表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/42

2話 山賊

 息を殺し、気配をひそめる。


 さきほどから鳴り止ことを知らない心臓の鼓動がいやにうるさく感じられる。ヴァルトは伏せった姿勢のまま、生い茂る下草の隙間から前方へと視線をやった。すぐ目の前の獣道を歩いていく男たちは騒々しく会話しており、周囲に注意をはらう気配はない。


 昼間だというのに酒を飲んでいるためだろうか。

 赤ら顔をした男たちの背にはそれぞれ、凶悪な形をした斧や剣が担がれている。

 その刃の先端に赤いサビが見えたような気がして、ヴァルトは背筋に冷たいものが走るのを覚えた。


 やつらは山賊だ。


 村にいた頃に何度か話を聞いたことがある。無法に人を傷つけ、他人の財産を奪っていく連中を賊と呼ぶのだという。ヴァルトの村は貧乏であったため襲われることもなかったが、思えば幸運なだけだったのかもしれない。


 もし山賊が襲来したら大人たちだけで立ち向かえただろうか。

 額を汗が伝って、目に入った。ヴァルトは反射的に目をこすろうとしたが、すんでのところでとどまった。いま動けば彼らに発見されてしまう。


 荷物は旅に必要なもの以外は持っていない。裏を返せばすべて大事だということだ。山賊に没収されてしまったら旅を続けるどころか、村に引き返すことさえできなくなってしまう。


 ヴァルトがまだ幼い頃にいなくなった母の行方を調べて一緒に村へ帰る。

 その悲願を達成するまで、道半ばで力尽きるわけにはいかないのだ。


 幸いなことに男たちは歌を歌いはじめた。耳をふさぎたくなるようなだみ声で、おまけに音痴だ。横ではきっとジョスランが顔をしかめていることだろう。彼は汚いものや下手くそな歌が大嫌いなのだ。

 それでも上機嫌に歌っている間は茂みに隠れているヴァルトたちの存在に気付く可能性は低くなる。

 酔っぱらいの山賊集団と出会ってしまったのは不幸だったが、いくらか運は少年たちに傾きつつあるようだった。


 足音からして数は二十人くらいだろうか。

 彼らはヴァルト一行の潜んでいる茂みのすぐそばを陽気に進んでいく。きっと戦利品があったのだろう。無駄に大きな話し声は、耳を澄ますまでもなく聞こえてきた。


「あの野郎のまぬけづらったら笑えるよなあ!」

「何度思い出しても最高だ! 土下座して『許してください』って頭下げてよ、偉そうな爺が泣いてやがった!」

「金ほしさに護衛代をケチるから罰があたったんだよ。盗んだのは俺たちだけどなあ! だはは!」


 雷鳴のような笑い声。

 どうやらどこかの商人から金を巻き上げてきたところらしい。ヴァルトたちのように身ひとつで旅をするならともかく、商人は護衛を雇うのが常識だ。それを怠ったために山賊たちの餌食となってしまったのだろう。


 可哀想なことだ。ヴァルトは見も知らぬ商人に同情した。

 お金があるなら使えばいいのに。欲にまみれた人が、同じように欲にまみれた人々に虐げられるのは、なんとも皮肉な状況だった。


「こんな日は酒がうまい! あの野郎ぶどう酒も隠してやがったが、そいつは大将が持っていっちまったからなあ、あとで分けてくれねえもんか」

「ムリムリ、大将の性格じゃぶどう酒どころか、銅貨一枚だってくれやしない。こうして酒が飲めるだけでもありがてえってもんだ」

「俺たちも強欲だが、大将は磨きをかけて強欲だからな!」


 ふたたび耳が張り裂けそうな声量で笑い声を立てる。となりから微かにジョスランのうめきが聞こえてきた。

 あとすこし我慢すれば通り過ぎる。ヴァルトは何事もなく終わるよう天に祈った。


 足音が近づいてくる。おうとつの多い地面によろめきでもしたら、茂みに隠れている三人を簡単に踏みつけられる距離。ヴァルトはかすかな呼吸音さえも忍ばせて、危難が去ってくれることだけを願った。


