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女狐が異世界を調停します  作者: 木口なん
1章 特別な存在
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15話 白の矢

右手に霊力を集中する。

左手に弓を持ち直す。


こうして手に霊力を流している間は魔力を操作できない。

霊域があった頃に手に霊力を集められなかったのは、魔力が動きを阻害してたからだ。


魔力の不活性が解かれた今ならわかる。

そもそも霊力と魔力は絡み合うように存在している・・・と感じる。

そこから霊力と魔力をより分けて使うイメージだ。

尻尾に関しては霊力と魔力にそれぞれ専用の回路があるので流れが阻害されることもなく、同時に使うこともできるようだ。


落ち着いてみるとなかなか便利なようだが今のところ特別な有用性はない。




それに今からやることはある種の実験みたいなものだ。

できる保証はないがやる価値は十分。



手に集中した霊力を放出し霊素にする。

そして霊素を操ってみる。


霊素は見えるものではないが、尻尾感知のおかげで動きを理解できる。

確かに煙のようにゆらゆらと動かせる。

第一の条件クリアだ。


次の段階をする前に10年前のことを思い出す。

忘れてしまったこともあるが、化学の知識は残っている。

使う知識はダイヤモンドの結晶構造。


そうだ、今やろうとしているのは霊力の物質化。

空間中で霊素になることを利用して分子構造をイメージ。

霊素を霊力でエネルギー結合させる。

そして結合エネルギーの高さは堅さと関係している。

ダイヤモンドの結晶構造に高エネルギー結合。


ルシアの右手に霊素が収束し真っ白な物質が形を成していく。その形は「矢」。

鉄よりはるかに堅く、軽い「矢」が生成される。


よし、うまくいった。

第二条件クリア


出来た矢を弓につがえて狙いをすます。

よし、いける。

今回は山なりの曲射ではなく、まっすぐ狙っている。

100mも離れていれば普通は届かない狙い方だが、わたしには当てれる自信がある。



右手を離し、白い矢は射出される――――――





その矢は重力にすら逆らい空気摩擦を無視するように一直線に加速しながら......飛んでいく。

100mの距離で亜音速にすら達した矢は魔王本人からは外れ、魔族の兵士の方へ突っ込んだ。



『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』



すさまじい衝撃と共にたった一本の矢に貫かれた魔族兵たちが吹き飛ぶ。

その一撃で2人の兵士が即死。周囲の10数名が重軽傷を負った。

弓矢の攻撃とは思えない桁違いの威力に魔王ギラですら目を見張る。

魔王軍が動揺するうちにルシアは第二射の準備にかかる。



右手に霊素を集め白い矢を形成。

さっきの一発でコツは掴んだ。

予想した通りだった。霊素で物質化しても内部の結合エネルギーを少し消費して霊術を発動できた。

使ったのは制御系の術だ。

操炎フレイム』や『操空エリアル』で炎と風を操るのに必要な基礎の術だ。

重力とつり合わせ、打ち出した矢をさらに加速させる。ホントは自転の影響とかを加味しなければいけないが、計算が面倒なので無視でいい。だが、たったそれだけの工夫でこの威力だ。

