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女狐が異世界を調停します  作者: 木口なん
2章 二人旅
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24話 黒狼との夜戦

・・・・・・・・・ウゥゥォウォォォォォ




「・・・・ん?」



 唸り声のような物音のせいでルシアは目を覚ました。




・・・・・グルゥ・・・・ウォォォォォォ




 どうやら気のせいではないらしい。

 

 戦闘態勢にはいったルシアは感覚を研ぎ澄ませていく。


(・・・・尻尾感知には反応なしか。20mより外側にいるみたいね)


 『人化』で尻尾を9本中8本隠している今の状態では尻尾感知の範囲は20mしかない。9本すべて使えたなら180mもカバーできるのだが、イザードが側にいる以上、むやみに本来の姿を使いたくない。



「唸り声からして魔物かな?盗賊ならこんな声出さないし」



 正確にはわからないが、おそらくかなりの数がいる。そう考えてルシアはイザードを起こすことにした。


 イザードは毛布にくるまって少し苦しそうに寝ていた。そばにある焚火の跡がうっすら赤くなっているので、さっき火が消えたとこなのだろう。


 そして昨日狩りに狩りまくったオークの肉が焼けた匂いが漂っていた。







「お前が犯人かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「ぐふぅっ!?」




 ルシアはイザードを思いっきり蹴り上げた。





-------------------------




 こんばんは

 

 どうもルシアです。


 昨日オークの村をサクッと滅ぼしてお肉をおいしくいただいたのですが、現在トラブルに巻き込まれています。



 あのバカ勇者がやらかしてくれたようです。


 どうやら私が寝た後、余った大量のオーク肉がもったいないから、限界まで食べ続けたらしいのです。


 「夜の見張は任せておけ(キリッ)」などと恰好つけておきながら、肉の食べ過ぎで苦しくなって火も消さずに眠ってしまったのだとか。

 当然そんなおいしそうな匂いを魔物が放っておくわけありません。オーク肉の匂いを嗅ぎつけたブラックウルフという魔物に囲まれて、今にいたります。



 あの役立たず勇者は「俺は今動けねぇ。悪いが魔物の始末は頼んだ」などとふざけた供述をしており・・・・・

 わたしの独断でとどめを刺しておきました。

 

 獣人たるわたしの全力で、オーク肉の詰まった屑勇者の胃のあたりにボディブローを喰らわせただけなので、明日の昼までには目を覚ますでしょう。


 ダメ勇者が干からびたカエルみたいにピクピクしてたのを見て、少しは怒りのボルテージも下がりました。

 残った怒りはブラックウルフにでもぶつけて発散することにします。













「さて・・・・」

 

 うまくイザードも気絶してくれたので久しぶりに本来の姿に戻りますか。





 ボフッ




 謎の煙が出る仕様はいまいちわからんが、九尾状態に戻って感知能力も戻っている。

 ふんふん、なるほど。


 だいたい30m先に10匹ほどいる。

 でも、これは囮でわたしを挟んだ反対側50mさきに20匹待機しているみたいだ。


 前の10匹が手始めに襲い掛かり、応戦したところで背後から奇襲をかけるつもりなのだろう。ウルフの名を冠するだけあって、群れでのコンビネーションを心得ているみたいだ。


 ちなみに魔物がブラックウルフであることを知ったのはアホ勇者が吐いたからだ。

 このあたりで旅人の安眠を妨げる群れをなした魔物はブラックウルフぐらいなんだとさ。


 まぁそれはいい。

 今はブラックウルフどもをなんとか殲滅することが先決だ。

 せっかく誰も見ていないのだから、ちょっと魔術を使ってみようと思う。



「・・・・来る」



 前の囮の10匹が動き始めた。

 あっという間に30mもの距離を詰めてきたが、遅い。



「『火球ファイヤーボール』!」


 10個の火球を生み出し、ブラックウルフに向かって飛ばす。


 基本的に一つの魔法を使うのには片腕で制御する必要がある。

 『火球ファイヤーボール』は火の玉を1つ飛ばす魔法なので、最大2つしか作れない。

 まぁ、一つ一つ制御せずに、全ての火球に同じ動きをさせるのなら片腕で十分だが、動き回るブラックウルフに当てることは難しいだろう。


 だがわたしには腕のほかに9本の尻尾がある。

 よって簡単な魔法なら腕と尻尾をあわせた11個の魔法を同時に制御できるのだ。



「いけっ」


 放たれた『火球ファイヤーボール』はブラックウルフを1匹ずつ仕留め・・・・・・





ズオォォォォォォォォン




 大きな爆発が起こり、熱風が押し寄せた。



 ・・・・いや、ただの『火球ファイヤーボール』だよ?