「――あーあ、笑いすぎて喉がいてえ。こんなときには酒だな!」

「飲み過ぎて足元がふらつくが、こんなときにも酒だ!」

「なくなっちまったぞ、次を出せ、次!」

「早すぎんだよ! この酔っぱらいが!」

「お前も酔っ払いだろうが!」


 山賊の会話にほとんど意味はない。

 村の大人たちも酒を入れてからは支離滅裂なことを口走っていた。この前酒を飲んだときは気分が悪くなるばかりで、どうしてこんなものを好んで摂取したがるのかさっぱり理解できなかった。

 酔っ払う楽しさがわかる日はくるのだろうか。

 ドニだけは、すでに大人が知っている楽しげな境地に達していたみたいだが。


「なくなった酒は、捨てる!」


 歌うように一人が叫んだ。まずい予感がする。ぶん、と風を切るような音が頭上から聞こえてきたかと思うと、ヴァルトのすぐ横に落下した。


「うっ!」


 酒瓶の直撃を後頭部に受けたドニがにぶい悲鳴を漏らす。さぞかし痛いだろう。ヴァルトは涙目になっているだろう友人のことを想って同情した。

 山賊たちは不幸ばかりもたらす。さらに悪いことに、男たちのひとりはドニの小さな悲鳴を聞き逃さなかった。


「んんー? こっちから変な音がしたぞ」

「気にすんな気にすんな! どーせ酔っ払って幻聴を聞いただけだ!」

「いーや、おかしいような……」


 酔っ払っているくせに用心深い。よろめきながらも近づいてくるのを感じる。視線を下に落とせば、荷物に勘付かれてしまうかもしれない。


 まずい。とてもまずい。

 ヴァルトは呼吸さえとめた。どうか両隣のドニとジョスランが変なことをしでかしませんように。


「大将が遅れるなって怒鳴ってんぞ!」

 藪の多い道の先のほうから男の声が呼びかける。

「あいよ!」


 力任せに返事をして、不幸なドニに瓶をぶつけた山賊は去っていった。徐々に気配が遠ざかっていく。すべての物音が聞こえなくなってからも用心を重ね、しばらくしてからヴァルトはようやく息をついた。

 手に汗をぐっしょりとかいている。そろりと頭をもたげて周囲を確認し、山賊たちの姿がないことを把握する。


「……行ったみたい」

「うう……痛いよう」


 うつ伏せに隠れていたドニのそばには茶色い酒瓶が転がっていた。拾い上げてみると、存外に重い。空っぽであっても落ちてきたら相当に痛そうだ。


「ひどい連中だった。あれが山賊というやつかい」


 ジョスランが服についた土埃を払いながらぼやいた。近くの草薮に隠していた荷物の山を背負うと、やれやれと肩をすくめる。


「彼らを見つけてすぐに荷物を捨てたのは賢明だったね。おかげで楽な姿勢でいられたよ」

「酒瓶も降ってきたけどね」ドニが愚痴りながら瓶を口の上でひっくり返す。「一滴も残ってないや」

「山賊のおこぼれなんか捨ててしまいなよ。不潔がうつりそうだ」

「どこかで使えるかもしれないし、とっておくよ。水筒の代わりになるし」

「君はたくましいね、ドニ。俺には真似できそうにない」

「ジョスランがドニを見習ったら、なんだかやだなあ」

「どういう意味だよ」

「べつに。それより傷の手当をしよう。たしかこの辺に薬草があったはず――」


 ヴァルトはかがみこんで足元に生えている植物を摘みとった。白い花の下に、厚みのある葉がついている。だがそんな部分には興味もくれず、土のついた根だけを綺麗にしてドニにさし出した。

