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50.通信

『はやぶさ』

「電子部品下ろすぞ。いいか?」

無線機から声がした。

「準備よし。ゆっくりやれ」

ヘッドセットのマイクで答えた。その声でクレーンは厳重にパレットに固定された木箱が揺れながら『はやぶさ』の甲板へと下ろされた。しっかりと下ろされた事を確認して隊員達はパレットに群がり作業を始めた。

「これでどれぐらい復旧できる?」

その作業を見守っていた艇長代理の機関長が作業を監督している初芝に尋ねた。

「とりあえず通信アンテナは衛星通信は諦めてください。資材が足りません。艦隊通信は簡易アンテナを新しく張りなおせばある程度の距離は可能です。レーダーも探知距離はかなり犠牲になりますがコーサル部品で復旧は可能とウチの電整から報告がありました」

「他は?やっぱりドックじゃないと無理か……」

「ええ、この航海では大規模な修理が必要な訓練がありませんでしたから。ストックも通常より多くは積んでいませんでしたから」

「さよか。まあ、走るのに心配が無くなっただけよしとするか」

達観したように機関長が言った。彼の視線を向けた先には命綱を付けてアンテナの貼り付けを行う乗員の姿があった。


『くらま』

「はあ、念の為にもう一度言いますが我が艦隊は僚艦の必要な処理が完了し、かつ民間船が行動可能の場合のみ行動は可能です」

ようやく繋がった通信で中国海軍指揮官との話の中で安達はこの部分を強調するように言った。

「そこは理解している。では我々の要求に対しての答えはどうかを尋ねたいが?」

「我々は与えられた命令に従ってここにいます。よってここから立ち去るのもその命令に基づいて動く時としかお答えようがありません」

「つまり、立ち去れる条件が揃えば立ち去るという事になると思うのだが?」

「まあ、そうなるでしょうな。誰かがその条件を潰すような真似さえしなければ」

「…………」

安達の言葉に洸は黙った。

「と言う事で我々はそちらの退避勧告に即座に答える事は物理的に不可能です。また、我が艦隊で現在進行中の作業を妨害する者には自衛権の行使をもってそれに答える事をはっきり明言します」

ここまで言って安達は相手の反応を窺ったがこちらの話が続きがあると読んだのか反応は薄かった。

「貴艦隊に対しましては妨害されない事を切に願います。我々もまた貴艦隊が現在進行中で行っている作業に対しましてはこれを妨害する意思はない事もここに明言する次第であります」

「了解した。その言葉に嘘がない事を信じよう」

それだけ言って通信は終わった。

「飯島、中国艦隊の動きはどうだ?変化は?」

「変化は確認できず。未だに僚艦の乗員の救助活動を続行中」

モニターと艦橋からの報告で相手の動静を警戒していた飯島はすぐさま伝えた。それを聞いた安達は司令席の背もたれに背を預け天を仰いだ。

(こっちとしても帰る条件は粗方満たしてるんだよな。あと少し……向こうの気が変わらん内に引きたいもんだが……)

モニターに映った中国艦隊と『はやぶさ』を見ながらそう考えていた。

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