創造神からのプレゼント
まだまだ超展開が続きます。サラッと受け流して頂けると幸いです。
‐本当に良いのかい?‐
目の前の竜がもう何度目かもわからない確認をしてくる。
「何度も言ったぞ。俺はアナンタと契約する」
そう。この竜には名前がある。
あの後自己紹介をお互いにしたのだが、アナンタはただの竜ではなかったらしい。
『無限竜アナンタ』といい、不死の竜種らしい。この不死だが、アンデッドやヴァンパイア等と違い、弱点のない正真正銘の不死である。例え身体が消滅したとしても、長い年月をかけてでも再生するらしい。
同時に、この不死能力があったから呪いを今まで封印し続けることができたのだと教えてくれた。
その点俺の自己紹介は簡潔だった。
「黒谷渚だ。二十歳で異世界から来た」
これだけ。流石に異世界から来たことを告げた時は疑われたが、一般常識が欠如している事や、この世界では一般的ではない知識について色々知っている事を知ると、徐々にだが信じてくれた。
‐駄目なら死ぬことになるのだよ?‐
「わかってる。例え死んでも後悔はないよ。それに、何故か絶対に成功する気がするしね」
そう。絶対に成功する。これは何故かはわからないが、契約しようと伝える辺りで成功すると確信していた。
‐……わかった。君を信じるよ‐
で、肝心な契約方法だけど、契約したい相手の身体に触れながら呪文を唱えれば完了らしい。唱え終わって契約士が正気で生きていれば成功だし、廃人になっているか死んでれば失敗だ。わかりやすいな。
「じゃあ早速契約と行こう……グッギッ!?」
言いかけて頭痛がした。それも尋常じゃない痛さだ。まるで頭の中で鼠か虫でも暴れまわっているような、とにかく形容しがたい凄まじい頭痛だ。
‐なんだ!? どうした! おい、どうしたんだ!!‐
「が……あっ!! あああぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!」
‐まさかもう契約を!? 器が足りなかった!? いや、そんな様子はなかった……!‐
◇
意識が戻った時、俺は真っ白な何も無い空間に漂っていた。
周囲を見渡すが何もない。アナンタもいないし、自分の身体を見る事もできない。まるで意識に直接視覚を取り付けたような、妙な感覚だ。
「あ、やっと繋がった? 僕の声聞こえる?」
どこかからか声が聞こえる。
子どもの声……?
「あ、失礼な奴だな~。僕ってばこう見えても神様なんだよ?」
神様?
「うん。正確に言うとこの世界の神様。創造神なんだよ! 凄いでしょ!」
あ、はい。ただ、姿は見えないので何とも判断付きませんが、案外声からして幼い印象を受けますね。
「あ、そっか。まあ気にしなくていいよ。声に関しては大体合ってるかな。見た目は僕子供だし。てか自分で言うのもなんだけど、信じるの早いね。もっと疑われるかと思ったけど」
半々くらいでしょうか。ここ二日間で不可解な現象しか起きていませんし、神様がいたとしても不思議じゃないですし。
「なるほどね。まあいいや。その内嫌でも信じることになると思うし」
え?
「なんでもないよ。ところで、君がなんで違う世界に来たのか気にならない?」
!!
知ってるんですか!?
「そりゃ神様だからね。あんなにマナが一カ所に集まれば、そりゃ目に付くよ。あ、マナってのは君に解りやすく表現するとMPの素だよ。あと魔力が異常な程高まってたね。恐らくこっちの世界から君の世界に魔法で干渉して、一種のトンネルを作ったんだね。そこから君を連れ出したんだろう」
一体誰が……何の為に?
「連れ出した本人の事を君は既に一度見ているはずだよ。あの仮面の人間さ」
!
あの人か……。あれは誰なんですか?
「さあ? 僕にもわからないんだよね。気付いたらこの世界にいて、気付いたら君の事を召喚していた。詳しく調べようと思っても全然わからないんだ」
創造神なのにわからないんですか……?
「例えばだけど、僕は君の事が全然わからない。これは君が僕の作った世界と別の世界から来たからなんだ。で、全く同じようにあの仮面の人間の事もわからない。この意味がわかるかい?」
あの人も……。異世界人って事ですか?