 効果があるのは根の部分だけなのだ。


「たんこぶに利く薬草だよ。本当はすりつぶして塗ったほうがいいんだけど、すり込むだけでも効果があると思う」

「ありがとう、ヴァルト」


 ドニは素直に受け取った根っこを後頭部に押し当てた。すると、みる間に顔が青白くなっていく。まるで傷口に塩水を塗りこんだみたいな反応だ。


「これって……」

「あ、そうだ。ひどく染みるらしいよ。本に書いてあった」

「そういう大事なことはもっと早く言ってよ!」

「静かに。彼らが戻ってくる前に先へ行こう。もう二度と関わりたくないね」


 ジョスランは冷静に言うと、ふくよかな顔に涙をいっぱいためているドニをおいてさっさと歩きはじめた。ヴァルトがそれに続くと、不運な少年はあわててふたりのあとを追いかけた。






 山道はすぐに終わり、なだらかな街道につながっていた。街から街をつなぐ道はまだ未整備で、あちこちに大きな石が転がっている。ヴァルトたちの村は田舎にあるので、人の往来も少なく、したがって道も荒れたままなのだ。


 巨大な都市間をむすぶ街道であれば国の支配が及んでいるので山賊も討伐され、安全に通行できる。このまま道なりにずっと進んでいけば人通りも多くなって山賊に怯えることもないだろう。


「さっきの賊は山を根城にしているんだろうね。普段は山に不慣れな通行人を襲って、時々は街道にまで遠征する。しばらくは出てこないと思うよ」


 ヴァルトが後ろを振り返りながら推理する。

 山賊たちが追ってくるのではないかと心配していたが、街道の様子をみて安心した。ここからはもう大丈夫だと胸をなでおろす。


「ドニが彼らの気配を察知していなかったらと想像すると恐ろしいね。君はいちばんの功労者だよ」


 手放しで褒め称えるジョスランは上機嫌だ。

 薄暗い山道から抜け出し、見晴らしのいい通りを使えるのが嬉しいのだろう。


「物音がしたから動物かなって思ったんだ。最近お肉も食べてないし、捕まえようと見たら山賊でさ、びっくりしたよ。――ねえ、魔石の街まではあとどのくらいなの?」

「道沿いにずっと行けばそう遠くない距離だよ。途中に宿場町もあるみたいだし、ムダラに着くのも時間の問題かな」


 ヴァルトが父親にもらった地図を広げながら方角を確かめる。古びた地図だが、縮尺や方位は正確に記されている。村から迷わずにムダラを目指すことができたのは、この地図があったからだ。


 一直線にのびる道の先はまだぼんやりと地平線に消えるばかりで、街の姿はうかがえない。

 だが、あと数週間もあれば最初の目的地であるムダラに入れるだろう。


「迷宮か……いったいどんな場所なんだろうね。俺にふさわしい黄金財宝なんかが眠っているのかな」


 ジョスランがうっとりした目で妄想する。


「迷宮でとれるのは魔鉱石が主だから、おれたちの手元に残るのは引き換えのお金だけだよ。たまに魔鉱石じゃないものが発掘されることもあるみたいだけど」

「ならそのお金で宝石を買えばいいじゃないか。ああ、早く黄金を身にまとってみたいなあ」

「ジョスランって悪趣味だよね。顔はいいのに」


 ドニは出っ張った腹をさすりながらいった。旅の途中では食べる量が減るものなのだが、彼はあいかわらず少年にしては恵まれた体格をしている。道中で手当たり次第に果実をつまみ食いしていたからだろう。適当に貪っているのにお腹を下さないのがヴァルトには不思議だった。


 もしかすると食べて大丈夫なものを見分ける天性の才能があるのかもしれない。

 はたしてそれを活かせる職業があるのかは疑問だが。


「迷宮には怪物が住みついているんでしょ。僕らに倒せるのかな」


 ドニが太い首をかしげる。ヴァルトは昔に読んだ本の内容を思い返した。擦り切れるくらいまで何度も繰り返し読みふけった書物だ。迷宮に関する記述は、みょうに心がざわめくのだった。


