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女狐が異世界を調停します  作者: 木口なん
7章 魔界戦争
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128話 鍵?知らない子ですね

久しぶりです。

更新遅れました


 わたしとアザートスさんは今、スライムの国【ラグナハイト】の上空にいる。魔法による重力操作で空を飛んでいるから、地上のスライムにもバレない。現在は夜だから余計にね。

 光は月と星しかないから、滅多なことでは気付かれないだろう。

 念のために結界も張っているし。



「アザートスさん。それでどうします?」


「マキナはお前、その他が私。それに違いはない」



 マキナを倒すには私の『殺生石』が必要だからその人選で間違いない。でも、わたしはスライムに奴隷として捕まえられている獣人たちを助ける義務がある。スライムが作った都市はぶっ壊しても心が痛むことはないけど、間違って獣人が死んでしまったら罪悪感がヤバい。

 だから全力で助ける。



「とりあえず、わたしが行くよ。それで獣人を逃がす」


「どうするのだ?」


「潜入ミッションって奴ですよ! 幸いにも奴隷となっている獣人は一か所に集められているみたいなのでね」



 わたしとしては獣人が分散されて管理されていた場合を危惧していた。全員を助けるのが難しくなってくるからね。でも、幸いなことに一か所……中央の城みたいな場所で管理されているみたい。わたしの尻尾感知で獣人が持つ僅かな妖力を感じたから間違いない。

 霊域が消えて魔境化したことで獣人たちは魔力回路を回復させつつあり、さらに妖力回路も回復傾向にあるらしい。お陰で助かったよ。



「こっそりと侵入して転移ゲートで逃がします。その後、私がマキナを相手するので、アザートスさんは残りの幹部……ソレイユ、ゲル、クレイブを倒しつつその他のザコも掃除してください」


「それがベストか……」


「多分。じゃ、行ってきます」



 わたしはそれだけ言って重力を操作し、地上に降りていく。結界を強化したからわたしのことを認識することは出来ないだろう。

 獣人が閉じ込められているのは、中央にある城の側。そこにある巨大な立方体の建物だ。一つしかない入り口にはスライムの見張り番が一体いる。

 ふふ不用心だね。



(やっちゃいなさいギンちゃん!)


 ぷるん!

(わかった!)



 ここはわたしの使い魔ギンちゃんの出番だ。

 フードから飛び出た銀ちゃんは見張りスライムを一瞬で捕食し、能力、魔素、記憶までも取り込む。記憶の取り込みは上位種のみの特権らしい。ギンちゃんも成長したんだね!



「じゃあ、ここはよろしくね」


 ぷるるん

(任せて)



 記憶を捕食し、見張りに成りすましたギンちゃんを入り口に置けば完璧だ。さてと、では早速入らせて貰いましょうかね。

 結界で音を遮断しつつ、わたしは中に入る。内部は二階構造になっており、獣人たちは一階にある金属製の牢で四つに分けて閉じ込められていた。二階は多分、食料が保存されているのかな? 獣人が生きていくには食べ物が必要だし。

 中にも見張のスライムが数体いるので、透明に見える結界は外せない。

 さくっと暗殺しますかね。



「『殺生石』」



 スライムの生命エネルギーを食いつくし、一瞬で消滅させた。まぁ所詮は雑魚のスライムだからね。わたしからすれば大した敵じゃない。炎魔法で必死に撃退した昔が懐かしいわー。

 さてさて。

 感傷に耽っている暇はない。

 異変に気付かれると面倒なので、順番に全ての見張スライムを消していった。



「これで良しっと」



 あとは牢に閉じ込められている獣人を助けるだけだ。

 十字の通路で区切られた四つの牢は厚い石の壁で囲まれており、魔術陣を刻むことで強度と靭性を極限まで上げている。これだけの仕組みがあれば獣人と言えど、内部から破るのは難しい。

 牢から出るための扉は各一つずつで、厳重に鍵が占められている。



「これは魔法鍵かな? また無駄に高度なやつを……」



 魔法要素による施錠ができる魔法鍵は、結構面倒な仕組みになっている。扉に仕掛けを施すことも出来るので、不正な方法で扉を開けばアラート音で知らされるようになっている可能性が高い。さらにハッキング防止のために迎撃魔法回路が作られていたりするので、解除するには慎重にならざるを得ない。

 設計図があれば一時間。

 何も無しなら数日は解析したいところ。

 しかし、時間はないし、設計図なんてどこにあるのかもわからない。

 だからここはわたしのやり方でいく。



「『解呪ディスペル』」



 はい、余裕。

 わたしにかかれば魔術も霊術もこんなもんですよ!

 魔術には濃密な霊素を、霊術には濃密な魔素で疑似的な霊域や魔境と同じ状態にする。これによってどんな魔法も封じることが出来るって訳だ。今回は魔境なので妖力を使った『解呪ディスペル』だったけどね。勿論、アザートスさんレベルの大魔力持ちには無理だ。あとは滅茶苦茶精密な霊力魔力操作が出来る人にも通用しにくい。

 それはともかく、この程度の魔法鍵なんて障害にもならないって訳よ!



「おじゃましまーす」



 そういって扉を開けると、中には多くの獣人が身を寄せて固まっていた。同時に遮音結界を張り、騒がれても問題ないようにしておく。ここまでは基本だね。



「えーっと。助けに来たんだけど?」



 なんか凄い注目されたから、取りあえず敵意はないと示す。ついでに助けに来たということを強調しておいた。彼らはどう出るかな……?

