピッ!
「はい出ました。イザード様の討伐記録はオーク257体、オーク・ジェネラル12体、オーク・ロード6体、カイザーオーク3体ですね。オーク1体につき金貨1枚、オーク・ジェネラルとオーク・ロードが2枚、カイザーオークが4枚ですので、依頼報酬金貨1枚と合わせて合計金貨295枚ですね」
「・・・思ったより倒してねーな」
「では次にエレン様」
「はいよ」
ピピピピピピピピピピピピぴ・・・ピピッ!
「出ました。エレン様の討伐記録はオーク9836体、オーク・ジェネラル72体、オーク・ロード46体、カイザーオーク40体、ジャイアント・キメラオーク4体です。ジャイアント・キメラオークは1体につき金貨10枚支払われますので、依頼報酬金貨1枚と合わせて合計金貨10233枚ですね」
「まぁそんなもんだろうね」
エレンさんは極大魔法使ったしそうなったのか。金貨1万枚とかどんなんだよ!
「最後にルシアさん」
「あ、はい」
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ・・・・ピッ!
「!! で、出ました・・・」
「ん? どうしたリリア?」
「いえ、バロンさん・・・オーク22346体、オーク・ジェネラル278体、オーク・ロード188体、カイザーオーク89体、そして暴喰災豚です・・・私は夢でも見てるのでしょうか・・・?」
「・・・そうか、嬢ちゃんが噂の・・・まぁいい。それで合計報酬は?」
「はい、暴喰災豚の討伐報酬が金貨1000枚ですので・・・」
「依頼報酬金貨1枚と合わせて、合計金貨24595枚・・・です・・・ね」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
やめて、4人とも黙らないで!
確かに自重しないって決めたけど後になってやり過ぎたって後悔したから!
「ま、まぁ今回分かったのはイザードが役立たずってことだな」
「結論そういうことですね」
「しかも圧倒的差をつけての役立たず具合だしね」
「お前ら俺の傷を抉るんじゃねぇ! 一番俺が分かってんだよ!」
まぁ、最終的に残念勇者をいじめるのはいつも通りでした。
「というわけでイザード以外は現物支給できないぐらいの量があるから、ギルドに預金したってことでカードに記録しておくからな」
「ああ」
「わかったよ」
「それでいいです」
「それからルシアは強さランクをSSSに上げる。冒険者ランクはランクA以上だと貴族や王族の依頼を受けることもあるから、討伐以外の実績が必要なんだ。そこは我慢してくれ」
「わかりました。問題ありません」
「では、リリア、3人のカードを更新しておいてくれ」
「はい! すぐに!」
というわけなんです。
あと、ジェフ君のことを覚えてるかな?
ほら、討伐前に決闘したアホの子ですよ。ギンちゃんが瞬殺(生きてます)した人。
わたしのランクBと彼の全財産を賭けて勝負したんだけど、どうやらジェフ君は貴族の四男坊だったらしくて、結構財産持ってたの。
しめて金貨40枚、銀貨72枚、銅貨4枚
合計472400ゲルド
これと原種討伐依頼を合わせてあの金額です。一気に金持ちになりました。
あ、ちなみに
銅貨片=25ゲルド
銅貨 =100ゲルド
銀貨 =1000ゲルド
金貨 =10000ゲルド
ですよ。
それで今日は【イリジア】を出て【ナルス】帝国まで向かいます。元々、わたしたちの目的は【ナルス】の学院に行くことだからね。いろいろあってようやく例の立派な城門の前にいる。
エレンさんも一緒にね・・・・
「なんでエレンがいるんだよ!」
「いいじゃないか。あたしはルシアが気に入ったからね!」
「エレンさん自由過ぎです」
「冒険者は自由な職業なんだよ!」
「なるほど」
「なるほど・・・じゃねーよ! エレンはいらん、絶対俺がいじめられる! 寄るな、来るな!」
「ほ~う、ずいぶんな言いぐさじゃないか。覚悟はいいね?」
「ま・・・待て・・・早まるな・・・」
「逃がしません! 『白鎖縛』!」
「ルシアちゃん・・・お前もか!」
「そのまま縛ってなさいルシア。『群土砲撃』!」
「ぐぐああああああああああああ!」
エレンさんとは気が合いそうです!
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「アレが今の狐族の原種、九尾妖狐かぁ。まだまだ弱いけど見込みはありそうだねぇ。
暴喰災豚ぐらいなら瞬殺できるようになれば接触してみてもいいかもねぇ」
真っ白なローブで身を隠したそいつはクスクスと嗤う。
「原種の魔核は取れなかったけど代わりにいいもの見つけちゃったなぁ・・・クスクス」
ランク特Sの人外にさえ気配を悟らせずに観察を続けるそいつは呟く。
「魔王様に報告しちゃおっと・・・クスクスクス」
そいつは一瞬で姿を消した・・・