 10発ぶんの連鎖爆発にしても、そんなに魔力も込めてないし、本来こんな爆発をおこす魔法じゃない。



 ・・・・・魔力を使うときは制御に気を付けないと、思わぬ大惨事を起こしかねない。


 ブラックウルフさんたちはオーバーキルしてしまったらしく、炭化してしまった。

 確かにこんな規模の魔術をつかう魔族が恐れられるのもよくわかる。






 おっと、考え事をしている暇はないみたいだ。

 後ろの奇襲部隊20匹がこっちに近づいてきている。


 今度は先ほどの2倍の数だから、『火球ファイヤーボール』10発では本来は足りない。

 だが、さっきの威力ならかなり数は減らせるだろう。



「『火球ファイヤーボール』!」



 まだ、20mぐらい離れてはいるが、尻尾感知の領域内なら、見えなくても魔術を当てることはできる。





ズドォォォォォォォォォォン




 再び起きた10連爆破のおかげで、14匹倒せたみたいだ。

 6匹残ったので、もう一回『火球ファイヤーボール』を使おうかとも考えたが、今度は新しい霊術を試すことにした。


 尻尾感知もあるし、獣人ならではの身体能力に加えて魔力による運動能力向上の効果もある。

 ブラックウルフ6匹ぐらいなら接近戦も大丈夫だ。





「『物質化マテリアライズ』!」


 いつもは矢を創るときに使っているが、今回は少し違う。

 長さは20cmぐらいで、両端が針みたいになっている暗器。いわゆる「千本」を創った。


 『物質化マテリアライズ』でも制御は11個が限界だ。

 だが相手は6匹だし、問題はない。


 11本の千本を浮かべてブラックウルフの方へ走り出した。






 




 目視で確認!


 目標ブラックウルフ


 前から2、3、1の陣形か。


 おそらく一番後ろの1匹がボスウルフだな。



「はっ!」


 周囲に浮かべた11本の千本のうち4本を前衛のウルフに飛ばす。


 本当は投擲したかったが、あいにくそんなことはしたことがない。

 投擲後に操作して補正することもできるが、大きく外れたときは無理だ。

 なにより、走っている状態で慣れないことをやる余裕はない。


 4本の千本は前衛ブラックウルフ2匹に2本ずつ突き刺さり、一瞬動きを止める。

 突然動きを止めた前衛に中衛ブラックウルフ3匹がぶつかりそうになり、慌ててスピードを落としたところを狙い撃つ。


 新たに2本ずつの千本を中衛ブラックウルフに放ち、突き刺さると同時に結合エネルギーを霊術に変換する。



「『爆発エクスプロージョン』!」




 



 ドゴッ!!


 ブジュベチャッ!




 突き刺さった千本が起爆し、ブラックウルフ5匹がはじけ飛ぶ。

 

 うえー きもちわるー


 まさかグロ画像を直に見るとは思わなかった。

 ウェブに上げたら「検索してはいけない」シリーズになりそうだ。


 突き刺さった千本が爆発することで、標的の体内から吹き飛ばす魔法か・・・

 これは人には使っちゃいけない。

 うん




 まぁ、新霊術の実験も終わったしボスウルフを狩ろうか。


 ボスウルフは体が黒くないみたいだ。

 銀色っぽい毛並みで大きさは2mほど。

 ブラックウルフが体長1m~1.5mぐらいだから、明らかに別種だな。



 とりあえずボスウルフでいいか。



 ボスウルフは突然爆発した仲間を見て、こっちを警戒しているみたいだ。

 普通こんだけ仲間がやられたら狼といえど逃げると思うんだけど、そこが魔物と動物の違いなのかな?

 魔力が好戦的な性格を作りやすいって話だから、そうなのかもしれない。



 「グルゥゥゥゥゥ・・・」



 少し距離をとって、威嚇しているみたいだ。


 その間に新しい千本を9本用意させてもらったのでGood Job威嚇


 あえて11本にしなかったのは、もしもに備えて魔法の発動が出来るようにするためのものだ。

 一応ブラックウルフより上位の魔物みたいだから、油断するつもりはない。


 

 お互いにジリジリと円を描くように移動しながら、隙を伺う。



 先に動いたのはボスウルフだった。


 

 千本を警戒しているのか、ジグザグに移動しながら飛びかかってきた。


 とっさに千本を3本飛ばしたが、全て避けられてしまった。


「やばっ!」


 『操空エリアル』で風をおこして、自身の身体を横に飛ばす。

 一瞬遅れてボスウルフの爪がルシアのいたところの空を切った。


 尻尾でバランスをとり、着地して一瞬硬直したボスウルフを狙って残りの7本すべてを打ち出す。


 ボスウルフもそれに反応して回避する。

 だが、かろうじて右の後ろ足とわき腹に当たった。



 てか、アレを回避するんか。

 だけど、終わりだ。



「『爆発エクスプロージョン』!」



 ボゴッ


 ブチャッ



 爆発の煙が晴れるとボスウルフは後ろ足と右側の身体1/3が吹き飛ばされて横たわっていた。




 さ、さすがに死んだよね?

 「やったかっ?」とつい言いそうになったのを飲み込んで、全力でフラグ回避したんだけど。






 ・・・・ズズッ




 ぐちゃぐちゃのスプラッタな状態だったボスウルフの身体が高速再生した。






「はぁっ?!」



 ちょっと待て。

 それはおかしい。

 いくら生命力豊富な魔物といってもそれは納得いかん。



 瀕死だったボスウルフは再び目の前に対峙した。










 ・・・どないせいっちゅうねん



 つい関西弁でツッコんでしまった。


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