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女狐が異世界を調停します  作者: 木口なん
2章 二人旅
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29話 ギルド登録

「ん・・・? あ、宿屋か。じゃなくて、こういう時は『知らない天井だ』って言うんだったっけ? よし、テンプレ回収回収」



 盾屋(念のため言っておくが宿屋さんだ)のベッドは素晴らしい寝心地だった。

 ギンちゃん抱き枕と平行して使用すれば快眠間違いなし。




 どうやらあのまま寝てしまったらしく、朝になっている。

 夕食を食べ損ねたせいで、お腹がすいた。


 黒のローブだけ着て、食堂へ向かう。フードの中にギンちゃんを入れるのは忘れない。


 アホ勇者はすでに朝ご飯を食べていた。

 わたしに気づいて手を振ってくる。



「おはようルシアちゃん。よく眠れたか? ミリーちゃん、朝食をもう一つお願い」


「とてもよく眠れましたよ。残念勇者に襲われる心配がないので警戒することなく眠れました」


「いや、ルシアちゃんは俺を一体何だと・・・」


「まぁ、イザードさんはこんな小さな子に・・・いえ、そんな趣味に方もいますしね。私は気にしないので大丈夫です」


「ま、まて。絶対誤解してるからな? 俺にそんな趣味はねーよ? 俺が好きなのは巨乳だからルシアちゃんは眼中にねーよ。そこ重要だぜ?」


 

 ほうほう

 焦って言い訳する勇者(笑)は面白い。

 そういえばミリーさんは巨乳だ。たぶんそういうことだろう。


 暗にわたしが貧乳だと言われた気がしたがここは大人の対応だ。

 というか10歳だからまだ成長するはずだ。

 6年後に期待する。


「必死になっているところが怪しいですね。あ、ルシアちゃんの朝食はこちらです。イザードさんに襲われそうになったらいつでも言ってください。成敗します」


 

 ミリーさんの笑顔が黒いです。

 ランク特Sを超える宿屋の娘って・・・・


「ル、ルシアちゃんよ・・・朝飯を食ったらギルドに行こう。うん、そうしよう」


 残念勇者は冷や汗をダラダラ流しながら朝食を片付けようとしている。見ていて面白いが、わたしも朝ご飯をいただくとしよう。


 朝食の内容はパンとソーセージに目玉焼き、そして野菜のスープと豪華なものだ。この世界にソーセージがあるのは驚きだが、世界が変わっても地球と同じものが食べられるのは素直に嬉しい。



 終始挙動不審の勇者(仮)と共に優雅なブレイクファーストを堪能し、今日は冒険者ギルドに行くことになった。





「じゃ、ミリーちゃん。夕方には帰ってくると思うよ。鍵はこれな」


 残念勇者がミリーさんに部屋の鍵を渡すのを見て、わたしも自分の部屋の鍵を渡した。















「さて、ギルドでルシアちゃんを登録しようか」


「え?」


「え?」


「・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・」


「そんな話聞いてないですが?」


「だって今言ったし」


「今じゃなくて予め言ってください」


「大して変わらねーだろ」


「まるで変わります」


「それはさて置き・・・・」


「誤魔化すなっ!」


「ルシアちゃんには冒険者登録してもらう。これは決定事項だ」


「はぁ、勝手ですね。それでその理由は?そもそもわたしは【ナルス帝国】の学院に行くのではなかったのですか?」


「理由は簡単だ。ルシアちゃんに身分証明できるものを持たせたいからだ」



 確かにこの【イリジア】に入るときも、身分証の提示を求められた。ランク特S冒険者の連れってことで保証されたが、身分証は持っていた方がいい。日本にいたときも学生証はいつも持ち歩いていたしね。



「わかった。じゃあ行きましょう」


「おう、こっちだ」









 冒険者ギルドのイリジア支部はかなり大きかった。さすがは首都のギルドである。ちなみに本部は【ナルス帝国】の帝都にあるらしく、そこではランクSになるための試験が受けられるらしい。ランクAまでならどの支部でもなれるので、ほとんどの冒険者は拠点にしている街のギルドを利用している。



 街並みに合った白い外壁と、白塗りの扉。建物自体は3階建で、剣と盾のマークがついている。あれが冒険者ギルドの目印らしい。


 残念勇者に連れられて立派な白い扉をくぐり抜けると、人がごったがえしていた。



「あ、そうか。この時間帯は依頼を受けに来る冒険者でいっぱいだったな」



 ああ、勇者のアホさ加減にはあきれる。

 予測しろよ。ベテランだろ。



「まぁ、仕方ねーから並ぶか」



 ギルドの受付嬢は10人ほどいるにも関わらず、どこも長蛇の列を形成している。とりあえず、猫獣人のおねーさんのところに並ぶことにした。










「次の方どうぞ」


 やっとわたしたちの番か。


「ギルドマスターに会わせてくれ。あ、これギルドカードな!」


「ギルドマスターですか?・・・っ!! すぐにお取次ぎいたします」



 猫獣人のおねーさん、すごい驚いてたな。まぁ世界に3人しかいないランク特S冒険者だし、当然の反応か。てかわたしって、そんなすごい人と旅してるんだよね。普段が残念すぎて実感ないけど。





