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女狐が異世界を調停します  作者: 木口なん
1章 特別な存在
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11話 900年の時を越えて

霊域が消失する少し前になる。

ルシアは事件キスの後、特大の『火球ファイヤーボール』をぶっ放して逃げた。




あわわわわわ

やってしまった

まさかルークとキ、キ・・・・


きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ


もう顔なんかあわせられないよぅ


いや、落ち着こう。相手はお子様ルークだ。問題ない。

深呼吸しよう。

すぅー はぁー


よし、落ち着いた。


うぅ・・・でも今更戻れる気がしない。

うん、今日は帰ろう。


ずいぶん遠くまで走ってきてしまった。

ちょっと帰るのが面倒な距離だ。




「――――――っ!!」


すごい勢いで霊力が動いている。

いや、空間中では霊素になるんだったな。

霊素ってのは風で動いたりするようなものじゃない。

ということは、誰かが何かをやらかしてるに違いない。


尻尾感知を全開にして、霊素が流れていく方向に走る。


(くっ、遠い)


わたしの速力は時速20kmぐらいだ。

普通に自転車より速いけど、大人たちに比べれば大した速さじゃない。

獣人の身体能力のスペックはとんでもないが、まだわたしも子供なのだ。






突然の閃光

次の瞬間に訪れる爆風に足をとめる。


(いったい何なの?)


周囲の木々は葉を散らし、細い枝は容赦なく折られる。

前方からいろんなものが飛んできて痛い。

いやちょっとまって、ほんとに痛い痛い痛い。


ようやく衝撃も収まり、周囲に静けさが戻る。

風が止み、周囲から生き物の気配がしない。

だけど、それ以上に妙な違和感がある。なんというか、そう、安心感が削り取られたようなそんな違和感が立ち込めている。


いや、そうか、周囲に霊素がない。欠片も感知できない。今まで霊素に囲まれて育ってきたから、すごい違和感を覚えたのだ。まぁ、『霊域』だからこそ空間中に霊素が浮遊してるのであって、普通はそんなことにならないと聞いている。あれ、じゃぁ・・・


「森の加護が――――――消えた?」


全力で感知するがまるで霊素を感じない。それは『霊域』としての加護が失われたことを意味する。


「・・・とりあえず爆心地に行ってみますか」


おそらくヒントぐらいは残っていると思う。

再び地を蹴って駆け出す――――――――





しばらく走ると木々が根こそぎなぎ倒されてた。

「森をこんなに・・・」

走るうちに内から黒い何かが湧き出るような気がした。怒りともいうような波動が駆け巡る。

爆心地が近いのだろう。前世でこんな感じの画像をみたことがある。

隕石が落ちたときとかが、こんなんだった。だけど、周囲に焦げた匂いがしない。ということは隕石のように、熱を持ったものが落ちたり爆発したわけじゃない。

さっきの霊素の大移動が関係している。純粋な衝撃を生み出す魔法―――いや霊術―――が発動したと考えたほうがいいかな。








爆心地は遠目でも一目でわかった。

だって巨大クレーターができてたし。


尻尾感知をフル稼働させて警戒する。

走るのをやめて今はゆっくり近づいている。




・・・・・・・・・・・・・





なにも反応しない


巨大クレーターの端までたどり着いたが何も感じない。

クレーターの深さはかなりのものだ。

いや、クレーター内部にかすかな霊素の反応がある!


だがこれは霊力じゃない。

たぶんさっきの爆発の残滓みたいなものか。


『・・・ア』


うっ・・・頭痛が・・


『・・・ルシア』


頭痛がひどくなる。視界がはっきりしない。だが確かに聞こえた。

わたしの名前を呼んでいる。


『神子ルシア』


やっぱりそうだ。空耳じゃない。


『聞こえますか?』


あーはいはい聞こえますから

頭痛が酷いから静かにしてほしいけどね


『今はあなたに無理やり精神を同調させて魂に直接声をきかせています。頭痛はその影響です。ごめんなさいね』


なんでそんなことするのよ。普通に話しかけてよ。

もうフラフラで立っていられない。


『そうですね。直接お話ししたいのはやまやまなのですが、そうもいかないのです』


あ、やばいかも。

右手で頭を押さえ、左手で地面に手をつく。足はすでに座り込んでいる。


『わたしの身体は先ほどの爆発で消滅してしまいました。今のわたしは霊素の残滓に精神がくっつくことでなんとかこの場に残っている状態です』


つまり幽霊か


『それは正しい表現ではありませんが、時間もありませんので今はおいておきましょう』


さらに頭痛がひどくなる


『わたしは900年前の九尾の神子ネテルです。わたしが消滅したことで、霊域も消えました』


とんでもないことをサラッといったなこのヒト


『あなたはこれから人族のもとで生活するようになります』


・・・神子は予言もできるのだろうか


『予言ではありません。予測です。ですが九尾のあなたはどんな扱いを受けるかわかりません』


たしかに人族からすれば恰好の見世物になりそうだ。


『ですから、あなたの魂に「人化」の術を刻み付けます。痛くないので大丈夫です』


信用できないよ


『貰えるものは貰えば良いではないですか』


絶対痛くするでしょ・・・わたしは騙されない

痛くしないといったのに痛かった経験が豊富なんだから。主に前世の病院で。


『そっちですか。まぁ嫌と言っても無理やり刻み付けますから』


えっ・・・ちょっと


『はい、終わりました』


え?もう? というか何かしたの?


『あなたはもう「人化」が使えます。痛くなかったでしょう?』


そう・・・なんでわたしにこんなことしてくれたの?何が望み?


『恩を着せるつもりはありません。そうですね・・・同じ九尾の神子としての好意・・・ですかね』


ふーん。


『あなたはとてもおもしろい力を持っているようですね。あなたなら・・・魔族とも・・・・』




・・・・・・・・・・・





声が聞こえなくなって、わたしはそのままたおれた。





遥か遠く

戦いの声が聞こえた気がした






900年前の神子をようやく書けました(出番は終了ですが)

いままで「人化」を覚えさせなかったのはこのためです

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