表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

中篇

「幽霊は、なんて言ってる?」

「言葉じゃないんだよ・・・難しいんだけど・・・」


遙が受信する情報は、感情や映像といったものが多いらしく、

それらをパズルのように組み立てないと、「幽霊」が何を言わんとしているか理解できない。

はっきりと言語として聞こえるわけではなく、

言葉を聞いたあとの「余韻」のような感覚が頭の中に残る。

だから、「幽霊」が何を伝えたいのかは、非常に集中力を要するのだ。


「雅也、昨日冷蔵庫に入れてきた私の分のプリン食べたでしょ。」

「・・・ごめん、2つ全部食べちゃった。そんなことも分かるのか?」

「幽霊が教えてくれるたんだよ。」


他にも雅也しか知りえない情報を、遙はいろいろ知っている。

でも、雅也が「恥」と感じる部分は決して遙は触らない。

だから遙の言う事に、雅也は「真実」を感じる。


「結論を言うとね、雅也これから大変なんだよ・・・」

「・・・もう大変な事になってるから。」

どのような話を聞こうと、これ以上の混乱はないだろう。


「明日か、明後日か・・・雅也死んじゃうんだ。」

「なるほど・・・・」

「驚かないの?」

「十分に驚いている・・・」


実際、「近日中に貴方は死にます」という予告状をもらって、

本当に死んでしまう人など皆無であろう。

しかし、ことごとくの千里眼を目の当たりにしたのでは、

まったく信じないわけにはいかなかった。


「俺にそんな話をしたって事は、それを・・・つまり、

死んでしまう事を回避できるから教えてくれた訳だ。」

「当たり前じゃない、本当に死んじゃうんだったら、教えないほうが幸せだわ。」


遙には血だらけとなり横たわる雅也のイメージが受信されている。

最初は横たわるだけのイメージだったが、集中するにつれ、

何故そのような事になったのかが理解できた。


「いい事と、悪い事を話さなきゃならないけど・・・」

「あぁ、悪い方からにしてくれ・・・」


雅也は、「死ぬ」と予告されているのだ。

いかなる悪い情報でも、それ以上の衝撃など無いだろう。

嫌な事は早く済ましたい。


「これは、何日も前から感じていたことなんだけど・・・」

雅也の住むアパートの住人が、幽霊にとりつかれているのだと遙は説明する。

雅也のアパートを訪れるたびに、強烈な「思念」を残した「霊」であることがわかったが、

遙はかたくなに「拒絶」することで、電波の受信を拒んでいたのだという。

同時に、とりつかれた住人の「生」が弱まっていく事も感じた。


「どこの誰かはわからないんだけれど、自殺するんじゃないかって思うの。」

「つまり、死ぬのは俺じゃないのか?」

「でも・・・関係はあるみたいなの。」

遙の瞳の色は、彼女の不安を映し出す。

「それがどういうメッセージなのか分かんなくて悩んでたんだ・・・」


アイスコーヒーのグラスが乾いた音を立てる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