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颯爽桜はマジやばい。 1

前回予告した通り全裸担当が登場です!

白磁のように白い肌、きゅっと引きしまったウエスト、そして豊かなバスト。

しかも登場時からずっと裸のままとか……!

皆さまの反応が、今から楽しみで仕方がございません(ゲス顔)

  

  †

 

 俺が『ヘッドバッド梶原』という不名誉な綽名を頂戴してから三日が過ぎ、我が科学部にちょっとした異変が起きた。

「うち、原田ユリいいます。よ、よろしくお願いいたします」

 改修の済んだ理科実験室の椅子に座って自己紹介をするのは、小柄な金髪の美少女だった。向かいに座る俺と桜の視線を受けて緊張し、縮こまっている。

「ふむ」と桜が組んだ手にその細い顎を乗せて言う。「入部希望者か」

 俺は眼前に置かれたビーカーを手に取った。中に入っている温くなったコーヒーを啜って、二人のことを見ていた。

 事のおこりは――といっても、そんな大仰なことはないのだが、つい十分ほど前のこと。いつも通りに桜はノートパソコンの画面と睨めっこし、俺は漫画雑誌を読んでいたら、原田ユリが部室を訪れた。

 なんだなんだと見ると、彼女は消え入りそうな声で、こう言ったのだ。

「あ、あのう。わたし、その……。入部、したいですけど……」

 次の瞬間俺と桜は顔を顔を見合わせ、次いで思わず同時に口走っていた。

「「――正気か、きみは!?」」

と。

それはさておき。

「あの、ご迷惑やったですか」

 縮こまって言うユリに、桜は「そうじゃないが」と答えた。

「確かに部員、募集をしていない訳じゃない。部として成立する規定人数は五人だしな」

「いや、うちはちゃんと五人いるだろう」

 桜の言葉に俺が突っ込んだ。俺と桜、美術部との兼部で杉山。あと会ったことのない幽霊部員が二人。

「何を言っているんだ達樹。いくら幽霊部員でも、非実在生徒より実在生徒の方が良いに決まっているだろう」

 当り前じゃないか、という顔で桜が言い放った。いや待て、幽霊部員って文字通り存在しないのかよ! でっち上げやがったなてめぇ!

 意味が判らずキョトンとしているユリに向きなおって、桜はワザとらしい咳払いを一つ。

「しかし原田さん。きみは、本当にそれでいいのか? 自分で言うのもアレだが、この部は、実に、何というか……きみの想像以上にアレだぞ?」

 いやホント自分で言うことじゃねーな。俺はふと壁の方に目をやった。そこに走っている線は、タイムマシンが屋上ごと抉り取ったのを補修した跡だ。

 うむ、確かにアレだよな我が部は。

 しかし……と、俺は補修の跡を見て、ふと思い出したことがある。

 あの事件で、屋上が抉れてこの科学実験室は文字通りの青空教室になってしまったわけだが、ホンの二週間足らずしか経過していないというのに無くなってしまった筈の天井が戻ってきている。

 たった十日かそこらで、半壊した建物の改修って済むものなのだろうか?

 俺には専門的な知識が無いのでどうにも判断がつかないのだが……謹慎明けの桜が、部室に入って来て内部を色々と調べ回り、『にまぁ……』って感じで笑みを浮かべていたのが妙に記憶に残って仕方がないのだ。

なんか、校舎の改修もあまり聞かない業者が格安で請けたとか噂も聞くし。

まあいい。

とにかく今は、目の前ことに集中しよう。具体的に言えば、勇敢と無謀を履き違えた新入部希望者である同級生のことだ。

お目付け役である俺は、桜の毒牙にかかる犠牲者を減らすべく努力するべきであろう。

「俺としても再考を進めるな。原田さんだったら、引く手あまただろうに」

「いえ、そないなことあらへんです」

 そう彼女は言うが、それが謙遜であることを俺はよく知っている。

 彼女はその容姿が示す通り、父親が日本に帰化したドイツ人と聞く。高校の進学を機に関西から引っ越して来た、金髪でハーフ、しかも関西弁美少女。日舞と茶道を修めているという大和撫子でもある。

 当然、彼女の入学は(桜とはまた別の意味で)学校中をにぎわせる事になった。

こんなハイスペック美少女となれば男子生徒どもが黙っていないわけで、入学式直後から彼女はあらゆる運動部から引きっきり無しの勧誘を受けていたはずだ。俺も野球やサッカーのユニフォームを来た野郎どもに彼女の行方を聞かれたことが何度かある。

