触れちゃった
「あれ、これじゃお酒が足らないね!」
「えっ、まだ飲むのヒロコ!?」呆れるミユキ。
「俺コンビニまで行ってくるよ」
「ついでにアイスクリームも頼む」とオサム。
「はいはい」
そう言ってタカシは部屋を出た。
「ロサ、お酒もうないの?」とクレ。
「もうないわよ!」
「買ってきて!」
「嫌よ」
「お願い~い!」
結局買いに行かされてしまうロサ。
ビールに酎ハイ、それと柿の種にビーフジャーキ・・。タカシは次々とカゴに放り込んでいった。
「あっ、アイスクリームもか!」
タカシはアイスクリームの棚の扉を開けようと、取っ手に手を伸ばした。すると同じタイミングで、もうひとつ白い手がそこに伸びてきた。そして、二つの手は一瞬重なった!
「ごめんなさい!」
「いえ、こっちこそすみません」
そして目が合った・・。
「あっ!」
「あっ!」
二人は至近距離でフリーズした!
「あのーすみません、そこ退いてもらえますか!」
他の客のその言葉で、二人はやっと体を動かすことができた。
何でこんな所でまで会っちゃうのよ!?でも、嬉しい。このコンビニに来るということは、家が近いのかなあ・・。そんなことを思いながら、会計を済ませコンビニを出たロサ。
タカシは迷わず後を追い、思いきって声をかけた!
「あのー・・ロサさん!」
「えっ?!」ロサの心臓が一瞬鼓動を停止した。
「ロサさんですよね・・」
「はい」ロサは振り向かずにこたえた。
「あの・・」
その時タカシは、酒の力を借りて言ってしまおうと思っていた。あなたに恋をしてるみたいだと・・!
しかし、そんなタカシの言葉を遮るように、ロサは言葉を発していた。
「運動会、1番だったね!おめでとう」
「えっ、運動会来てたんですか?」
「うん」
「全然知らなかったな」
「目の前で応援してたのよ!4人で・・」
「そうだったんだ」
ロサはこれが限界だった。これ以上言葉を交わしたら、取り返しのつかないことになりかねないと!
「じゃあこれで」ロサは言った。
そして足早にその場を後にした。
「ロサお帰り、遅かったね」とクレ。
「・・・」
「ん?ロサ、ロサ!」
「・・何?」
「何って、どうかしたの?ボーッとしちゃって」
「うんん、なにも・・」
「ロサ、あなた本当に嘘つけない娘だねー」とロサの顔を覗きこむラネ。
「なんだかすごく嬉しそうよ、ロサ」とユカまで。
「何があったの?白状しなさい・・」迫力のクレ。
「実はさ・・」
「えー!タカシに触れちゃったの」驚くクレ、ユカ、ラネ。
「ほんの一瞬よ」
「一瞬でも、あなたの毒は最強なのよ!」とユカ。
「大丈夫よ、ちゃんと手袋してたから!」
「なんだ、おどかさなおでよ・・」
「それで、何か話したの?」興味津々のラネ。
「うん」
「もしかして告白されちゃったの!?」叫ぶクレ。
「まさか・・」
でも、あの時彼は何か言おうとしてた!私はそれを聞くのがなぜか怖くて、途中でわざと言葉を挟んだんだ。
「買ってきたぞ!」
「サンキュー」そう言ってヒロコは、缶ビールのふたを開けた。
「タカシ、何かあった?」とミユキ。
「いや・・」
「そう・・」ミユキはタカシの瞳を見つめていた。