「最初の一年で、半分くらいが命を落とすらしい。五年後になると、さらに半分。十年も迷宮に潜っていられたら国から声がかかるほどだよ。迷宮はそれだけ危険なところなんだ」

「ふうん。でも、うまくいけばお金持ちになれるんだよね」


 ドニは恐ろしい統計を聞いてもまったく恐れていないようだった。あるいは実感がないだけなのかもしれない。

 全国各地から一攫千金を夢見て荒くれ者たちが集うムダラでは、様々なことが許される。それは成功と引き換えに最も大事なものをなくす可能性が高いからだ。


 迷宮とは敗者が成り上がることのできる数少ない機会であって、同時に最大の墓場でもある。


「いままで何人もの戦士が名誉と富を我が物にしている。国の騎士団に入って活躍している人もいれば、王都で豪邸をかまえて悠々自適の余生を送っている人もいるよ。魔鉱石さえ稼ぐことができれば、おれたちもそういう大富豪の仲間入りができる」

「いいねえ。できれば魔獣と闘わずにお金持ちになりたいものだけど」


 弱音をはくジョスランの背中をヴァルトは小突いた。


「おれたちの目的は母さんの行方を探ることだよ。お金持ちになるのはそのためだ」

「――そうだね。忘れちゃいけないことだ」


 真剣な表情でうなずきかえす。欲にまみれた妄想に浸っているときはなんともだらしない顔になるが、真面目な会話をしていると思わず見入ってしまうような美しい目鼻立ちをしている。


 これも才能のひとつだ。

 美形は、それだけで食っていける者もいるという。


「ねえ、あれなにかなあ」


 ドニが指差す方向には、小さいながら人影があった。周囲に仲間はいないようだ。馬に乗っているのか、かなりの速度で接近してくる。


「旅人……かな。それにしてはずいぶん急いでるみたいだけど」

「念のために隠れておこう。山賊の子分が合流してきたのかもしれないし」


 ジョスランの提案にふたりは同意した。

 街道沿いの両脇には森のなかのような茂みはない。三人は近くにあった樹木に手をかけると、するすると荷物を背負ったまま登っていった。木登りは昔から慣れ親しんでいる。ヴァルトたちにとっては畑を耕すよりも簡単なことだ。


 馬上の人影が近づいてくる。

 もっとも身軽なジョスランが緑葉の隙間から眼下をうかがうと、毛並みの良い駿馬が駆け抜けていくところだった。乗っているのは意外にも小柄な子どもで、ヴァルトたちと同じくらいの年齢に見える。


 どこからか馬を強奪してきたのだろうか。

 少年は背後をしきりに気にしながら、道を疾駆していたが、なにを思ったのかそのまま街道を行くのではなく山道へ入ってしまった。馬で進めないこともないだろう。しかしもっと大きな問題が待ち構えていることを、ジョスランは知っていた。


 もしあの少年が山賊の一味でなかったら……。


 悲惨な未来が頭をよぎる。山のなかで馬が通れるような道は限られている。あのままいけば山賊たちのねぐらに直撃するのは間違いない。

 追いかけても遅い。馬の速度にはかなわない。いまさら注意をしに戻ったところで少年には届かないだろう。


「どうだった?」


 ヴァルトが尋ねる。ジョスランは作り笑いをして、嘘をついた。


「山のほうに行ったよ。山賊の仲間だったみたいだ」

「木の上に避難して正解だったね。まだほかに残党がいないか注意して行こう」

「そうだな」


 軽やかな身のこなしで幹を伝って降りる。

 地面には馬蹄のあとが力強く刻まれていた。どのくらいの距離を走ってきたのだろうか。なにを焦って馬を飛ばしていたのだろうか。


 ジョスランは首を振って余計な考えを振り払った。いまはムダラを目指すのが優先だ。見ず知らずの少年のことを案じて自分たちまで危険にさらすことはない。


 そう自分に言い聞かせて歩みを進めるものの、足取りは鉛をつけたように重たかった。


 太陽がゆっくりと天頂から地平線に傾いていく。街道に行き交う人はおらず、延々と刻印された蹄のあとだけが道のりの長さを示している。しばらく無言のままいると、ドニがふたたび誰かがいるのを発見した。


