king of kinds
「ふうっ・・おさまったわ」
「よかったねヒロコ」ミユキはそう声を掛けた。
「だけど何で急にポツポツが出たかなあ?変なものでも食べたか・・」ちょっとからかい気味のオサム。
「アルコールは控えた方がいいかもよ」とミユキ。
「そうだな!ソフトドリンクでも頼もうか?」とタカシ。
「えー、そんなのつまんないよ!私だけ・・」とすねるヒロコ。
「じゃあゆっくり飲みなよ」
大のお酒好きのヒロコが、こんなことぐらいでアルコールを諦めるわけもなく・・そんなことはミユキもよくわかっていた。
「あの娘治ったみたいね」ロサはちらっとヒロコを見て言った。
「ちょうど10分でしょ!」とクレ。
「・・ねえ、なんかさ、すごくいい匂いしない?」ユカは鼻をクンクンさせている。
「もうユカ、品がないわよ!・・でも本当、いい匂いだね」ラネもつられて鼻をクンクンさせている。
「これってもしや・・・」そう4人が声を揃えたとき、それは隣のテーブルに運ばれてきた。
「はい、お待ちどうさま。松茸の土瓶蒸しです!」湯気がほのかにたっている。
「うおーいい匂い!」タカシは鼻から息を思いきり吸い込んだ。
「キノコの王さまは、やっぱり松茸ね!」ミユキは笑顔満点だ。
「King of Kinds 」とおどけるオサム。
「何よそれ・・さあいただきましょうよ」とヒロコはおちょこをとり、中を覗き込んだ。
「キー!何がking of kinds よ。私の方がよっぽどking of kinds だわ」とクレ。
「毒持ちだけどね」ラネはそうさらりと言った。
「あのスープにかぼすを一滴たらすと美味しいのよね!」
「えっ!ロサ、土瓶蒸し食べたことあるの」とユカ。
「もちろんよ!」
「それって共食いじゃない 」恐怖におののくユカ。
「そんなこと言ったら人間も同じよ。豚とか牛とか同類の哺乳動物を食べるんだからさ!」
「ああ、そうだね」
「ねー、私達も頼まない土瓶蒸し!?」とラネ。
「それいいわね」
「でもあれそうとう高価だと思うよ」
「いくらなの?」
「一万円とか・・」
「げっ、そんなに・・」
「・・仕方ない。視覚と嗅覚だけで我慢するか」ラネは残念そうに言った。
そして4人は、隣の土瓶蒸しをジーっと見つめることにした。当然呼吸は鼻からだけで・・。
「ん?タカシ、あいつら見てみろよ・・」オサムが隣のテーブルに視線を向けた。
「なんか猫にマタタビだな」
「言えてる!」
タカシの言葉にミユキもヒロコもクスッと吹き出してしまった。
「あっ、また笑ってる」とラネ。
「もう放っておきなよ」とロサ。
「そうよ、私達は私達でこのスルメを美味しくいただきましょう」とユカ。
「じゃあもう1回乾杯だね!」とクレ。