「お待たせしました。こちらへどうぞ」



 猫獣人のおねーさんに案内されて3階へと昇っていく。

 ちなみに、イリジア支部は1階が受付、2階が素材の買い取りや販売、3階が役員室になっている。ギルドマスターの部屋は3階の一番奥にあった。




コンコン



「ギルドマスター、ランク特S冒険者のイザード様をお連れしました」


「ああ、入れ」


 ちょっと渋い感じの声が返ってきた。

 残念勇者のあとに続いて部屋に入ると、やたらとガタイのいいおっちゃんがデスクワークをしていた。黒に近い茶髪が似合うダンディな人だ。醸し出す雰囲気も紳士そのものだが、隣に立てかけられた大剣をみるに、この人も冒険者なんだろうとなんとなくわかった。





「久しぶりだなバロンさん」


「何が久しぶりだ。1か月前に会ったばかりだろう」



 ギルドマスターはバロンさんというのか。残念勇者に対して向ける目線が「ああ、面倒なのが帰ってきた」と語っている。

 

 ・・・・この人とは話が合いそうだ。






「で、何の用だ? というかそっちの嬢ちゃんは誰だ?」


「ああ、まず紹介しよう。この子はルシアちゃん。訳あって帝国まで連れて行こうと思っている」


「はぁ? なんでまたランク特Sのお前がそんな子を帝国に連れて行くんだよ・・・。まったく、こいつの考えることはいつも分からん」



 ああ、苦労してるんですね。わかります。

 

 うん、わたしも自己紹介しよう。




「わたしはルシアです。見ての通り狐獣人です。この人に誘拐されました」




「「なんだとっ?!」」




「ちょっとルシアちゃんそれは冗談が過ぎ・・・「おい、イザード! どういうつもりだこのロリコン野郎がっ!」・・待てバロンさん、それは誤解だ・・「ちょっと、イザードさん。こんな小さな子を誘拐するなんてダメですよ!」・・いや、だからこれは合意の上だから・・・・」




 おっと、受付嬢のおねーさんもまだ居たのか。

 




「ああ、もう。俺はそんな濡れ衣を着せられに来たわけじゃねーんだよ!」


「話を逸らすなロリコンめ」


「そうですよ。ルシアちゃんは私たちで保護しましょうマスター」


「ククク、これでバカ勇者を豚箱送りにできるな。安心しなさいルシアちゃん、この心の穢れた男は私たちで処分するから」




 お、おう。なんかすごいことになってきた。

 どんだけ嫌われてるんだこの勇者ヒト













「まぁ、茶番はこれぐらいでいいだろう」


 落ち着いたバロンさんが空気をリセットしてくれた。残念勇者と違って出来る男だ。


「茶番でそんなことするのは止めてくれ・・・」


 勇者(笑)はすっかり萎れている。やりすぎたか。



「ふん、こっちはいろいろあって今大変なんだ。おかげでほとんど寝れてない。ちょっとぐらいお前をネタにしても許されてもいいはずだ」


「何かあったのか?」


「まぁ、それは後で話す。お前こそ用があって来たんだろ? なんか頼み事か?」


「ああ、このルシアちゃんにギルドカードを作ってほしい」


「・・・? なぜわざわざ私に頼む? 受付で作ってもらえばいいだろう?」


「この子をランクBにしてほしい」


「「っ!!」」



 な、なんだってー

 

 あ、今わたしが驚いた顔をしたのを見てニヤリとしたな。

 腹立つ




「おい、ちゃんと説明してくれるんだろうな? 確かにランク特Sとパーティを組むためにはランクB以上の資格が必要だが、実力がなけりゃ認められん。いくらお前の頼みであってもな」



 む、わたしをただの狐獣人の少女だと思ってるね?

 人を見かけで判断しちゃいけないって教わらなかったのかな?


 しかもわたしは九尾の神子だし! 教えられないけどね。




「実力面は問題ない。ここに来るまで何度も魔物と戦闘したが、ランクAクラスの戦闘能力はある」


「おいおい、そんな適当なこと言ってんじゃねーぞ?」


「嘘じゃないさ。ルシアちゃんはランクA超えの魔物を単独撃破したからな」


「証拠は?」


「ルシアちゃん。ほらアレ」


「ギンちゃんですか?」


「ああ」


「「?」」



 なにを言ってるんだ? という顔のギルドマスターと猫獣人のおねーさんをしり目にフードからギンちゃんを出し、膝の上の定位置に置いた。




ぷるるるるるん

(出番?)


 そうだよギンちゃん。





「おい・・・まさか・・・スライムか!」


「ああ、ルシアちゃんが倒してテイムした」


「・・・・ふん。間違いないようだな。いいだろう。ランクBのカードを発行してやろう。リリア、準備を」


「は、はいっ!」



 猫獣人のおねーさんが部屋を飛び出していった。

 リリアさんっていうのか。知らなかった。




「はははっ、ありがとよバロンさん」



「まぁいいんだ。戦力が増えたからな・・・」



「へっ?」



 バロンさんがニヤリと笑う。


「さっき、今忙しいといっただろう?それに関することだ」


「それってルシアちゃんが聞いてもいいのか?俺の連れとは言え、まだランクBだぞ?」


「ランクD以上の冒険者に関係ある話なんだ。まだ発表されてないがな。どうせ知ることだから今聞けばいい」



「なるほど・・・ね。それで?」



 バロンさんは目を閉じ、少し思案してから口を開いた。








原種・・が・・・・出現した」









 

イザードロリコン疑惑(笑)

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