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第一話






「……う……と……」

 ……誰だ俺を呼ぶのは?

「長官、大丈夫ですかッ!?」

「……む……」

 目を開けるとそこには旧海軍の将校の服を着た日本人がいた。誰だ? それに長官って……。

「気が付いたようですね長官。突然倒られたので驚きました」

「……誰だお前は?」

「何を言っているのですか長官? 私は草鹿龍之介ですよ」

 草鹿龍之介? 確か第一航空艦隊参謀長と聯合艦隊参謀長をしていたあの草鹿龍之介か?

「草鹿、俺は誰だ?」

「誰だって御冗談を……貴方は第一航空艦隊司令長官南雲忠一中将ではありませんか」

 ……マジで?

「……済まないが鏡を……」

 俺は仮称草鹿龍之介から鏡を渡されて顔を見たがそこにはあの南雲忠一中将がいた。

 ……うそぉ。俺は日本人で南雲忠一なぐもただかずで、よくミリオタ仲間から長官と呼ばれているんだが……。後軍オタとアニオタなんだが……。

「本当に大丈夫ですか長官?」

「……済まない草鹿。どうやらかなり悪い夢を見ていたようだ」

「はぁ、かなり唸っていましたから……」

「それで今は何年何月だ? 少し記憶が混乱しているんだ」

「今は1942年の三月二三日です」

 確かぁ……セイロン沖海戦のために三月二六日、スラウェシ島 (セレベス島)南東岸のスターリング湾に停泊しているから、そこから出撃して第一航空艦隊は、オンバイ海峡を通過しジャワ島の南方よりインド洋に入る筈だな。

