54.司令室にて 後の仕事
『くらま』司令室
安達と飯島は先ほどすれ違った第2護衛隊群との引継ぎ作業を終わらせると安達が誘って司令室に落ち着いていた。
「とりあえずこれで俺達の仕事は8割方終わったな」
安達が藤代に持ってこさせた珈琲の香りを堪能しながらぼやくように言った。
「ええ、このまま十二分な警戒状態で那覇港まで行ければ完了という事ですね」
飯島は己の人生で一番長い夜だったと実感しながらしみじみと言った。
「お前さんはまだいいよ。おれなんざ今でもどうやってキズモノになったフネをドック入りさせるかで頭がいっぱいなんだから」
ややウンザリとした声を出しながら安達が言った。この様な事など日本では普通は想定していない為、いかにして造船所のスケジュールに割り込んで入渠させるか、この修繕費用をいかにして国会に臨時予算として通せるかは確かに安達と海幕、そして市ヶ谷の手腕に掛かっていた。
「平時においても財務省やその他センセイ方には俺たちゃ典型的な金食い虫扱いだからな、そいつらが臨時予算くれなんて言うんだぜ連中の青筋が頭にハッキリと見えるよ」
遠くを見つめながら安達が言った。その口元は嫌な笑みを浮かべていた。飯島はそれを無視して安達に月並みな言葉をいう事にした。
「心中お察しします」
「はい、どうもありがとう。けど、飯島お前も大変だねぇ。今回の件で使う事もないミサイルは使うは、予定より多くの補給物資も消耗しちまったんだから。当初の予定より提出書類何枚増えた?」
『くらま』は『さんふらわ』へ救援物資を渡せと命令を受け警備出動前に『おうみ』より受領した物資を渡していたが『さんふらわ』は食料庫や医薬品を置いていた倉庫にも被弾していた為に大した量を用意していなかった物資では足りなかったので『くらま』が元から載せていた物資を提供する事になったのだ。
「まぁそこは……」
言葉を濁した。
「ま、お互い頑張ろう。ミサイルの件は技研がうるさいだろうからミサイル班も書類作成に借り出せるだろうから時間は掛からんだろう」
その話を安達はそれで締めた。
「それで、司令。今回の件はどうなると思います?」
飯島は自分達が関わる事になった今回の事件に話を変えた。椅子の背もたれに身を預けながら安達が喋りだした。
「ま、海上警備行動の上で撃っちまったからな。当面は俺達の攻撃の正当性がどうのって話がしばらくは然るべき所で小田原評定、中国自体はこっちが先に手を出したの一点張りって事になると思うが。上の方が覚悟が有るならとうに俺達が上に垂れ流し続けた映像がもう世間様の目に触れてんじゃないの?」
「もし映像の公開が遅れたら?」
「それは今の総理だと考えづらいね、この手の事の対処法は悪い前例を元に対応策を講じるタイプだから、この手の問題で出せる情報はとっとと出さないと危険極まりないし宝の持ち腐れにしかならないって格好の前例があるし」
「…………」
納得はしているといった顔で飯島は聞いていた。
「とりあえずこんなとこかな。どっちにしてもこの件での俺達の仕事はあと少しで終わる。この後は永田町の管轄だ。この後に俺等が出来るのは楽しい書類仕事ってお片付け」
ある程度冷めてきた珈琲をまだ温もりがある内に安達は飲み干し艦内電話で藤代に珈琲のお代わりを頼んで机の引き出しから書類の束を取り出した。それを見ていた飯島もカップの珈琲を飲み干し司令室から退出した。
艦長室に積まれているであろう大量の未決済書類を片付ける為に
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