 警戒して遠くから観察してみたが、その男は座り込んで動こうとしない。まるで彫刻みたいだ。ドニが勇気を出して近寄ってみると、生気のないうろんな目つきをした初老の男が膝をかかえていた。


 下着だけをまとい、顔には殴られたようなアザがある。赤く腫れ上がった目頭は、見ていて痛々しいほどだ。

 瞳の焦点はどこを見つめているのかわからない。ドニが声をかけると、あいまいな返事をよこした。


「どうしたんですか。具合が悪いなら、ちょっとだけ薬草とかもあるけど」

「ああ……」

「お腹が空いてるのかな。これ、食べる?」


 バッグを地面において、ぎゅうぎゅうに詰まった中身からつぶれかけた木の実をとりだす。男性の口元に差し出してみるが、食べたそうな素振りはしなかった。


「あの、もしかして、山賊に襲われたんですか」


 ヴァルトが横から口を挟んだ。その瞬間、男性の瞳に小さな光が宿った。

 放心状態から一転してヴァルトの肩をつかんで激しく揺さぶる。


「どこだ、私の商品はどこだ!」

「も、も、持って行きましたよ。山の方へ!」

「……ああ」


 つかの間の意気はすっかり消沈し、いまにも倒れそうなくらいよろめきながら宿場町の方へ行こうとしている。ドニが頼りない裸の背中に呼びかけるが、聞いてはいないようだった。


「山賊たちがいってた商人だろうね。かわいそうに」

「死んでるみたいな顔をしていたよ。毒キノコの煮汁を飲まされたみたいだった」


 彼にあげようと思っていたつぶれかけの果実を頬張りながらドニは感想を述べた。山賊たちに財産を募集された男性の後ろ姿はひどく寂しげに映った。それなりに富も地位も築いてきたのであろう大人でさえ、ひとつ失敗すれば亡霊みたいな表情になってしまうのだと胸に刻む。


「生きてるだけ幸運だよ。あいつらの斧には血が付着してたし、きっと人殺しも簡単にやるんだろうね」

「ヴァルト! ドニ!」


 突然ジョスランが大声を上げたので、二人はひっくり返りそうになった。


「なんだい、急に」

「さっきの馬に乗ったやつは山賊の子分じゃないかもしれない」彼の瞳は潤んでいて、いまにも涙がこぼれそうだった。「俺たちと同じくらいの子どもだった。山賊たちに捕まったら殺されるかも……」

「どうして――」


 すぐに言わなかったんだと聞きかけてヴァルトは口をつぐんだ。かわりに太陽の位置を確かめ、時刻を計算する。もうじきに夕暮れが訪れる頃合いだ。


「急ごう。夜がふける前に山へ着けば、荷物をおいてその人の無事を確かめられる」

「ごめん、俺が黙っていたばっかりに……」

「ジョスランは悪くないよ。ちょっと寄り道をすることになっただけさ」


 ドニは手早く自分の荷を片付けて、いま来た道をにらみつけた。遠くに緑色をした山の稜線が見える。全速力で引き返したとしても、日没までに間に合うか怪しいところだ。


「父さんたちもきっとジョスランの勇気を誇りに思う。母さんたちも喜んでるよ」


 慰めと激励の言葉を投げかけてヴァルトはジョスランの手を引いた。空いたほうの手で目尻を拭ってから、彼らは少年を救うために走りだした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