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女狐が異世界を調停します  作者: 木口なん
8章 獣王国
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135話 冒険者ギルド理事


「よ、ようやく終わった……」



 二十七の都市を全て修復し終えた私は、取りあえずグデーっとしてた。いや、ホント疲れた。わたしが中心になって【レオンハルト連邦】建国のために各国と調整する一方で、都市の修復までした。ついでに森の妖界化に重要な妖樹を育てるために定期的な妖力の注入もしたからね。

 うん、わたし働き過ぎ。

 そういうわけで、わたしが一から育てた森の新しい守り『妖樹』の上で休んでいた。初めは苗だった妖樹も、今ではすっかり大木になっている。いや、大木なんて生易しいモノじゃない。高さ五十メートルを遥かに超えるトンデモ大樹だ。妖力を注いだうえに『調和』で微調整していたらこんなになっちゃった。わたしもビックリだよ。

 この妖樹も無事に根から吸い上げている魔素と霊素から妖素を生成して散布している。まだ濃度が足りないけど、あと数か月もすれば完全な妖樹になるだろう。

 妖樹が完成したら、木の上に家でも作ろうかな……景色も良いし。



「あー、休みたーい」



 わたしが言いだしたことだから文句はないけど、そろそろ休みたい。学院も退職したし、孤児院は経営担当者を雇っているから、わたしは建国に専念できる。

 でもやること多過ぎじゃない?

 そりゃあ、わたしも建国なんてしたことないから、どんなことになるかなんて予想してなかったよ。でも、こんなに忙しいなんて聞いていない。特に各国との折衝が大変だ。案の定【マナス神国】は色々と手を出してきたららね。スパイモドキが沢山来た。勿論、撃退したけど。

 あとは【イルズ騎士王国】の騎士王とも面会して国交についての取り決めもした。あと、国境の正式な取り決めも一か月ほどかけてやりきったよ。なんせ、初代獣王ことレオネスさんは役に立たないからね。

 建国にともなう大量の物資発注はわたしが冒険者として働いたお金を使った。正直、使い道もなかったから丁度いい。知らん間に何十億って溜まってたからね。これで都市の補修材料を確保できた。各地から獣人も集まっているし、わたしが簡易的に補修した都市も動きだせるだろう。

 特に、初めの方に補修した都市には既に獣人たちが移住し始めているからね。獣王が住む首都は【レオンハルト連邦】の中央付近、森から魔族領側に出て数十キロ進んだあたりに決まった。今は首都【リオーネ】が最も栄えている。順調に国家基盤を作り始めているみたい。

 いやぁ、順調順調!












 ……とまぁ、わたしが現実逃避している理由を教えよう。

 実は【レオンハルト連邦】に冒険者ギルドを導入したいんだけど、それにはギルド本部で理事たちの了承を得なければならない。そしてギルドに関する国際法に加盟し、ようやくギルド支部を置くことが出来るようになるのだ。

 で、わたしって理事たちから目を付けられてるんだよねぇ。

 ずっと前からランク特Sになれって言われているし、なんかエロい目で見られているし。正直な話をすれば会いたくない。でも、ギルドは導入したい。すっごいジレンマ。



「わたしも今は【レオンハルト連邦】の重鎮って扱いだし、大丈夫だとは思うんだけどねぇ」


 ぷるん

(大丈夫?)


「うん……でも、あのジジイ共は苦手だわ……」



 建国自体は各国に発布している。だからわたしは今や【レオンハルト連邦】の最高相談役としての地位も持っている状態だ。まぁ、基本的に好きなことをしていればいいんだけど、有事の際には獣王や首相の相談に乗ったりする。あとはわたしの人脈を利用して色々と政治的なアレコレをするのが仕事だ。

 要は結構なポストって訳。

 冒険者ギルド理事といえど、簡単に手を出していい存在じゃない。でも、あの老害たちはそれを理解せずにやらかしてくれる可能性もある。中には獣人、エルフ嫌いの人もいるしね。それもこれもギルドに【マナス神国】の手が及んでいるからだ。

 全く……あの国は本当に面倒臭い。

 一回暴れてやろうか畜生め……っと思わず汚い言葉を使ってしまった。自重しないと。



「まぁ、現実逃避しても仕方ないか。行くよギンちゃん」


 ぷるーん

(わかったー)



