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第三話




「サマービル長官、最早ウォースバイトは持ちそうにありません」

「……やむを得ない。司令部は駆逐艦に移譲する。総員退艦せよ」


 傾斜しているウォースバイトは遂に総員退艦が発令されて乗組員達は海へ飛び込んでいく。


「……無念……だな……」


 ボートに乗り、沈みそうなウォースバイトを見つつサマービルはそう呟いた。

 九七式艦攻が主体の第二次攻撃隊は見事な攻撃をした。

 総隊長の村田少佐は空母二隻を優先して三五機の九七式艦攻を率いて空母の側面に突入。二隻の空母に四〜五本の魚雷を命中させて大傾斜となり空母二隻は総員退艦が直ぐに発令された。

 そしてまだ十八機が残っており、ウォースバイトに突入して左舷に四本、右舷に二本を命中させた。

 幾ら戦艦でも旧式なため、浸水が激しく排水作業が追い付かず遂に総員退艦となったのだ。


「残っている艦艇は?」

「……駆逐艦二隻のみです。それ以外は……」

「分かった。だがまだアッヅ環礁には旧式戦艦四隻がある。勝負はまだついていない」

「ですが、航空戦力はほぼ全滅です。セイロン島の航空部隊もジャップの空襲で壊滅状態です」

 サマービルの言葉を遮るように参謀はそう具申した。確かに航空戦力は全滅しており、サマービルの手元に残っているのは旧式戦艦四隻のみである。

 しかし、第一航空艦隊でもある問題が発生していた。



「燃料が無い?」

「正直に言うと無くなりかけですな。赤城と二航戦は航続距離が短いので燃料が無くなりかけです」

「タンカーはどうした? 第十六軍にお願いしてタンカーを派遣してもらう予定だった筈だ?」

「それが……出港寸前で機関を故障したらしく到着するのが遅れるのです」


 ……何ってこった……まさか燃料が足りなくなるとは……。手は打っていたがな……。


「……仕方ない。作戦を早めてコロンボに向かうぞ」

「イギリスは吃驚するでしょうな」


 淵田が苦笑した。そして第一航空艦隊は回頭してセイロン島へと進路を向けた。

 翌日、第一航空艦隊はコロンボ沖合いにまで進出した。

 制空権確保のため零戦二七機と偵察のために九七式艦攻九機が発艦した。

 そして沖合いから金剛型四隻と利根型二隻が観測機からの観測の元、艦砲射撃を敢行する中、上陸部隊が上陸を開始した。


「地につけば此方の物だッ!! 負けはしないぞッ!!」

 三八式歩兵銃に三十年銃剣を着剣した兵士達が雄叫びを上げながら銃剣突撃を敢行。上空では六十キロ爆弾を搭載した九九式艦爆が飛来して敵守備陣地やM3軽戦車を爆撃して破壊していた。

 コロンボの守備隊は完全に浮き足立つ形となり、上陸開始から五時間後、遂に敗走を始めたのである。敗走するのも無理はなかった。

 セイロン空襲で守備隊の士気は低下しており、そこへ南雲艦隊の殴り込みである。守備隊の兵士は降伏するか、敗走するかに分かれたのである。


「降伏した兵士には軽い尋問で武器弾薬、燃料が何処にあるかを聞き出せ」


 中隊長は部下にそう指示を出した。上からの命令であるが、中隊長は疑問に思ったがそれを口に出さずに仕事に励んだ。


「燃料タンクは全くの無傷です。降伏した兵士や逃げ遅れた技師達に聞きつつ艦艇の供給をしています」

「うむ、爆弾や魚雷はどうかね?」

「コロンボの飛行場にはある程度がありましたので空母に入る分だけ頂きます」


 報告をした山口がニヤリと笑った。


「長官、そろそろ山本長官が怒り出しそうじゃないんですか? こんなに作戦を変更しては……」

「ん? あぁ構わん構わん。三川には責任は無い。落ち着いていればいい」


 三川が心配そうに言ってくるが問題は無い。なお、三川は胃が痛くなりそうだと思っていた。


「ですが、我々が出れば上陸部隊は孤立しますよ?」

「小沢の馬来艦隊を寄越せばいい。既に打診してある」


 後に返信が来て、四航戦と共に来るとなった。だが、二日掛かるとの事で二日のタイムロスはきついな。


「残りのイギリス東洋艦隊は恐らくアッヅ環礁にいるだろうと俺は踏んでいる。補給が済み次第出撃したいが、上陸部隊が手薄になるのは避けたい」

「五航戦を置くのは?」

「五航戦は脚が早いから連れて行くのは必然だ」


 山口達が話し合うが結論は中々出ない。これは……仕方ないな。


「諸君、赤城は置いていく」

『………』


 俺の決定に誰かが息を飲んだ。


「旗艦は翔鶴とする。原の第五航空戦隊司令部は赤城へ移譲して上陸部隊を支援せよ」

「判りました。お任せ下さい」


 原が立ち上がり、俺に敬礼をする。護衛には第四駆逐第二小隊の萩風と舞風とした。そして赤城と翔鶴の飛行員(主に村田少佐等のベテラン)を交代して戦力を整えた。


「補給が済み次第出撃する。解散ッ!!」


 全艦の補給は2000に終了、赤城と第四駆逐第二小隊以外はアッヅ環礁を攻撃するためにコロンボを出撃した。


「長官、GF司令部より電文が……」


 大石の言葉に、俺は通信紙を一読した。文は簡単に言えば『予定外の作戦をするな。直ちに帰れ』だ。

 そう言えば今日は四月九日か……帝都空襲もそろそろだな。


「長官、返信はどうしますか?」

「構わん。第一航空艦隊は無線封鎖中だ。発信されれば位置がバレる可能性がある」


 大石の問いに俺はそう返した。イギリス東洋艦隊を撃滅しないと北アフリカのドイツは苦戦するからな。何としても旧式戦艦群は沈めないとな……。


「払暁時に索敵機を発進させろ。特にマダガスカル方面にな」


 俺はそう命じた。




 ――アッヅ環礁――


「長官、艦隊は何時でも発進出来ます」

「うむ、直ちに出港せよ」


 駆逐艦二隻で帰還したサマービルはアッヅ環礁に退避して残存のイギリス東洋艦隊をマダガスカル島へ退避する事を決定した。

 アッヅ環礁へ戻る前に電文を放ってかま焚きをさせていた。

 そしてサマービルが戻り次第出撃する予定だった。


「何とか逃げ切れるようだな。やはり奴等は強い……」


 リベンジの艦橋でサマービルはそう呟いた。しかし、そう簡単にはいかなかった。


「レーダーに反応ッ!! ジャップの偵察機ですッ!!」

「な、何だとッ!?」


 接近してきたのは利根から発艦した利根四号機であった。

 利根四号機は直ぐに第一航空艦隊旗艦翔鶴に打電した。



「利根四号機より入電ッ!! 『我、敵艦隊発見』ッ!!」

「長官ッ!!」

「攻撃隊は直ちに発艦せよッ!!」


 飛行甲板に待機していた攻撃隊(零戦二七機、九九式艦爆六六機、九七式艦攻六三機)はプロペラを回し始めて発艦を始めた。

 そして四空母からイギリス東洋艦隊へ止めを指す攻撃隊が発艦した。






御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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