ベンチに美少女マネージャーがいることによって味方に鼓舞を、相手側には戦意喪失を期待できるのだとか何とかバスケ部の奴が言っていた気がするが……むしろ相手の戦意高揚を誘いそうなものだがな。

「けど、ウチは運動音痴やし、ご迷惑にならへんかと思ってお誘いは全てお断りさせていただいとるんです」

 マネージャー業務に運動神経は関係ない気もするけどな、それ。まぁ本人がやりたくないことを強要しても仕方ない。

「それは判ったが……じゃあどうして科学部なんだ?」

 運動部でなくとも、それこそ日舞研究会とか茶道部とか華道部とか大和撫子同好会とか南石高校の美少女達を遠くから見守る会とか、彼女に相応しそうな部活動は公式非公式問わずありそうだけど。

「それは……」

原田さんはちらりと桜のほうを見て顔を紅くした。

「私がどうかしたか」

「いえ。……その、あのう……」

 少しのモジモジとしながらも、原田さんは言った。

「ウチ、颯爽さんみたいになりたいとです」

 その言葉を聞いて、俺と桜は顔を見合わせ、そして再度叫んだ。

「「――正気か、きみは!?」」


   †


 そんなこんなで新入部員を迎えた我が科学部であったが、活動内容は基本的に桜が何かやらかすということなわけだ。それに対し桜の暴走が手に負えないレベルになる前に何とかするのが俺の役目なのだが、問題が一つある。

 困った事に、桜が何をしていて何を造ろうとしているのか、傍からではさっぱり理解できないのだ。

「おーい、桜。これはここでいいのか」

「いや、それはあっちに頼む」

 初夏の日差しに汗をかきながら機材を乗せた台車を押す。乗っているのは桜愛用のノートパソコンと、用具室で埃を被っていたイスと机一式だ。他にも何に使うのか良くわからないコードやら機械類がごっちゃりと乗せられている。

「今日はえらい閑散としてはりますなぁ……みなさんどないされたのでしょう」

 寄って来たユリの言葉に俺は首を傾げた。

「いや、俺に聞かれても判らンなぁ」

 まだ日は傾いたばかりだというのに、放課後のグラウンドには科学部の面々しかいなかった。普段だったら運動部の連中が陣地争いをしつつ練習に励んでいるというのに。

 どーせ桜が裏で手を回したに決まっているのだが、俺はすっとぼけた。どうやら彼女は桜が学校全体に黒い影響力を持っていることを知らないらしいから、敢えて教える事もないと思ったのだ。

入部動機が桜のようになりたい、という原田ユリ。彼女は昔から地毛であるその金髪で良くも悪くも目立っていて、それが凄く嫌だったらしい。子どもというのは無邪気に残酷だから、ひどいイジメ……とは行かずとも散々からかわれたそうな。

そんな子ども時代を送るうちに内気な性格になってしまった彼女にとって、校舎を半壊させても堂々としていられる桜は衝撃の存在だったという。以来、桜に対して憧れを抱いたユリは、居ても立ってもいられずこうして科学部へとやってきた訳だ。

まぁ、誰にとっても衝撃的な出来事ではあっただろうけどな、精神的にも、物理的にも。

俺は内心で溜息をついた。まさかあの事件、校舎をぶっ壊すに飽き足らず同級生の人生を踏み外させる切っ掛けになるとは。ならば俺が、ユリがこれ以上誤った方向に進んでいかないように気を配らねばなるまい――そう思うのだが。

誰が誰に憧れようが、それは個人の自由だ。余人が立ち入るべきことじゃない。だが、相手は選ぶべきであるとは思う。そして選んでしまったならばその瞬間に終わっていることもあるかもしれない。俺は無力だ。

自分勝手な無力感に苛まれつつ、ユリと協力して台車から機材を降ろす。

普段よりだだっ広く感じるグラウンドの中央には、桜がいて何かの部品を組み立てている。その隣で助手をしているのは杉山である。あいつなんだかんだでコッチに顔出す事多いよなぁ。

「それで、桜さんは一体何を造られてはるんでしょうか?」

「いや、俺に聞かれても判らンなぁ」

 若干戸惑い気味なユリの問い掛けに、俺は先ほどと同じ答えを返すしかない。

 違いがあるとすれば、とぼけたさっきと違って、今度は本当に俺にも桜が何をやっているのかわからないということだ。

 桜が屈みこんで何やら機械を組み立てている。それはいい。

 問題はその隣にある、初夏の陽光に照らされながらも堂々と直立する筋骨隆々の裸像だった。

 誰だって一度は写真を見たことはあるだろう、ミケランジェロのダビデ像。当然レプリカなわけだが、己に自信があるのか腰布一枚纏う事すらせず神聖な学び舎を背に校庭に聳え立つその姿。隣にはまるでかしずくような姿勢の少年少女。なんというか、この光景そのものが最早ある種の前衛的芸術にさえ見えてくるな。

 ていうか、宗教?

