48.初芝の心中
『くらま』
「昇降機、上げろ」
艦艇整備長初芝靖3等海佐が部下に命じた。昇降機が唸りを上げ甲板に上がってくると補修用の鉄板や角材と機材が乗せられていた。
「固定索、外せ」
それまでガッチリと固定していたワイヤーを外す為に艦艇整備科の面々がパレットに群がった。
「…………」
その様子を初芝は書類を見るふりをしながら見ていた。そのそばで自身の部下の行動に目を光らせていた運用員長が初芝の様子に気付いて声をかけた。
「何か心配事でも?」
「ん?ああ、まさか俺達にも出番があるとはって思っていただけだ」
「はあ」
なるほどという顔で運用員長が頷いた。
「確かに本艦の運用方法の一つだってのは理解してるよ。けれどそんなの実戦でもない限り俺達なんて艦内では肩身の狭い存在だからな」
心中は極めて複雑だとはっきりと顔に書いてあった。
「心中お察しします」
社交辞令ではなく本音で彼は言った。
「あんがとよ。それより内火艇はどうなんだ?問題無く動きそうか?」
「はい。先程うちの者が確認しました」
「わかった。使うときは頼む」
「はい」
そう言った時、運用員長の目が光った。
「おい、松本!!なんだその鉄帽の被り方はそんなんじゃ派手に動いたら外れちまうぞ!!すいません、私はこれで」
その乗員の元にズカズカと音を立てながら運用員長は歩いて行った。
(しかしまあ、まさかいつ撃ってきてもおかしくない連中の真ん前で復旧作業、オマケに救助対象の民間船も可能ならば修理せよか……。少しでも早く民間船共々安全圏への離脱を図りたいって気持ちは理解するけど機関科の連中大丈夫なんだろか?)
門外漢故に機関科への不安が頭を過ぎった。
「3時方向より『おおわし』が『はやぶさ』を曳航して接近中」
『くらま』の支援により曳航作業の時間が出来た為に離艦を止めた『はやぶさ』がヨタヨタしながらやってきた。
「準備は?急げお客さんだぞ!!」
それを見た初芝は先程まで胸中を心の奥底に仕舞って声を張り上げた。
(グダグダ考えたって自分達のやる仕事はやって来るか)