 ともかく、ゲートを開いて帝国に行こう。

 本部マスターのマリナさんと相談して助けてもらった方がいいしね。







―――――――――――――――――――






「というわけで助けてマリナさん」


「勿論よ。それぐらいなら手伝ってあげるわ」


「流石です。愛してますマリナさん」


「ふふ、ありがとうね」



 これで大丈夫でしょう。

 余裕があれば勇者ことイザードとエレンさんにも助っ人参加を頼もうかと思っていた。でも、残念ながら二人は依頼で出かけていたんだよね。やっぱり忙しいのか。



「まぁ、本来なら無茶苦茶な要求はされないはずよ。いくら新興国家だとしても、そこはしっかりしているハズだもの。もしも変な要求されたら、ギルド自体の信頼に関わるわ」


「だと良いんですけどねぇ」


「最悪の場合は私が助けてあげる。だから安心しなさい」



 マリナ姉さん流石です。

 まぁ、理事なんて老害の集まりだし、形式的な権力はともかく、実質的な力は本部マスターのマリナさんの方が上だ。間違いなく上手くいくだろうね。



「早速行きましょうか」


「はーい」



 ギルド理事は本部の上にいる。普段の仕事は各国のギルドから寄せられる情報の編纂だ。そこから勇者派遣や支部への資金配布などを決めている。

 そしてギルド支部設置を承認するのも理事の役目になる。

 今回は『今度【レオンハルト連邦】にギルド設置したいから、その話し合いをしたいの。いつ会議するかを決めに来たよ』って感じだ。まぁ、基本的にギルドは来る者を拒まずなので、設置自体は許可されることだろう。でも、ギルドが国に治める税金や、有事の際に関する取り決めは別の話になる。

 その取り決めをいかに有利に進めるかがポイントだね。



「さ、入るわよ」


「はい」



 マリナさんと共に理事長室へと赴き、ノックの後に返事も待たず入る。すると、内部では資料を片手に何かしている老害……じゃなくて理事たちがいた。疚しいことでもしていたのか、慌てて資料を隠している。



「貴様マリナか。ノックをしたら返事ぐらい待て」


「別に隠さなければならないことなんてないでしょう? まさか、不正をしているわけでもあるまいし」


「失礼だぞ貴様! それに来客がいたらどうするつもりだったのだ!」


「私は本部のギルドマスターよ? 今日は理事の方々に来客がないことぐらい知っているわ。それに、もしも私が知らない来客があれば、それはおかしなことなのよ?」


「……ぐむむ」



 理事へ来客がある場合、基本的には本部マスターを通さなければならない。それは一国の王であったとしても絶対だ。だからわたしもマリナさんを通してここに来ている。

 そして、もしもマリナさんを通さずに理事へと面会があった場合、不正が疑われても仕方ない。これは昔からあるギルドの取り決めなので、覆しようのない事実だ。流石はマリナさん。あの老害たちを手玉に取っている。わたしも見習わないといけないね。



「ちっ……マリナよ。今日は何の用だ。そこの『魔女』が関係しているのか?」


「そうよ。取りあえず用件だけ言いなさいルシア」


「はい」



 わたしが一歩前に出ると、理事たちは少し期待したような視線を向けてくる。以前から居提案されていたランク特Sへの昇格を了承したとでも思っているのだろう。でも残念、今日は別件だよ。

 わたしを理事直属とも言えるランク特Sにしたかったみたいだけど、お断りだ。



「わたしは新興国家【レオンハルト連邦】の代表として参りました。【レオンハルト連邦】に冒険者ギルドを設置したいと思い、つきましては各種取り決めをしたい所存です」


「通達に合った国か……」


「まさか『魔女』を代表に寄越すとはな」


「獣人の国だからだろうよ……忌々しい……」



 おい最後の奴。

 小声で言ったつもりだろうけど、わたしの狐耳にはしっかり聞こえているぞ。まぁ、こういったことも想定しているからね。一応は対策も考えている。最終手段でもあるからあまり使いたくないけどね。後で調整が大変になるし。



「返事はいかほどで?」


「よかろう。細かい話は後日で良いな?」


「はい」


「ではこちらである程度の取引案を決めておく。二週間後の同じ時間に来ると良い」


「分かりました」



 ま、今日のところはトラブルになるようなこともないでしょう。荒れるとすれば、次回の取引だ。どれだけ不利な条件を突きつけられるか不明で怖いわね。まぁ、新興国で獣人が相手だからって舐めた対応を取られれば、こちらにも考えがある。

 その時は保険が役に立つことだろう。

 まぁ、冒険者ギルド見極めのためにも良い試金石になるかな。

 いずれにせよ、二週間でこちらも【レオンハルト連邦】としての意見を統一しておこう。最悪の場合は人族全てを敵に回すかもしれないしね……









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