「シュールな光景やわ……」

「全くだ」

 ダビデ像は、つい先ほどアメリカから届いたばかりだ。桜があっちで所属していた研究所謹製とか言っていたが、あいつはアメリカで一体何を研究していたのだろう。

 手も空いたので、俺とユリは桜の傍へと移動した。

 さて、現在絶賛露出プレイ真っ最中のダビデ像だが、他に目を引くものといえば、プラスチックだか合成樹脂だかで出来た薄くて長い板。二メートル以上の長さのそれが四枚ある。その横に並んで置かれている物も気になるな。バイクに乗るとき使う、フルフェイスのヘルメットだ。

「なんに使うんだ、こんなモン」

「勿論被るに決まっているだろう。それ以外の使い道などあるまい」

 桜が反論した。ごもっともな話だが、荒れていた中学時代の俺は、ヘルメットと言えば頭に被るよりも頭に叩きつける鈍器として活用した回数の方が――。

 いや、過去のことは振り返るまい。

「ヘルメットを被るのはいいとして、桜。その、長い板は一体何なんだ?」

 というか、この間のタイムマシンといいお前が造るものは一見してわかりづらいものが多いな。

「そうだな、これは翼だ。……ちょっと持って支えていてくれないか」

 翼?

 言われるままに、翼のうちの一枚を持ち上げる。板は長くしなっているが見た目ほどは重くはない。作業がしやすいように、桜が作業しやすいように位置を移動した。

「そのまま持っていてくれ、達樹」

 そういうと桜は板の片側を何かの機械に固定したまま、杉山にも同じ指示を出した。機械を挟んで俺とは反対側に立つ杉山。

 それをもう一回繰り返して四枚の翼を固定した機械をヘルメットに乗っける。ベルトやら金具やらでガッチリ固定。ちゃんと連結しているか確認したが、俺の力くらいではビクともしない。高所から地面に叩きつけるくらいしないと、機械とヘルメットが外れる事はなさそうだ。

 そこまで確認すると、桜は俺たち三人に向かって言った。

「では、始めるとしようか」

 す、と桜が手の平を上げる。なんだ、ハイタッチでもするのか? そう思った直後、開いた手はピースの形になった。

 そしておもむろに、桜はその指を――鼻の穴にツッコんだ。思いっきり、指の根元まで。

 俺の後ろのダビデ像の、鼻の穴に。

「なにッ……」

 いったい、何を!?

「まったく……どうしてこんな起動方法にしたのか理解に苦しむ」

 理解に苦しむのはお前の突発的なその鼻フックだ。

 大きくぐらついて、倒れるダビデ像。

 呆気にとられる俺たち。何事かと思った直後のことだ。

『あっ痛ぅぅぅ……。くぅぅぅ、キくう』

 電気的な合成音とともに、ダビデ像が、なんとその裸身を起こしたではないか!

 目を丸くし、大口を開いて呆然とする俺と杉山、そしてユリ。

『ああ、桜の姐さん。お久しぶりっス! おかげでバッチリ目ェ覚めましたわ』

「うむ、きみも変わらないようで何よりだ。ダニエルは元気か?」

『いやぁ、ダニーの旦那はアレですな。姐さんが日本戻ってからしばらく目も当てられないほど落ちこんどりましたぜ』

 ハッハッハ、と全裸が笑った。

「さて、みんなに紹介しようか。こちらはダビデ像の……おや。どうして固まっているのかね、達樹」

 不思議そうに首を傾げる馬鹿が一匹。それを無視して、俺たちは叫んだ。

「「「う、動いたァァァァァァッ!!?」」

  


と、言うわけで

白い肌に豊かなバスト(胸囲)を誇る、全裸担当のダビーくんの登場回でございました。


全裸(女性とは言ってない)。


ねくすと → フライング全方向全裸。


やばい、自分でも言っている意味がわからない。

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