「うん。でも絶対とは言い切れない。一つ言える事として、あの人間は世界を滅ぼしかねないとても危険な人間だって事だ。異世界から人間を召喚するなんて僕でもできるかどうかわからないよ」
そんな危険な人がなんで俺なんかを召喚したんでしょうか。
「さあ? 本当に僕も全然わからないんだよ。だから君に協力してほしいんだ」
協力?
「そう。あの人間の事を可能な範囲でいいから調べて欲しいんだよ。君が協力してくれるなら、僕から君に幾つかプレゼントをあげるよ。どうだい?」
調べるだけでいいんですか? 戦ったりとかはしなくていいんですよね?
「もちろん。受ける意志さえあるなら、実際に調べるのはいつになってもいいよ。受けてくれるかい?」
まあそういうことなら。俺もなんで召喚されたのか、なんで殺されそうになったのか気になりますし。
「うんうん、ありがとう。それじゃあ早速プレゼントだ。『神眼』っていって、その名の通り神の眼の一部をあげるよ。物や人なんかの色々な情報が見えるようになるんだ。僕はこの目を使って世界を見ているんだけど、ちょっと人間の君にとっては見え過ぎちゃうから機能の一部は制限させてもらうね」
見え過ぎると問題があるんですか?
「そりゃ、そこら辺の人間を見るだけでその人間のそれまでの人生だったり趣味趣向やら性癖、その時考えてることまで全部見ちゃうからね。僕なら見たい情報だけ見れるけど、君だと恐らく使い熟せないと思うよ。最悪情報量が多すぎて脳が焼き切れちゃうんじゃないかな」
そんな恐ろしい物いらないです!
契約といい、メリットよりデメリットの方が大きい気がするんですが……。
「そのために機能を制限するって言ったろう? 心配しなくても君に負担になるような事はしないさ。あと情報に関してなんだけど、君に合わせて見えるようにしてあるからね。ほら、TVゲームのRPGとかいうやつ。あんな感じで簡易的に相手の強さを数値化して見えるようになるから」
なんでTVゲームの事知ってるんですか……? もしかして意外とこっちの世界の科学技術って進んでるとか?
「君がこっちの世界に来た時に使ったトンネルを辿って、君がいた世界が何処かをまず調べてね。その世界の創造神と接触したんだよ。で、事情を説明して君のいた世界の文化を収集して、それに合わせたって訳」
わざわざありがとうございます。でもなんでまたそこまで?
「さっきも説明したけど、あの仮面の男をなんとかしたくてね。まあ、端的に表現すると君を利用するつもりな訳だ」
俺として助かるので、利用されるのは構いませんけどね。
「その意気だよ! じゃあ次のプレゼントだね。正直君はとっても弱いでしょ? だからちょっとだけステータスを強化してあげる」
強化ですか……。ありがたいですが、使いこなせないって事は無いですか?
「その辺りも大丈夫さ。上手く調整するから気にしなくていいよ。強さの基準としてはSランクの冒険者くらいかな」
Sランクの冒険者?
「そそ。この世界には冒険者ギルドがあってね。強さや功績に合わせてランクが上がる仕組みになってるんだ。ランクはF~SSSランクまであって、君は強さでSランクに上がった冒険者程度のステータスにしておくね。一応上にSSランクとSSSランクがいるから最強じゃないから注意してね?」
あんまり強くなっても持て余しそうですし、それで十分です。
というかSランクでも十分持て余しそうです。
「まあまあ。強いに越したことはないよ? いざって時は身を守らないといけないしね。あの仮面が襲って来た時に身を守ることだってできなきゃだろう?」
……確かに。
「ま、あんまり気張らなくても大丈夫さ。一応あの仮面に見つからないように君の事は隠蔽するから、向こうから寄ってくることはないと思うよ」
何から何まですみません。
「ま、その分働いてもらう訳だしいいよ。あと、君をあの仮面から逃がすのと、今のプレゼントでこっちからの干渉は当分できなくなるからね。隠蔽にも力を裂くから……」
わかりました。色々ありがとうございます。
「じゃ、そろそろこうやって会話するのも限界みたいだし頑張ってね」
そうして俺は、再び意識が遠退いて行くのを感じた。
Sランク=人外に片足突っ込んだ程度です。
SS・SSSランクになると化け物ですね。
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