 しばらくすると、代表と思わしき熊獣人のおっちゃんが出て来た。

 毎日のように過重労働をさせられているせいか、全身から疲労の色が見える。しかし、目だけは死んでいなかった。



「助けに来たってのはどういうこった?」


「いや、そのままの意味。ここを脱出させてあげるよ」


「またその手のゲームか?」


「ゲーム?」


「惚けんな」



 なにやら熊のおっちゃんは御立腹のよう。

 詳しく話を聞くと、それはもう胸糞悪すぎて今すぐにでもスライムを滅ぼしたくなるほどだった。

 奴隷として捕まえられている彼らは、不定期に牢から逃がして貰えるらしい。自分で目玉を抉り出せたら逃がしてやるとか、一番早く子供を殺せたやつから逃がしてやるとか、満足するまでスライムに侵されて正気を保っていられたら逃がしてやるとか……

 沸々と怒りが込み上げて来たよ。

 外道スライムめ!

 ならばこそすぐに助け出さなければならない。



「わたしは本当に助けに来ただけ。わたしは獣人を守護する者だから」



 これが一番効果的だろう。

 わたしは九本の尻尾をユラユラと揺らして見せる。

 九尾伝説は銃人族でも超有名な話だ。わたしが九百年前の九尾ネテルの意思を継いでいると見せつければ信用は得られるはず。



「っ!? 疑って失礼した九尾様」



 おっちゃんを筆頭に牢にいた全員が片膝をついて礼を取る。

 な、なんだと……っ!?

 そこまで仰々しくしなくていいんだよ!?



「取りあえず。脱出しようか」



 わたしはそう言って『加乗次元転位ディスロケーション』を発動し、ここから人族領側で最も近い町に繋いだ。つまり【イルズ騎士王国】の第四都市【ハリス】にね。

 あそこには『覇獅子レオンハルト』の本部もあるし、無事に保護してくれるでしょう。



「さ、通って」



 わたしが出したゲートを見て戸惑う人もいるかと思ったけど、流石は伝説の九尾様。ドン引きする程の信頼で嬉々としながら通ってくれた。なんか拍子抜け。

 ま、素直なのはいいことだけどね!

 これで一つ目の牢は完了だ。



「さーてと、次に行きますか」



 残っている牢は三つだ。

 どれも魔法鍵が仕掛けられているので、妖力版『解呪ディスペル』で突破。乾いた笑いが出そうになるほど呆気ない。これなら物理的な鍵の方が頑丈なぐらいだ。まぁ、そのときは『物質化マテリアライズ』の応用で鍵を妖術で自作できるけどね。

 そんなわけでサクサク解放。

 九尾の威光で皆さん素直でした。

 大体、奴隷として捕まっていたのは四百人ぐらいだったけど、転移ゲートを使えば余裕。

 問題は四つめの牢だったけどね。

 実はこんなことがあったのだ。



『ルシア?』


「あれ? とおさま、かあさま?」



 まさかの親子再会。

 そう言えば捕まってたんだよね。

 会えるとは思ってたけど、まさか一番最後の牢だとは。

 なんか好き勝手して生きてたからホントに久しぶりだわ。ついでに狐族の族長ことわたしのおじいさまも発見し、ゲートで逃がすことが出来た。色々と話したいことがあるんだけど、後でねって説得した。

 とりあえず、これでバレずに獣人は逃がすことが出来た。

 あとはマキナを見つけてぶっ殺すだけ。



「じゃ、ギンちゃんは適当に擬態して上に逃げておいてね。アザートスさんの巻き添え喰らうから」


 ぷるん、ふるるん

(着いていったら……だめ?)


「う……ごめんね。今度だけど一緒に遊んであげるからお願い」


 ぷるーん

(わかったー)



 ギンちゃんは少し悲しそうにして上空に行ってしまった。

 擬態したソウルリーパーの背中から哀愁が漂ってくる。

 ごめんよ。

 早めにマキナ倒すから。







感想で質問があったので、後書きにも載せておきます。

飛竜と地竜の原種に関することですね。プラスして生態も簡単に載せておきます。


原始母竜マザードラゴン

 見た目は飛竜で漆黒の竜鱗。頭から尻尾までは五十メートルほど。魔法によって空を飛ぶことが出来るので、物理学を無視した飛翔が可能。かなりの知性を持っている。

 飛竜系の竜種が有している能力は『肉体変化』

 通常は大きさを変える程度だが、原種にもなれば人型になることも可能。ただし、基本的に他種族を見下しているので、自分に勝利した種族にしか肉体変化を使おうとしない。魔王アザートスに敗北したことから、現在の原種は魔人の姿には変化する。



神地王獣ベヒモス

 見た目は四足歩行の草食恐竜みたいな感じ。暗い色の竜鱗に守られている。大きさは頭から尻尾まで五百メートル以上。あまりにも体が大きいので、魔素の濃い場所(魔境クラス)でしか生きていけない。知能は低く、基本的には獣と同レベル。

 地竜系の竜種が有している能力は『魔脈接続』

 大地を流れる莫大な魔素の流れに接続し、魔素を吸収することが出来る。これによって肉体を強化し、重すぎる体を動かしている。空気中からの吸収も可能。

 地竜種はこの魔脈にそって大地を移動し、安住の地を見つけると生殖活動と子育てに入る。生態は獣と同じレベル。

 原種ともなれば流石に魔境クラスに魔素の濃い場所でなければ安住の地として認めず、侵入者があれば容赦なく撃退する。




 あと、竜種全体の固有能力としてブレス攻撃を有しています。魔素を収束して破壊の因子を乗せて放つことで対象をぶっ壊します。

 属性持ちの竜はこのブレスにも属性を乗せたりしますね。

 ちなみに地竜と言っても土系の属性持っているわけではなく、大地を駆ける竜種という意味ですので、火属性の地竜もいます。

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