「出撃は二六日だったな?」

「はい、二六日に出撃をしてセイロン島にいるイギリス東洋艦隊を叩きます」

 そうか……それなら……。

「草鹿、一時間後に全員を集めろ。三川や山口達もだ」

「は? 一時間後にですか?」

「そうだ。火急の用だ」

「はぁ、分かりました」

 草鹿は不思議そうにしながら退出した。

 ……さて。

「これが現実なら俺は憑依という体験をしているな……」

 本当に山口多聞達がいるなら、これは現実に起きている事だな。しかし、俺が南雲忠一とはな……。

「歴史は俺に何をしろと言うんだろうな……」

 俺はそう呟き、墨を用意してある人物に手紙を書いた。




「南雲長官、急の召集は何でしょうか?」

 一時間後、第一航空艦隊司令部と各戦隊司令官が作戦室に集まっていた。

 おぉ、山口多聞がいるな。三川軍一もいるし源田実もいる。て事はこれは俺は本当に南雲忠一に憑依したんだな。

「うむ、急な召集は真に済まない。二六日に第一航空艦隊は出撃してインド洋でイギリス東洋艦隊を撃破する事は皆が知っての通りだ」

 俺の言葉に皆が頷いた。

「しかし、俺は独断でこの作戦を大幅に変更する」

『ッ!?』

 その瞬間、誰かが唾を飲み込んだ。俺はインド洋の地図を拡げた。

「セイロン島を一時的に占拠をして北アフリカのドイツ軍を支援する」

「ドイツを支援するのですか?」

 山口が質問をしてきた。

「そうだ。ドイツがエジプトを取ればスエズ運河を取られたイギリス軍はインドを孤立させられる事になる。そのためにセイロン島を一時期的に占拠するのだ」

「占拠とはそのための言葉ですか……ですが、占拠する兵力は何処に?」

「ケンダリーにいる陸戦隊とジャワを攻略した第十六軍に高速輸送船で二個連隊ほど出してもらうよう一筆した。大石参謀には後程飛行機でジャワに向かってもらいたい」

 俺の言葉に大石通信参謀が頷いた。

「ですが長官。懸念はまだあります、補給はどうするのですか?」

「山口の言うことは尤もだ。補給はセイロンで補給する」

「……まさかチャーチル給養じゃ……」

「その通りだ」

 俺はニヤリと笑った。

「セイロン島攻撃は敵飛行場と敵艦船、敵防御陣地のみに絞る」

「ですが……」

「ですがもしかしも無い。上の奴等が中途半端な事の作戦を促したんだ、此方で完璧にしてやるしかない」

 俺はそう言い切った。暫く作戦室は無言が続いたが、やがて山口が高らかに笑いだした。

「ハハハ、南雲長官の言うこともありますな。本職は異論ありません。大いにやろうではありませんか」

「……うむ、やるか」

 山口に続くように三川も頷き、五航戦の原も頷いた。そして半場この作戦をする事になった。責任は俺が取ると予め言っているがな。

 そして作戦は発動をして、ケンダリーにいた陸戦隊二個大隊と高速輸送船二隻が参戦して第一航空艦隊に組み入れた。




 一方、俺の手紙を携えた大石参謀が飛行機でジャワに向かい、第十六軍司令官の今村均中将と面会していた。

「ほぅ、海軍の第一航空艦隊が主体となってセイロン島を一時的に占拠すると?」

「はい、そのために陸さんに二個連隊とその輸送の高速輸送船を提供してほしいのです」

 作戦を聞いた第十六軍の参謀達は驚いていた。何せ海軍がドイツを支援すると言い出したからだ。

「……分かりました。第二師団の歩兵第四連隊と二個大隊、そして高速輸送船を提供します」

 今村中将は提供を承諾してくれた。大石は喜び、飛行機で帰還したのであった。



 三月二六日、第一航空艦隊はスターリング湾を出撃してオンバイ海峡へ向かった。

 オンバイ海峡にはジャワから出撃した歩兵第四連隊を載せた高速輸送船四隻がいた。

 高速輸送船と合流して第一航空艦隊はセイロン島へ向かった。



 四月五日、南雲機動部隊はコロンボ南方二百海里に進出し、艦載機百五十機(零戦四二機、九九式艦爆五四機、九七式艦攻五四機)でコロンボを空襲した。

 コロンボ周辺の天候はあまり芳しくなかったが、攻撃隊は迎撃のイギリス戦闘機を排除しつつ予定通りに停泊している敵艦船と飛行場を攻撃し、駆逐艦テネドスと仮装巡洋艦ヘクターを撃沈した。

「敵飛行場は完全に破壊したかを淵田中佐に問い合わせろ」

「分かりました」

「ですが長官。電波を発信しますとイギリスに見つかる恐れがあります」

 源田が頷くが、草鹿がそう具申してきた。

「イギリスに見つかっても構わん。我々の任務はイギリス東洋艦隊の全滅だからな。最悪、金剛型四隻で艦隊決戦も辞さない」

「分かりました」

 草鹿は成る程と頷き、具申を却下した。そして淵田中佐から電信が届き、コロンボの飛行場は完全に破壊したと届いた。

 そして重巡利根の索敵機が巡洋艦二隻を発見した。恐らくコーンウォールとドーセットシャーだな。

「今発艦出来る攻撃隊は?」

「蒼龍と翔鶴の艦爆隊三六機です」

「よし、直ちに発艦せよ。零戦も付けてやれ」

 史実より機数は少ないが、江草少佐なら撃沈出来るだろう。そして攻撃隊は零戦六機、九九式艦爆三六機が発艦して巡洋艦二隻に向かった。

 江草少佐の攻撃隊は期待通りになってくれた。

「長官ッ!! 艦爆隊だけで巡洋艦二隻を撃沈出来ましたッ!!」

「そうか、喜ばしい事だな」

 報告によれば三六発中三十発が命中して八八%の命中率を出した。史実通りだな。

 第一航空艦隊はコロンボ空襲を成功させてトリンコマリ港攻撃のために史実の経路ではなく、東北東寄りに航行をした。

 史実の経路だと燃料不足になりそうだから東北東寄りに航行したのだ。

 まぁそれは兎も角、第一航空艦隊は史実の攻撃日より二日早い四月七日0900に零戦四八機、九七式艦攻九三機を発艦させてトリンコマリを空襲した。

「長官、淵田中佐機より電文です。トリンコマリ港及び敵飛行場を爆撃、これを破壊しました。更にトリンコマリ港にて敵小型空母を爆撃して大破転覆させました。しかし、トリンコマリ港には多くの敵艦船は在らず第二次攻撃を求むと……」

「敵飛行場は破壊したのだろう?」

「はい」

「ならば構わん。基地航空隊を叩いて向こうの航空戦力を減らすのがいい」

 敵小型空母は恐らくハーミズだろう。

「草鹿、索敵機は出しているな?」

「はい、二段索敵を展開しています……が、北は探さなくてよろしいのですか?」

「北にはおらんだろう。となると西から南を探せばいい」

 イギリス東洋艦隊はアッヅ環礁にいるんだけどなぁ。

「筑摩の索敵機より電文ですッ!!」

 その時、通信兵が艦橋に駆け込んできた。





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