もはや銃撃にも等しい威力だ。避けることすら不可能だろう。

次は威力を上げた一撃を赤髪の男にぶつけてやる。

撃った後に操作すれば軌道を曲げることも簡単だ。


結合エネルギーを込めて矢を引き絞る。

まだあいつはさっきの攻撃が当たった兵士の方を見ている。


「当たれっ!」


放たれた矢は軌道修正しながら赤髪の男に迫る。

はっ、と気づいたようにこっちを見たがもう遅い。

先ほどよりもさらに早い音速超えの矢は前方に一点集中の衝撃波を放ちながら進む。

衝撃波に当てられよろめいたところを矢が―――――


だがそいつはわずかに左に身をそらして避けようとする。

が、回避は不可能。

漆黒の鎧ごと吹き飛ばして右わき腹を貫いた。


ルシアは矢の発射と同時に走り出していた。

目的はロロの回収。

ボスが重傷を負って、慌てふためいているうちに担いで逃げた。

さすがに一軍を相手にするほど頭に血は上ってなかった。


そして実感した。

この世界で科学の知識はチートすぎる。




――――――――――――――――――――――――――――――――――





油断した。

魔王ギラは少し後悔していた。


うさんくさいゲルとか言う男の言う通り、霊域は消失した。

同時に進軍を開始し、順調に歩を進めていた。

だが突然、前線に巨大な爆炎の竜巻が発生したので、わざわざ前に出てきてみると狐獣人の男と少女がいただけだった。距離があって顔などはよく見えなかったが。

【霊域イルズ】の霊術部隊が待ち伏せしていたのかと思っていたため、警戒して様子を見ようとした。

すると、男の方が鉈を手にして切りかかってきた。

魔剣王と呼ばれる自分に切りかかってくる武勇には感心した。太刀筋も悪くはなかったが、相手は俺だ。

《魔剣クリムゾン》で切り裂いた。


少女の方を見ると弓を手に取って何度も撃ってきていた。

ほとんど届かなかったし、腕も悪い。あのような少女が弓を弾けるほど力があるのは驚いたが。

まわりを警戒しても特に大きな気配は感じない。

獣人があのような魔法を撃てるはずがないのだから、おそらくこちら側の誰かが暴発させたのだろう。

・・・・・後で調査して処分が必要だな。

そんなことを考えていたら、軍の一角が吹き飛んだ。




どこから攻撃が来た?

やはり人族の部隊が隠れているのか?


「落ち着け、負傷者を後方に運べ。ほかの者は周囲を警戒せよ」


混乱する軍に指示を出したところで、前方から何かを感じた。


ハッとして見ると白いものが高速で飛んできた。

避けようものなら後ろの者たちが被害を受ける。剣で弾こう。

この一瞬の思考が運命を分けた。

見えない衝撃が体を打ち、少しよろめいてしまった。


こうなっては剣で弾く余裕などない。

せめてダメージが少ないようにと、急所でない鎧の厚い部分で受けようとした。

だがその白い物体は鎧すらも破壊して俺の身を貫いた。


貫通することはなかったので、それ以上の被害はなかったが、大きなダメージを受けた。

まわりの兵士に支えられて立ち上がると、右わき腹に白い矢が刺さっていた。

(まさか―――)

と思って獣人の少女のいた方を見ると、男もろとも遠くに逃げているのが見えた。








完全な油断だった。

今は後方に撤退し治療を受けている。




「失礼します、ギラ様」

入ってきたのはゲルとか言う男だった。


「重傷を負われたと聞いたので様子を見に参りました」

「ふん、重症というほどでもない。なぜ貴様がここに来た?」


ゲルは「はぁ」とため息をついて首を振る。


「ギラ様、霊域を消せば右腕としていただける約束でしょう?正式に任命していただきたく参上した次第でございます」

「ふむ・・・そうだったな。まぁいい。俺のために働けるならなんでも構わんのだ」

「ありがとうございます。で、さっそくですが、ギラ様の治療で軍が動きを止めています。このままでは【イルズ騎士王国】にも知られ、軍を派遣されるでしょう。せめて森を抜けるまでは進軍しておいた方がよろしいと思うのですが・・・」

「つまり指揮を一時貸与しろと?」

「その方がよろしいのでは?どうせ森には獣人共しかいませんしね」


(ふむ・・・さっきの少女が気になるが・・・まぁいいだろう)


「森の出口まで進軍させておけ。そこから俺が一気に出る」

「かしこまりました。今はどうぞ傷を癒してください。1日もあれば着きますし、そこで半日休憩もしておきましょう」

「ふん、まかせた」


無駄にうやうやしく礼をして退出するゲル。

傷も回復魔術ヒールを数回に分けて使えば1日で治る。

ゲルという男も怪しいが、今は泳がせていいだろう。


目を閉じ、眠りについた。







15話使ってまだ本筋に入れん・・・

20話までには2章スタートできるか・・・?

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