1話 管理空間
気づいたら目の前が真っ白だった。
すぐに何があったか思い出す。
あ、わたし死んだんだな。
体は動かせそうにないし、何より目を開けてる感覚がないのに真っ白な光景が浮かんでいるのはおかしい。
夢にしては意識がはっきりしてることから、きっと死者の世界かなんかだと想像できる。
「おしいね。正確には死者の世界じゃない」
え?
「ここがどこか気になるかい?」
どこからともなく声が聴こえてくるが姿は見えない。
だが、声の主の言う通り、ここがどこなのか気になる。
さっき死者の世界ではないと言われたが、ではここはどこなのだろう。
「そうだね。ここはあらゆる世界の管理をするための空間・・・っといった場所かな」
じゃあ、この声の主はおおかた「神」とかいう存在なのかな?
「ああ、その解釈でかまわない」
神とやらはわたしに何か用事でもあるのか?
どこかの国の一神教みたいに死後の裁きでもされるのか?
「いいや、そんなことはしないさ。僕は君に頼みたいことがあって、わざわざ魂を回収したのさ。ちなみに屋上の柵が外れた理由は僕が干渉したからだよ」
ほう、しがない女子高生を呼び出すために魂を回収するのか。
普通はお告げとかでひっそり、頼み事でもするんじゃないかなぁ。
「突然殺したりして悪かったさ。それにちゃんと理由があって君を選んだんだ。本当にしがない女子高生なら、お告げだってしないよ。」
じゃあ、その理由ってなによ。
「うん。君には転生してほしい」
なんかいま転生とか聞こえたけど?
「順を追って説明するよ。まず、僕は全能の存在にして世界の意思たる精神体・・・神だ」
うん。この際それは認める。
「僕はもともと一人だった。そこで世界を創造して知的生物を誕生させた。」
あー、世界を7日で創ったとかいうやつか。
「そのとうり。だけど僕が創った世界は1つじゃない。君たち人間だけが知的生命体として生活するのは【地球】ほかにも竜の住む世界、エルフの世界、天界や冥界も僕が創った世界だ」
ということは、死んだら天界か冥界に行くのか?
「生物の死後の魂の行き先は世界によってさまざまだ。【地球】の場合は天界か冥界に行くね。だけど、世界によっては魂が浄化されて、輪廻転生する。というか、地球以外の世界は基本的に輪廻転生するよ。地球と天界と冥界はセットで創った姉妹世界だから」
で、なんでわたしが転生することになるわけよ?
普通天界にでも行かしてくれるんだよね?
「さっき僕が全ての世界を管理するとか言ったよね?でも1つだけ干渉できない世界が存在する・・・というか干渉できないように制限をかけて創った世界があるんだ」
つまり、干渉できないように創ったけど、干渉したくなったから適当な世界から魂を選んで送り込むと?
「端的に言えばそうなるね。でも干渉できないようにした理由もあるよ。その世界はあらゆる種族の知的生命体を詰め込んだ。世界を僕じゃなく、彼ら自身で管理できるように・・・だけど種族の違いから、多くの争いが起きていてね。それでその世界を調停してもらうために強い精神力をもつ別世界の存在、つまり君に転生してほしいのさ」
神のくせに他力本願なのね。
「君の残りの寿命になるはずだった魂の力・・・霊力は転生するときに相応の能力に変換される。だから若い魂が必要だった。それなりの能力がなかったら生きていけなからね。」
能力? 運動神経がいいとか計算が速いとか?
「ん?言ってなかったか。君に行ってほしい世界というのは魔法があるから。地球の人間には魔法の力を与えずに、科学の発展を促した世界だから、君に魔法を使うための能力を付加しないといけないんだよ」
魔法・・・あったのか。
「君にわかりやすく言うなら、『剣と魔法のあふれるファンタジー世界』といったとこかな」
へぇ、魔法とファンタジーか・・・・おもしろそうね。
いいわ。転生してあげるよ。
「君ならそう言ってくれると思ったよ。ああそうだ、『素敵な人と結婚して2人の子供と幸せな生活をしたい』っていう君のささやかな心残りもきっと叶えられるよ」
なっ なんで知ってる?!
「僕は神だからね」
文句を言いたかったが意識が遠のいていく。
転生が始まったんだろう。
なにか心が満たされるような感覚がする。
たぶん「能力」とやらを魂に込められているんだろう。
わたしは異世界に転生した。
ちょっとスピーディかな・・・